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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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4ー6







『クルミ、無理をしてはいけないよ』


「せんせ。でもわたし、がんばらないと」


『どうしてだい? 充分に頑張ってるよ』


「だってだって、わたし、ヘタクソだから。ヴァンやシャルみたいに、まほう、じょうずにできないから」


『そんなことない。クルミはとても上手だよ』


「……せんせには分からないもん。せんせ、まりょくがないんだから」


『……そうだね。ごめんよ、クルミ』






 死ね。

 死ねよ、私。

 何で、こんな記憶。

 何で、いま、こんなときにーー






『クルミには才能があるよ』


「ないわよ、そんなの。私が一番に分かってる。嫌味? ヴァン」


『嫌味なんかじゃない。先生も言ってたよ、クルミは天才だって。でもクルミは周囲と比べて自分を下に見てる』


「…………」


『いずれクルミは辿り着くよ。俺やシャルと同じ場所にーー』


 ーー魔術の最奥、その場所へ。






 見下していた、自分自身を。

 せんせが死んでからも、ずっと。

 それで強がって、私は私を偽っていた。

 でも、自分よりも一回り小さな子供にすら魔術で敵わなくて、その強がりもぐちゃぐちゃに砕かれた。

 私は私を信じることができない。

 でもね、せんせ。

 せんせの言葉だけは信じてみようと思う。







 四肢蛇が弾かれる。

 空気と地面が震える。

 その目を以ってしても理解に遅れる。

 あからさまな異変にマーリンが目を見開く。


「見ててね、()()


 この現象をマーリンは知っていた。

 信じられない思いでそれを見詰める。

 球体。

 樹によって形成された球体が、クルミの姿を完全に隠していた。中で蠢く魔力に合わせて振動し続ける球体に向け、マーリンは迷うことなく魔術ーー雷槍(らいそう)を落とす。周囲に響く落雷の音、ばらばらに舞う幹の破片。天上から放たれた(いかずち)を受け、円の形を成していない樹木の中からーー動く人の姿。

 それはまるで孵化だ。月の光を一身に受け、祝福されているかのような誕生にマーリンは目を奪われていた。

 目に入ってきたのは真紅のドレス。一見場に相応しくないそれは、夜の森を背景に一層美しさが際立ち、妖艶さを魅せている。髪型はおさげではなくなり、背中に流した赤茶の長髪と、伸びた黒色の爪。


「似合っているかしら?」


 先とは違う、別人かと疑うほどの艶やかな笑みにマーリンは「ああ」と返事をする。

 魔導に於いての開かずの扉。

 目の前にいるのは、その先に足を踏み入れた一人の魔術師。


 解錠(かいじょう)


 其れは術師が目指す最終到達点、魔術の極致。






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