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セシリアに言われたことを胸に刻むカナメ。彼の目の前に困難が立ちはだかるのであればそれを退かすのが自身の役割だと彼女は自覚する。内に芽生えた忠誠心は揺るぎないものとなっていて、マーリンが元の姿に戻れるよう心身ともに尽くすことを彼女は誓う。
髪を梳かしながらベッドの横に置かれた棚を見る。図書館で借りた書物が大量に積まれているのを見て、きっと夜遅くまで読んでいたのだろうとカナメは推測する。
「手掛かり、何か見付かった?」
「なんにも。図書館自体の規模は小さかったから仕方ないな」
口元に手をあてて欠伸をするマーリン。もとより最初から期待していないと少年は言う。少しでも呪いを解くヒントが見つかれば幸いだと適当に魔導書を読み漁っているに過ぎなかった。
本命はそう、別のところにある。
「アイリス方面に向かってく途中で見つかれば苦労しないんだが」
首都アイリス。
二人の目的地でもあるそこはエルドラ国で一番大きな魔導図書館が建てられている。
そして、一つの懸念点があった。それは特殊文献の閲覧には術師の階級が求められること。現在ギルドで登録したマーリンとカナメの階級は六等級。これはエルドラ国で一番下の等級であり、マーリンが求めている魔導書はおそらく一等級でないと読むことは叶わない。
ウルルに着くまで聞いていたマーリンの考えを振り返るカナメ。等級をあげることよりも、呪いを治せる術師を見つけることが一番だと彼は言っていた。その道中でギルドの依頼をこなし、階級を上げることも彼は視野に入れている。
「早く見つかるといいね」
「本当にな。大人になってから分かったが、何をするにしても子供ができる範囲はあまりに狭い。困ったものだ」
「でも得することもあったよね」
「得?」
「うん。子供は沢山食べなさいって、ご飯いっぱい盛り付けられてた」
「……確かに。何も悪いことばかりじゃないか」
眠気が覚めたのかハキハキと喋るようになったマーリン。目を指で擦る仕種もどこか品がある。
早く見つかるといい。
カナメの言葉は本心だ。マーリンが元の姿に戻るーーこの可愛い子供姿が見れなくなるのは寂しいけれども、そんなことより。願いが成就された先のことをカナメは考えてしまう。
マーリンの願いが叶えば、わたしはーー
「そういえばカナメ、高いところは大丈夫か?」
掛けられた幼い声に暗い考えが途切れる。「うん、大丈夫」と声を返すカナメ。
この街では情報収集に時間を費やした二人だが、泊まった理由は別にあった。
迎えた予約当日。
二人は飛竜の上に乗って街へ移動する手筈を整えていた。




