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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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42/67

4ー5



 地面から枝分かれするようにして幾つもの樹木がマーリンを襲う。クラウンゴーレムが主を守っている間、クルミの口元が僅かに歪んでいるのをマーリンは見逃さなかった。

 突如、少年の背後、その地面から円錐のような形で伸びる樹木。

 心の臓を狙った奇襲にマーリンは振り返ることなく、それを燃やし尽くした。


「ーーは?」


 一瞬にして消え去る炎、動揺するクルミ。

 魔力が関わりを持つ以上、ありとあらゆる奇襲はマーリンに通じない。それがクルミの足元を通じ、地面下で行われた魔力操作であろうとも少年には全て見えている。

 この世でただ一人、魔眼を持つ魔術師。

 魔術王マーリン。円卓に身を置いていた当時、誰一人として彼に敗北を教えたものはいない、ブリタニアの英雄である。

 樹木による攻撃が止まり、クラウンゴーレムの影から王が姿を晒す。


「どうして、なんで分かるのよっ……! 分かるわけないのに!」


 反応から見るにとっておきの秘策だったようだ。確かに普通の魔術師なら先の攻撃で仕留めていただろう。

 少年は溜息を零す。


「予想はつくだろ、地面に魔力を通してる訳だからな。それよりも見ろ」


 マーリンが掌を見せるように差し出し、魔術による炎を見せた。


「俺はいつでもお前の魔術を燃やすことができた。どうしてそうしなかったと思う?」


「…………」


「被害を広げたくない、ただそれだけの理由だ。場所が場所だ、いま使うのも少し躊躇った」


「……アンタ、なに? なんなのよ……」


 膝から崩れ落ちるクルミを、失望したような表情でマーリンは見下ろす。


「この程度で戦意喪失か。折角いまの力を試せると思ったのにがっかりだ。円卓の足元にも及ばない」


 マーリンが指を鳴らす。クルミの魔術によってひび割れた地面から四本の鎖が飛び出し、術者の周囲で待機していた。

 四肢蛇(ししへび)

 対象を拘束する為に特化した魔術。


「お前の身柄は教団に引き渡す。それまで拘束させてもらおうか。……そういえば聞いていなかったな。何でオリヴィエをーーいや、もうどうでもいい。()()()()()()()()


 クルミに指先を向ける少年。水を得た魚のように、四肢蛇が彼女を拘束しようと取り囲みーー


「せんせ」


 誰かに助けを求めるような幼い声で、彼女はそう呟いた。





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