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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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4ー17



 言葉を失う。

 全身が震えだす。

 小さな化物が、無表情で見ている。


「オリヴィエにしようとしたことを口にしてみろ。それをお前に試してやる」


「あ、……ぁ……」


「どうした? 何を怯えてる?」


「ぁ……ご、ごめんなさ、……」


「さっさと話せよ、餓鬼」


 マーリンの指先がクルミに向けられる。

 怖い。

 怖い。

 怖い。

 誰か。

 誰か、助けーー


 何の前触れもなく。

 視界が、眩い光に包まれた。


 突然、体を抱えられる。

 顔をあげれば、服は血で滲み、息を切らし。

 振り返らず、夜の森を駆け抜けて。


「ガラクタってお前は言ってたけど」


 心配させないように。

 無理して彼は口元に笑みを浮かべていた。


「案外、役に立つだろ?」


 リックの言葉に小さく頷く。

 傷だらけの彼に表情を見られないよう、胸に顔を埋める。

 意外なことに追手の足音はなく。

 夜の森に背中を向けて、二人の魔術師は闇に消えていった。






 足元に転がった小さな球体を見る。

 目眩し用の魔道具だろう。接近には気付いていたが、このような手を打つとは想定外だったマーリン。普段なら意にも介さず追撃をしていたが、血を流し過ぎたのか立ち眩みに襲われ、その手を止めた。

 夜の森を見つめる。二人が消えた方向はカナメ達がいる方とは真逆だ。漸く安堵の息を吐き、適当に腰をおろしては戦いを振り返るマーリン。正直殺されていてもおかしくはなかったなと彼は思う。

 最初に狙っていたのは魔力切れだった。

 予定通りに事は運んでいたというのに、まさか解錠とは。そもそもアレをするには大量の魔力を必要とする、だからこそ有り得ないと踏んでいた。クルミが樹木の球体に包まれたあの時、彼女は周囲の植物に帯びたマナを無意識の内に取り込み、不可能を可能とする程の魔力を手中に収めていた。

 初の解錠だ、全知全能に陥った感覚が常にあったのだろう。どれほど自身が術師として上位の存在に成ったのか力を試したかった筈だ。もし最初からクルミが全力で来ていたら結果は違うものになっていた。︎⬛︎⬛︎・⬛︎ル⬛︎⬛︎スを不完全な形で顕現することも叶わなかった。


「マーリン!」


 オリヴィエを抱えて、カナメが駆け寄ってきた。

 急いできたのだろう。汗を流し、息を切らしている。


「ごめん、油断してそっちに逃しーー、え?」


 マーリンの姿を見てカナメが絶句する。オリヴィエが事態を察し、カナメの腕から離れては視線が合うよう少年の前に屈む。


「心配するなカナメ。それと、やめろオリヴィエ」


 オリヴィエが何をしようとしているのか、魔力の流れでマーリンには分かっていた。


「この程度の傷、自分で治せる」


「……君も、カナメも、優しさが過ぎるな」


 オリヴィエの掌が自身の傷跡に翳された途端、体中の傷が見る見る内に癒えていく。自己治癒とは比べ物にはならない回復速度にマーリンは驚きが隠せない。

 痛みが、和らいでいく。


「私が治したいから治すんだ。どうかいまだけは私の我儘に付き合ってくれ、マーリン。……本当に。助けてくれてありがとう」





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