4ー5
地面から枝分かれするようにして幾つもの樹木がマーリンを襲う。クラウンゴーレムが主を守っている間、クルミの口元が僅かに歪んでいるのをマーリンは見逃さなかった。
突如、少年の背後、その地面から円錐のような形で伸びる樹木。
心の臓を狙った奇襲にマーリンは振り返ることなく、それを燃やし尽くした。
「ーーは?」
一瞬にして消え去る炎、動揺するクルミ。
魔力が関わりを持つ以上、ありとあらゆる奇襲はマーリンに通じない。それがクルミの足元を通じ、地面下で行われた魔力操作であろうとも少年には全て見えている。
この世でただ一人、魔眼を持つ魔術師。
魔術王マーリン。円卓に身を置いていた当時、誰一人として彼に敗北を教えたものはいない、ブリタニアの英雄である。
樹木による攻撃が止まり、クラウンゴーレムの影から王が姿を晒す。
「どうして、なんで分かるのよっ……! 分かるわけないのに!」
反応から見るにとっておきの秘策だったようだ。確かに普通の魔術師なら先の攻撃で仕留めていただろう。
少年は溜息を零す。
「予想はつくだろ、地面に魔力を通してる訳だからな。それよりも見ろ」
マーリンが掌を見せるように差し出し、魔術による炎を見せた。
「俺はいつでもお前の魔術を燃やすことができた。どうしてそうしなかったと思う?」
「…………」
「被害を広げたくない、ただそれだけの理由だ。場所が場所だ、いま使うのも少し躊躇った」
「……アンタ、なに? なんなのよ……」
膝から崩れ落ちるクルミを、失望したような表情でマーリンは見下ろす。
「この程度で戦意喪失か。折角いまの力を試せると思ったのにがっかりだ。円卓の足元にも及ばない」
マーリンが指を鳴らす。クルミの魔術によってひび割れた地面から四本の鎖が飛び出し、術者の周囲で待機していた。
四肢蛇。
対象を拘束する為に特化した魔術。
「お前の身柄は教団に引き渡す。それまで拘束させてもらおうか。……そういえば聞いていなかったな。何でオリヴィエをーーいや、もうどうでもいい。お前に興味がない」
クルミに指先を向ける少年。水を得た魚のように、四肢蛇が彼女を拘束しようと取り囲みーー
「せんせ」
誰かに助けを求めるような幼い声で、彼女はそう呟いた。




