1ー11
王の言葉に円卓の間が騒めく中、ガウェインが口を開く。
「……失礼ながら、王よ」
「ん?」
「奴は既に円卓を降りている身。何も語ることなど、」
「いや、これは我々にも関係ある話だ。少し聞いてくれ」
「……仰せのままに」
「マーリンはどうなったんですか?」
王の話に興味を示したのはそれまで黙っていたランスロットだ。真剣な表情で伺う彼はどこか心配そうな様子を見せていた。「まさかやられた訳じゃ」
「ああ、それなら大丈夫。刺客とは和解して一緒に旅をするそうだ」
「…………はあ?」
思わず間抜けな声を出すランスロット。その反応が面白かったのか隣に座っていたパーシヴァルが「ふふ」と笑い声を洩らす。
「頭狂ってるのか? 自分を殺しに来た人間と一緒にいるなんてイカれてやがる」
髪を片手でかきあげながら吐き捨てるように言ったモルドレッド。ついでアーサーの向かい側に座るアグラヴェインが言葉を紡ぐ。
「王よ。先程、我々にも関係のある話だと言っていたが」
アグラヴェインの言葉に「ああ」と相槌を打つ王。
「刺客は円卓から放たれたものだ」
それは揺さぶりをかけるために思いついたアーサーの嘘だ。
実際アーサーとマーリンは何も情報を掴んではいない。だが二人とも円卓の魔術師以外に有り得ないと結論付けてはいた。まずマーリンが少年になったという情報は広く認知されておらず限られたものしか知らない。そして、従順な使いがいて、金払いがいい人間もまた限られている。
アーサーは全員の様子を見ていた。だが、誰もが落ちついているように見える。誰かの言葉を待たずしてアーサーは言葉を繋げる。
「いまは犯人探しをするわけじゃない。皆に伝えたいことはここからでね」
一つ、刺客の魔術師に危害を加えることを禁ずる。
二つ、刺客の家族、及び村の住民に危害を加えることを禁ずる。
「禁が破られた場合、魔術師マーリン、アーサーの両名が報復に出るものとする。それとマーリンから一言ーー」
ーー直接殺しに来い、臆病者。
その言葉に。
指先が震えた魔術師が、一人。
「という訳だ。当然だが我々に仲間同士で争う時間はない、疑う暇すらも。この話はこれで終わりだ、つぎの話に移ろう」
アーサーが話題を変える。辺りの反応を窺ってはいたがそれらしい人間はいなかった。マーリンの挑発もあまり意味をなさなかったかと王は考えていたがーー肩が怒りで震えるのをおさえていた魔術師が一人いた。
臆病者。
自身にあてられたメッセージを反芻する。
沸々と湧き上がる憎悪に唇を噛む。
必死に感情を鎮めようと冷静を装う。
だが怒りのあまり、指先の震えだけが、どうしてもおさえることができなかった。
『マーリン……!』
お前は必ず殺す。
せいぜい、僅かな生を楽しんでいろ。




