2ー11
どこかばつが悪そうな彼女を見かねてか「ヒバナ」と声をかけるマーリン。
「今度はヒバナが誰かを助けてやれ。その為には力が必要だ、どんな敵を前にしても恐れないくらいの力が。もっとも、今日を忘れなければヒバナは大丈夫だよ」
上下に動く翼。
ゆっくりと浮き上がる飛竜。
「次に会う時まで、お互いに強くなろう」
またな、と手を振るうマーリンに「はい!」と大きな声をあげるヒバナ。
「私、絶対に強くなります! マーリン君みたいに、誰かを助けられるくらい!」
「ああ、楽しみにしてる」
そうして少年の姿は見えなくなった。
呆気ないさようならを噛み締めたあと、見上げていた空から目線を逸らしヒバナは歩き出す。一回は死んだと思ったこの命だ、生まれ変わった気持ちでいまを生きて、ただただ頑張ろうとヒバナは誓う。
明日からじゃなくて、今日から。
次に会うその時まで。
彼に誇れる自分に、なれるように。
シルバで合流したマーリンとカナメ。
不機嫌そうなカナメに少年が惑う。
「……どうかしたか?」
「マーリンはさ、胸が大きい子が好きなの?」
「は?」
突拍子もない問いかけ。
宿をとるために向かっていた足が立ち止まる。
「急にどうした?」
「……二人で一緒に乗れるなら、わたしと一緒でも良かったのに」
間を置いて何のことか漸く理解したマーリン。
ヒバナと飛竜に乗る際、その場にはカナメも居合わせていた。確かに会って間もない人間と一緒に乗るよりも、カナメと乗る方が自然だろう。ただ少年にも考えがあった。
「話しておきたかったんだ、あのデカい魔物について。俺は関わりを持っていないとヒバナには報告してもらいたかったんだよ」
「……乗る前に話せたじゃん」
「…………たしかに」
膨れっ面のカナメ。
妙に圧を感じ、困る少年。
「……どうして、手柄にしなかったの?」
カナメの方から話題を変えてくれて「あ、ああ」とすぐさま会話に乗るマーリン。
助かった。
立ち止まっていた二人の足が動き出す。
「単純だよ。教団に目をつけられたくなかったんだ」
「でも、等級も上がるし、報酬も貰えるよね?」
「いや、ギルドが関与してない討伐は昇級に関係ないんだ。あれは教団の仕事だ。その教団から報酬は貰えるだろうが、できればあんまり関わりたくないな」
「旅の邪魔になるから?」
「ーーその通りだ。どこから来たのか、どうやって魔物を倒したのか、どんな魔術が使えるのか、いちいち聞かれるのも面倒だ。入団も勧められるだろうし、目的の邪魔でしかない」




