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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第3話 少年とギルド

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34/67

3ー8



「ふっ」


 振り返り、不敵に笑うマーリンを見てオリヴィエは予感する。まさかあのゴーレムには何か仕掛けがーー


「氷漬けにするのはちょっと話が違うよね?」


「…………」


 三人の間に沈黙が流れる。

 その沈黙を「だっさ」の一言で破壊したカナメ。


「これが魔術王かー」


「うぐぅ」


「あんな自信満々に引導を渡してやれって言ったのに」


「ひぎぃ」


「ここで証明しよう、俺がマーリンであることを」


「わァ……あ……」


 泣いちゃった、と言うカナメ。

 何だか少年が更に小さく見える。いまの彼を見て、あのマーリンだと信じることはまあ難しいだろうなとオリヴィエは思う。けれども別にオリヴィエはもう疑ってはいなかった。先の遣り取りで見た少年の誠実な対応と、そんな彼に信頼を置くカナメの姿を見て、オリヴィエの中から疑いは既に消え去っていた。


「! 来るよ!」


 忠告したオリヴィエの言葉が届いていないのか呆然としたマーリンに向かって走り出すアイスベアー。殺意に光る紅い眼差し、迫る氷の躯。道具を構えるオリヴィエの横でカナメが「マーリン!」と叫ぶ。


「マーリン、来てるよ!」


「わァ……あ……」


「ごめんって! もう!」


 カナメが瞬時にマーリンの前に移動する。

 速い。

 隣にいた筈なのに、その動きをオリヴィエは捉えることができなかった。

 懐から取り出した短刀を数度、振り下ろすカナメ。


「な……」


 驚愕で目を見開き、後に静けさが残る。

 たった数秒の出来事に信じられないオリヴィエだったが、目の前に横たわる首を切断された二匹のアイスベアーを前に、これは現実なのだと認めざるをえない。あまりにも鮮やかなその手際に詐欺もいいところだなと笑いそうになるオリヴィエ。

 これが六等級? 

 馬鹿言え。彼女は二等級か、それ以上のーー


「はい、終わったよマーリン。……本当にごめんって」


 頭をよしよしと撫でられる少年。


「オリヴィエさん、怪我ないですか?」


「あ、ああ。すごいなカナメ」


 そう言うと嬉しそうに笑うカナメ。魔物に向けた先の冷徹な眼差しは何処へやら、あどけないその反応にオリヴィエは惑いつつもただ感嘆していた。


「慣れてますから。ララさん呼びに行ってきますね」


 二人を置いて回収班を呼びに行ったカナメ。無様なところを見せた自称魔術王と残されて少し気まずいオリヴィエ。沈黙に耐えきれずに言葉を零す。


「すごいな、あの子」


「カナメは魔物討伐のスペシャリストだ。この程度の魔物、どうということはない」


「……」


 立ち直って良かったなと思う一方で、そんな魔物に醜態を晒したのはどこの誰だろうかと、口をついて出そうだった言葉を飲み込む。



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