2ー2
沈黙を貫くヒバナの反応が面白くなかったのか「ふん」と鼻息を鳴らすマグナ。
「ただ黙っているだけか。言っておくがこれは親切心から忠告しているんだぞ? 教団にいたところで今のままでは無様に死ぬだけだ」
その通りだろうとヒバナは内心で頷く。鼻を啜るヒバナにマグナは振り向き、その顔を覗きこむような仕種をする。
「もしかして泣いているのか? ああ、勘弁してくれ。これだから女は嫌になる」
「マグナさん」
「ん?」
ヒバナからアランの方へ顔を向けるマグナ。「あれを見てください」と言われた先には地表に出た砂竜が横たわっていた。
「何だ? 寝ているのか?」
遠目からはそう見える。
マグナの反応にアランが首を横に振る。
「いや、砂竜は地上で睡眠をとらないはずです。近付いてみましょう」
周囲に人影はなく、砂竜に近付くまでの間、馬の足音だけが三人には聞こえていた。
そして、死骸を前に足を止める。
遠目からでは見えなかった砂竜の横腹は噛みちぎられたような痕があり、そこから流れた血が地面に染みていた。
「死んでますね」
「見れば分かる。何だこれは。何にやられて、」
マグナの言葉が途切れる。地面の揺れを感じた瞬間、三人がいた地面が音をたててひび割れ地表が盛り上がる。
「えーー」
その勢いでヒバナは乗っていた馬ごと吹き飛ばされ、地中から出てきたそれをマグナとアランは呆然と見ていた。
砂竜とは比にならない程の体長。細長いフォルムは蛇を思わせ全身が骨に包まれている。夜を連想させるような眼窩に、剥き出しの鋭利な歯。
口を開き、咆哮をあげた魔物の名は骸龍。
この場にいる術師では到底敵わない高位の魔物である。
「あっ」
間の抜けた声を発したヒバナ。吹き飛ばされた勢いで離れた馬は危険を察知し主を置いてその場から離れてしまった。それに続く二つの影をヒバナは見ることしかできない。
驚きで「待って」も言えなかった。
そもそも言ったところで二人は待ってくれなかっただろうとヒバナは思う。座り込んだままの彼女は体勢をなおさず、ただ見上げる。目の前に居座る化物を見てヒバナの脳裏に同僚の最期が浮かぶ。
同じようになるのだと数秒後の未来が簡単に想像できて、ヒバナ・クロフォードは死を覚悟した。




