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互いに自己紹介を済ませたとき、アッシュからはヒバナと兄妹だということを聞いていたマーリン。彼が席に着く前、隊長という立場にも関わらず頭を下げてきたことに少年は驚いた。妹を助けてくれてありがとう、と。
「ここまで話しておいて何だが、疑ってないのか?」
「え?」
「俺がマーリンであることを」
「あの森を見たら流石にね。骸龍を倒し、解錠した魔術師を相手にする子供なんて非現実的だ。でも話を聞かせてもらえて腑に落ちたよ。魔術の王、マーリンなら、と」
「ふふん? よせよせ、魔術の王などと」
「自分で名乗ってなかったか?」とオリヴィエ。
じぃーっとカナメとオリヴィエの二人に見られるマーリン。少年は彼女達と目を合わせないよう目線を逸らし、咳払いをしたところでアッシュが言葉を繋げる。
「疑いはしなかったけど、それでも驚いたよ。あのマーリンが子供の姿になってるなんて」
子供になった原因。その説明を少年は省いていた。エルドラにヴォーティガーンの訃報が渡っていないことは知っている。それが話題の進行を妨げる要因になると判断し、彼の死を伏せたまま会話を交えていた。
「唯一の油断だ」
嘘を吐く。
「魔術の王だなんだと周囲に持て囃され、いい気になってたのさ」
「でも昨日、自分で名乗ってたよね?」とカナメ。
「…………ひゅ、ひゅー」
「口笛下手すぎ」
誤魔化しは通用しないらしい。
そんなカナメとの遣り取りをみて笑うアッシュ。仲間が殺され随分と険しい表情をしていたが、少しでも和ませることができて良かったと少年は微笑む。
「マーリンはこれからどこへ?」
「王都方面に向かいつつ、ギルドで等級上げだな。いまの等級で閲覧できる魔導書には期待できないが、他に行き先もない」
「魔術闘技場には行かないのかい?」
「ん? 何だそれは?」
カナメと顔を見合わせるが彼女も首を傾げている。互いに初耳だ。オリヴィエが「都市アラディアの一大興行だよ」と説明してくれる。
「年に一回の大規模なイベントでね。トーナメント形式で魔術師同士の真剣勝負が行われる場なんだ」
「ほう」
少し興味がある話だ。
エルドラの術師がどんな魔術を扱うのか目にしてみたい。
「二人には持ってこいの話だと思うよ」
アッシュの言葉に「なぜ?」と返すマーリン。
「魔術闘技場はギルドが運営してるんだ。術師としての実力を運営に見せれば昇級の話がくる。賞金と昇級目的の術師が沢山参加するから激戦を強いられるだろうけど」
「ーー問題ない。最高の話だ、アッシュ」
素晴らしい近道だ。
行き先は一つに絞られた。
「参加資格は?」
「ギルドに登録してる魔術師なら誰でも」
「等級制限がないのか。アッシュは参加したことは?」
「教団関係者は参加できないんだよね。一応、観戦はできるけど。あと現一級の参加も認められてないかな」




