4ー4
「茶番はしまいか?」
リックの掌から、一瞬の輝きが放たれる。
カナメは視認した。
掌に描かかれた魔法陣、そこから現れた武具を。
「そうやって武器を生み出してるのね」
「正確には取り出している、だ。そんなことより何なんだ、お前らは。どうしてオリヴィエを助けようとする?」
「人を助けるのに理由が必要?」
「そりゃあな」
即答するリックが長剣を肩に担ぐ。マーリンが折ったものとは違う、どこか禍々しい意匠が施された刀剣。何かしらの魔術が付与されていると読み、カナメは警戒をする。
「これは忠告だ。何の見返りもなしに人を助けるなんてのはやめろ。損得勘定ができない奴から真っ先に死んでいく。この世界は優しくなんかない、偽善一つで命を落とす」
「別にいいよ」
懐から短刀を取り出し鋒を向けるカナメ。
「偽善一つで命が助かるならそれでいい」
「……そうかい」
二人の会話はそこで止まった。
集中した両者。互いの呼吸が耳に届く中、一歩、同時に踏み出した瞬間に命の遣り取りを交わす二人の魔術師。
術師の闘争、その始まりを告げるかのように、夜の森に火花が咲いた。
その目は魔力を観測できる。
一般の人間も魔術師も魔力は視認でぎず、魔術という形を得て初めて認識できるもの。況してや空気中に漂うマナを目にすることはこの先、魔術がどれだけ発展しようと誰もできないとされていた。
ただ一人の例外を除いて。
「さっきまでの威勢はどうした? あんなにも楽しそうにしてたのに」
「うるさいわね! 調子に乗りやがって」
現在、マーリンは地上にいる。足場にしていた樹木はクルミが触れたことによって縮小され降りることを余儀なくされた。
ゴーレムを盾に大樹から身を守り、隙を突くようにして魔術を放つマーリン。それを樹木で防ぐクルミ。変わり映えのしない攻防を繰り返す中、クルミには明らかな疲れが見え始め、対照的にマーリンは余裕の笑みを浮かべていた。
マーリンの目はマナを認識し干渉を可能とする。
一般的な術師は体内の魔力を使うことで魔術を行使する。だが彼は自身の魔力と併せて周囲のマナを利用し魔術を扱う。長期戦は彼の得意とするところで、相手にすればするほど魔力の差が開いていく。
「もう少し歯応えのある術師だと思っていたが残念だ、拍子抜けにも程があるぞ? ほらほら、本当はもっと頑張れるだろ? ク・ソ・ガ・キ」
「アンタの方がぁ……」
ぷるぷると肩を震わせる様を見て、せせら笑う少年。その態度が火に油を注いだのか、クルミの魔力が乱れに乱れる。
「どう考えてもガキでしょうが!!」




