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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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52/67

4ー15





 命の遣り取りをしている最中、嫌な予感がずっと付き纏っていた。クルミの安否を心配する余裕はないと分かっていながらも、どうしても気に掛けてしまう。

 あの空に座した少年の一振り。

 反応ができなかった。少年がその気であればリックはあの場で死んでいた。浮遊の魔術を扱いながらピンポイントで武器を折る手際の良さ。どう考えても只者ではない。

 解錠をしたクルミなら問題ないと信じてはいる。信じているというのに、胸のつかえに似た不安が未だ拭えない。


 揺らぐ空気。

 体に一線の傷が再び刻まれる。


 余計なことを考えては駄目だと悟られたかのような、隙を突いた風斬で傷を負うリック。ダメージ自体大したことない。意識をこの戦いにだけ向けるよう、距離をとって深呼吸をする。

 彼が扱う紫電の活動限界はとうに訪れていた。

 そろそろ紫電を解除しなければ自滅する、そう判ってはいても、眼前の敵を前にそれは許されない判断だ。死に直結する。

 オリヴィエを護りながら自身を相手にし、守護に徹する立ち回りは敵ながら見事だ。加えて自身より先に紫電を発動したというのにカナメの息は上がっていない。オリヴィエの魔術が効いているのは目に見えて明らか。

 このままではーー


「わっ」


 一際大きな揺れに、カナメが驚いた声を出す。クルミの魔術だろう、さっきから揺れは続いている。

 不安が、拭えない。

 解錠をしてからも、揺れが続いている。

 決着がまだ、ついていない。

 

「ねえ、隙だらけだよ」


 カナメの声ではっとする。

 目の前に、敵の短刀が迫っていた。

 油断はしていた、だが。


 それは悪手だ。


 そう言葉にする前に、短刀の振りに合わせて魔剣を振るう。

 その魔剣は触れただけで武器を腐食させる。触れれば触れるほど腐食を加速させ、どれだけ魔力を帯びていようが関係なくその武器を破壊する。魔剣の鍛造に携わった術師は云う。ブリタニアのアーサー王が持つその聖剣すらもこれは破壊できると。

 金属音が鳴る。

 カナメが手に持っていた短刀は思惑通り粉々に砕けた。風斬を駆使していたのも、武器同士の衝突を避けるように立ち回っていたのもストックがないからだと読んでいたリック。

 読みは当たった。

 警戒するは風斬のみ。

 あの未熟な魔術で致命傷になることはない。

 魔剣を迷わず振るう。

 リックの目論見通りに風斬は放たれた。但し、自身の体に向けてではなく、魔剣を弾く為に。

 反動は少ない。そのままもう一度振るおうして、右の腿に小さな痛みが走る。それに気をとられ、リックはカナメを逃してしまう。視線を下ろせば注射器のようなものが刺さっていてーー




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