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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第4話 魔術王と魔術師

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39/66

4ー2

 


 咄嗟に幹の上から飛び降りたマーリン。この場面で風斬を打たなかったのは弾かれるからだと予想したのだろう。その読みは当たっている。魔力を帯びた樹木に生半可な魔術は通用しない。

 地面に難なく着地したマーリンを見て、クルミの口元に勝ち誇ったような笑みが浮かぶ。

 

「どう? 見下ろされる気分は」


「別に何とも。お前が何処に立とうが、実力の差に変わりはあるまい」


 ああ言えばこう言う。典型的なクソガキっぷりにクルミはイライラを抑えるのに必死だった。怒りは冷静さを失い、術式の乱れに直結する。魔術と感情は切っても切れない関係だ。

 

「それにしても、なかなかに小賢しいな。わざわざオリヴィエをここに呼んだのは地の利を活かす為か」


「深読みね。単純に死体を埋めるのに都合いいからよ」


「本当にそうか? この程度の魔術ではアドバンテージがなければまともに戦えないだろ。なあ? 臆病者」


「ーーさっさと死にたいらしいわね」


 怒りで術式が僅かに乱れても問題はない。

 子供一人殺すには充分な魔力を用いてクルミは幹の上に掌を置き、先と同様、新たな樹木を生み出す。

 樹樹麗隷(じゅじゅれいれい)

 自然の摂理を捻じ曲げる魔術。

 そこに根があれば、幹があれば、枝があれば、魔力を帯びた樹木を生み出し、自由自在に操ることを可能とする。

 空から蛇のような動きで襲いかかる樹木に対し、マーリンは地面に掌を置いていた。


「さて、名誉挽回だ」


 突如地面から現れるは寸胴型のゴーレム。主の前に立つその背中に少年は掌を置いた。

 目に見えて、一瞬の変化が起こる。

 一介の土人形でしかなかったその体から湧き出る無数の鉱石。緑色に光り輝くそれは鎧となり、ゴーレムが樹木に向かって受け止めようと両手を伸ばす。

 ぶつかる魔力と魔力、人形と樹木。

 自身が優勢だと信じて疑わなかったクルミだが、結果はそれを裏切る。


「はあ?」


 たかがゴーレムに樹木の動きを完全に止められたクルミ。それだけではない、ゴーレムの体が死角となって、いつの間にか少年の姿を見失ってしまう。


「どこを見ている?」


 背後から、声。

 振り返ったと同時にゴーレムを襲った樹木に触れクルミは武器を生み出す。剣を模したそれを素早く振るうが、風斬によって弾かれ、その勢いで幹の上から落ちる。

 落下の最中、木剣に魔力を込める。樹木の体積、硬度を自在に変える樹樹麗隷。木剣を緩衝材に転換ーーベッドに見立て地面に展開し落下の衝撃を殺そうとするが、


「いっ、た……」


 衝撃は、完全に殺すことはできなかった。その隙を突くように、クルミの傍にいたゴーレムが拳を振るう。


「がはっ……!」


 腹を殴られ、吹き飛ぶクルミ。

 背後の木に思い切りぶつかって、呼吸が途切れる。


「アイスベアーから着想を得たが思いの外うまくいったな。そんなことよりも、どうだ?」


 にやにやと。

 クルミの様子を見て、笑みを浮かべる少年。


「再び、見下ろされる気分は」


「……クソガキぃ……! いますぐ殺してやるっ!!」


 背後の木に触れ、殺意を形にするクルミ。

 互いの魔術が爆ぜ、夜が深まる中、銀髪碧眼の少年には未だ傷一つなかった。



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