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森まで案内し、その痕跡を目の当たりにした二人の教団員。結果、末端の手には負えない件だと判断され、彼等の隊長を呼ぶ流れになってしまった。
夜遅かったこともあり、事細かい説明は翌日に持ち越し。情報の提供は正午、隊長の前ですることになった。
正直な話、逃げるように次の街へ移動したいマーリンだったが、彼等が激闘の跡を目にして呟いた「なにこれ」が心を苛む。二人の仕事を増やして申し訳ない気持ちが少年にはあった。
そして、昼前。
教団との約束前にオリヴィエが部屋に訪れた。お互い椅子に座って診察は始まり、言われた通りに服を脱いだ少年。真っ白な上半身に、胸からへそにまで刻まれた術式の紋様を暫く見て、オリヴィエが口を開く。
その表情を見て、少年は察した。
「結論から話そう。これは私には治せない」
その結果よりも、オリヴィエの悲しそうな表情が少年の心を揺らす。
「すまない」
「謝らなくていい。他に何か分かったことは?」
「君は自身に掛かった魔術を呪いだと口にしていたが、正確には違う」
「……というと?」
「認識の違いだ。全盛期の魔力にまるで満たないーーマーリンの目からすると、そのマイナスな面だけが大きく映る。それも当たり前だ、術師にとって魔力とは地位そのものだ。だが魔術師ではなく、もし普通の人間が『大人から子供になる魔法』を掛けられたらどう思う?」
脱いだ服を着ながら話に耳を傾け「そうか」と理解をする。「普通はプラスに捉えるのか」
「そうだ。若返って嬉しい。おそらく大多数の人がそう思うだろう。これはね、呪いとして成立していないんだ。治す箇所が見当たらないし、この術式はまるで害意がない。子供になっても記憶を引き継いでいるのが良い証拠だ」
全ては前提から間違っていた。
ブリタニアにいたときも彼は呪い、災いの方面で魔導書を漁っていた。
何もかもやり直しだと反省をする。
カナメにも無駄な時間に付き合わせてしまった。
「そして君の身体に刻まれた術式はエルドラで見るような構図が半分、もう半分は、」
「ブリタニアか」
「おそらく。混合で、ここまで綺麗に描かれた術式は見たことがない」
刻まれた術式、そこから洩れる魔力に脆い箇所はなく、彼の魔術でもこれは斬ることができない。
せめて全盛の半分でも戻れば容易く斬ることはできたが。
「本当にすまない、力になれなくて」
「いや、いいんだ。俺一人では何も見えなかった。呪いとして成立していないーー言われて初めて気が付いたよ。そっちの面でばかり書物を追っていたがこれで絞れる。診てもらえて助かった」




