3ー5
やっぱりイライラしてるじゃんと笑うリックに不貞腐れた顔をしたクルミ。魔道具を懐にしまい、互いに注文を済ませてからリックが「どうなると思う?」とクルミに問う。
「何がよ」
「オリヴィエだよ。こっちの仲間になると思うか?」
「さあ?」
「さあって……お前なあ。相手が断ったら何をするか分かってんだろ」
「なに、びびってんの?」
「まさか。俺はお前を心配して」
「覚悟はできてる」
リックの言葉を遮って断言するクルミ。
その目に一切の迷いはない。
「あの日から、ずっと。アンタもでしょ? リック」
「……ああ。そうだな」
無理して作ったような笑みを浮かべるリックからクルミは目を逸らす。頼んだ品物が来るまでの間、二人は無言でその場を過ごした。
「にわかには信じがたいな」
五等級の依頼を受けて目的地の洞窟に向かう道中。マーリンから事情を聞いたオリヴィエの一言目はそれだった。
「嘘は吐いていないが、それを信じろというのも無理な話か」
馬車の荷台で向かい合うマーリンが表情を変えずに淡々と言葉を紡ぐ。彼が再び言葉を繋げようと口を開いたその瞬間、
「あのう」
オリヴィエの隣に座る回収班のララが片手を挙げる。マーリンと同じくらいの小さな背丈、黄色のリボンが目立つハットを目深に被る彼女が疑問を呈する。
「私がこの話を聞いてても大丈夫なんでしょうか?」
「問題ない、と言いたいが、聞かなかったことにしてくれないか?」
マーリンがそう言うと素直に頷くララ。
「分かりました。耳を塞いでおきますね」
そう言ってララは耳に手をあてて目を瞑る。「いや、目を閉じる必要は」と口にしたマーリンの言葉は、ララにはもう届いていなかった。
青い瞳が、オリヴィエに向けられる。
「いまさっき口にしたことは、全部本当の話だ。嘘かどうかは診てもらえば分かる。ーー頼めないだろうか、オリヴィエ」
真摯に頭を下げるマーリンに倣って、彼の隣に座っていたカナメも「お願いします」と頭を下げる。
「……申し訳ないが、もし君の話が本当だとしてもその話を受けることはできない」
そんな、と声をあげるカナメ。その反応で少年の言っていることがますます真実味を帯びてくる。オリヴィエはカナメの顔を見ることができず、下を向いたままでいた。
「理由を聞いても?」
「もう、人を診るのには疲れたんだ」
俯いたままそう口にしたオリヴィエの言葉には重みがあった。僅かな間を置いて、口を開く。
「ひとを治せば治すほど名は広がっていき、周りから期待されるようになって、自由がなくなってーー正直に言おう。自殺しようとすら思ってた」




