5ー3
「教団を壊滅させるだけの力を持っている、そう自負していた辺り無関係ではないはず。奴が言った『いずれエルドラも気付く』というのは二人の死を示唆していたのかもしれない」
考えを整理するように、ゆっくりと喋るアッシュ。
「敵がオリヴィエさんを勧誘したとき、教団が提示する以上の金額を積むと言っていたんですよね?」
「ああ、そうだ」
「それなら資金には困っていないか」
「あと主観だが、男の方は私を殺すことを躊躇っているように見えた。一度断ったあと、本当に死ぬぞと口にした辺り迷いがあったと思う」
「私もそう思います」
オリヴィエの意見に対し、控え目に手を挙げて賛同するカナメ。
「攻撃をわざと外してきたし、忠告もしてきた。人を助けるのはやめろと。それに仲間を常に心配してました。私と戦ってる最中、ずっと」
アッシュの表情に、陰が落ちる。
仲間を心配できる人間が、自身の仲間を殺した。
気が気でないだろうとマーリンは察する。
「……そうか。他に何か気付いたことかあれば遠慮なく言ってほしい」
「俺が戦っていた相手だがーーその前に聞きたいことがある、アッシュ」
「なにかな?」
「今回の件、教団に心当たりはないのか?」
「……残念ながら、いまのところは思いつかないよ。唐突に現れた犯罪者達に教団も街も混乱している。それとよく分からないのが、副隊長二人を殺せるだけの力を持ち合わせておきながら、現地にいた隊員を殺していないんだ」
「こっちもそうだな」とアッシュの疑問に言葉を重ねるマーリン。
「外で見張ってる二人も襲われていない。奴等が真っ先に狙ってきたのはオリヴィエだ。壊滅を目的としていながら隊員を殺していないのは、単に優先順位をつけてるのかもな」
「不愉快な連中だ」
我慢の限界に達したのか、その声からどうしようもない怒りが伝わってくる。自身を落ち着かせる為だろう、深い呼吸をしてからアッシュが話を戻す。
「さっき言いかけてたことは何だったのかな、マーリン」
「俺が戦っていた術師ーークルミの口走った言葉から察するに、少なくともあと二人、解錠可能な術師がいる。状況からして、こいつらが殺害に関与した可能性は高い」
「ヴァンとシャル、か」
「それと『先生』とも口にしていたな。仲間なのか、師匠なのかは知らないが。二人の容姿や特徴は紙に書いておいたから渡しておくよ」
「何から何まで……副隊長が殺されたのにも関わらず、大した痕跡も掴めずにいたけど、君達がいてくれたお陰で話は変わったよ。改めてお礼を言わせてほしい、マーリン、カナメ」
「いえ、そんな」とカナメが謙遜するが、アッシュが首を振る。
「いや、感謝してもしきれないよ。オリヴィエさんを守ってくれたこと、それに、妹を助けてくれたことも本当に感謝してる」




