4ー11
あらゆる魔術を耐えうる硬度を持ち、且つ、的確に急所を狙ってくる木製の人形。魔術による抵抗も虚しく人形らは瞬時に再生し、対象を追い続ける。
風薙を駆使した回避で致命傷を躱し続けるマーリン。命からがら逃げ回っているようにしかクルミには見えないだろう。
増え続ける傷、流す血液。
だが、命乞いも、諦めも、逃走も、端から考えにない。
風薙も他の魔術も無意識に繰り出したものに過ぎず、彼はただただ没頭する。
淀みなく、丁寧に、線を描く。
昨日の、続きを。
「黙っていてはつまらないわ。良い悲鳴を聞かせて?」
クルミがそう発した途端に揺れる地面。串刺しにしようと木製の人形を巻き込んた無数の鋭い刺が少年を襲う。風薙を腹部にあて緊急回避を試みるが、右腕と左足が掠り血を流す。
「ふふ」
嬉しそうに遠目から少年を見るクルミ。自身は手を下さず嬲り殺しを眺めている様を見て、良い趣味をしていると少年は内心で笑う。
しかし状況は変わらず最悪だ。人形に囲まれている上、空へ逃げられることを警戒しているのか、樹木が空を覆うようにして待機している。加えて地面からの強襲、その警戒も怠ることはできない。
増え続ける人形、全方位からの攻撃。
勝機が少しずつ失われていく中、右手を口元の前に。わっかの形を作り、息を深く吸っては魔力と共に吐き出す。
氷吹。
アイスベアーの魔術を活かし、眼前の人形を数体、氷漬けにする。だが敵の攻撃は当然、止むことはなく。左右と背後の人形、その突撃を回避しようと風薙を使うも、木剣がマーリンの左腕に突き刺さる。
「あはっ。ねえ、頑張ってマーリン。もっと私を楽しませて!」
「充分楽しんでるように見えるが?」
自身が血を流す度、嗜虐の表情を見せるクルミにマーリンは呆れる。少年は自身に治癒を施さず、血を流し続けながらも魔力を回し、右手に炎を宿す。
「あら? あらあらあら?」
それを見て、口元に手をあてるクルミ。
「被害を広げたくないとか何とか、あんな格好いいこと言ってたのに! もう撤回しちゃうの?」
「返す言葉もないな」
「ふふ、開き直っちゃって。あと、まだ燃やせるとか思ってる?」
クルミの言葉を無視して右腕を突き出し、左足を軸に少年が回転をする。
炎円。
術者を中心に回転の勢いで薙いだ炎が襲ってきた人形らに燃え移る。が、クルミの言葉通り徐々に鎮火していく。




