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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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51/66

4ー14



「何を勝った気になってんのよ」


 解錠をした魔術師と、していない魔術師とでは天と地ほどの実力差がある。


「私が負ける訳ない……だって、私は辿り着いたのよ? ヴァンやシャルと同じ場所に」


 魔導の通説では、解錠後の魔術師を相手に戦うには同じく、解錠をしなければ戦いにすらならない。

 だがそれは。


「だから、」


「話の途中で悪いが」


 だがそれは。

 ()()()に限られた話である。


「いつまで俺を見下ろしてる?」


 それまで緩慢な動きを見せていた黒の剣が素早い回転をした瞬間、クルミは突然の浮遊感に襲われる。


「っ!」


 根本を斬られ、横に倒れていく樹木。

 落下の隙を狙われないよう掌を幹に置き、マーリンに襲いかかるよう地中の根まで魔力を伝えては刺を生やす。足場の為にまた新たな樹木をと考えたが、飛び移る前に根本を斬られては意味がないと判断し、全身に魔力をこめて落下の衝撃に耐える。

 地面に手をついた状態から、ゆっくりと立ち上がるクルミ。

 何度瞬きしても現実は変わらない。

 クルミの魔術をその黒い武器は無に帰す。


「まさかとは思うが」


 横倒れになった大量の樹木、人形の隙間を縫うように。目の前に立つマーリンが馬鹿にしたような表情を見せる。変わらず傍には宙を泳ぐ真っ黒な剣。


「これが本気か?」


 癪に触る物言いに、我慢の限界が訪れる。


「……いいわ、理解(わか)らせてあげる」


 地震。

 クルミの足元から魔力を伝って再三襲いかかる刺にマーリンはうんざりとした顔で、直接手を下さず自動的に斬り伏せる。


「芸のない……お?」


 少年が空を見上げる。

 周囲の樹木が枝を伸ばしーー斬り伏せたそれらも含め、全てが意志をもって連結していくようにクルミの前に集まり、重なっていき、形を成す。

 融合樹体(ゆうごうじゅたい) 王蛇(オロチ)

 木製の大蛇、その大きな口から覗く喉に無数の棘が見える。獲物を喰らい、確実に殺すという意志が現れた造形。


「素晴らしい出来だ、クルミ。その礼に、まだカナメに教えていないことをお前に魅せてやろう」


 呑み込めと主に命じられた王蛇が地面にぶつかる勢いでマーリンを喰らおうとする。

 その間、黒い武具の柄を手にとった少年。

 刃に指を這わせて、魔力がこめられる。


「この魔術が最大限の威力を発揮するのは、自身に適した武器に魔力を乗せて振るうことーー」


 振り下ろされた不完全な剣。

 その鋒から放たれるは、リックの刀剣を切断したときよりも遥かに強化された、



「ーー風斬」



 静寂が、訪れる。

 まるで、そこだけ時間が停まったかのように。

 王蛇がマーリンを呑み込む寸前で、切断されていく。

 真っ二つではなく、()()()()に。


「あ……」


 彼女は放心する。

 たった一振りで。

 その魔術は、クルミの心すらも裂いてしまった。

 そして、枝葉を踏み潰し、ゆっくりと近付いてくる。

 子供の皮を被った、小さな化物がーー







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