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二人で輝くとき編4(反応と反響)

テレビ画面の中で、記者の鋭い質問に毅然と答える裕奈の姿を見つめながら、遼は胸にわずかな痛みを感じていた。


「やっぱり、彼女はすごいな……」


その堂々とした態度、言葉の一つひとつから、彼女がどれほど渉を信頼しているのかが伝わってくる。

それは、かつて彼が裕奈に抱いていた憧れにも似た想いを、無意識に突き放すものだった。


「俺じゃ……無理だったんだろうな。」

遼は小さく笑った。

どんなに裕奈に近づこうとしても、彼女が本当に求めているものは、最初から渉しかいなかった――そんな現実を、彼はとうに理解していた。


渉が側にいたからこそ、彼女は今のように輝いているのだろう。


その二人の関係は、自分がどれだけ頑張っても入り込むことのできない特別なものだった。


「幸せにしてやれよ。」


心の中でそう呟き、遼は画面を見つめるのをやめた。


裕奈を想う気持ちは胸の奥にそっとしまい、俳優として、自分の新たな道を進もうと決意する。




紗良は自室のテレビの前で、裕奈と渉の会見を見つめていた。

画面に映る二人の姿は、どこか眩しく、そして切なかった。


「渉さん……本当に、裕奈さんが大切なんだね。」


記者たちの質問に誠実に答える渉。

その一言一言には、裕奈を思う深い感情がにじんでいた。


渉が自分の気持ちを受け入れてくれなかった理由を、紗良はようやく心から理解した気がした。


渉の心に住んでいた誰かーー彼女こそが渉にとっての特別な存在だったのだ。


「叶わないんだね、やっぱり。」


紗良は、小さく微笑んだ。

その笑みには悔しさだけでなく、渉への感謝も込められていた。


彼の言葉に導かれて、自分はここまで成長することができた。

それは紗良にとって何よりも大きな支えだった。


「でも、これで良かったんだ。」

画面を見つめながら、紗良はそっと目を閉じた。

彼女の胸の内にあった恋心は、次第に感謝と祝福の思いへと変わっていった。


「渉さん……幸せになってくださいね。」

彼女はそう呟きながら、涙を拭い、もう一度前を向く決意をした。


渉の教えを胸に、自分自身の力で輝こう――それが紗良にとっての、新たなスタートだった。





事務所の一室。静寂が満ちる空間で、松永と千鶴は画面の向こうの二人を見つめていた。


記者たちの質問に、落ち着いた声で一つひとつ答える裕奈と、そんな彼女の隣には、堂々とした姿勢で同じく質問を受け止める渉がいた。


表向きには交際を否定しつつも、その言葉の端々には互いへの信頼と、これまで歩んできた年月への感謝がにじんでいた。


「……あの二人なら乗り越えられるのかもしれないな。」


松永は静かに呟いた。

彼の目には、画面の中の二人の姿が強く焼き付いていた。


千鶴もまた、深く頷くように目を閉じる。

「裕奈がこんなに強くなれるなんて……」


わずかに震える声には、母親としての感慨が滲んでいた。


「本当なら、こんな形で覚悟を試されることなんて、あの子にはなかったはずなのに。」


千鶴の手が無意識に握りしめられる。

だが、その拳にこもるのは悲しみではなく、確かな誇りだった。


画面に映る娘の表情には、以前の迷いや不安は微塵も感じられなかった。

ただただ、目の前の問題に向き合おうとする覚悟と、隣に立つ渉への絶対的な信頼が読み取れた。


「久住くん……あなたが裕奈に与えてくれたものは、想像以上に大きかったわね。」


千鶴がそう呟くと、松永も静かに目を閉じたまま頷いた。


「久住が裕奈を支えた分、裕奈も久住を支えたんだろう。だからこそ、あの二人は強い。」


松永は視線を画面に戻し、記者会見が終わり、二人が深々と頭を下げる姿を見つめる。

その姿には、芸能人とマネージャーという枠を超えた、確かな信頼と絆があった。


「……あの頃の俺とは、違うな。」

ふと松永が呟いた言葉に、千鶴がそっと目を向けた。

「沙織さんのこと?」


松永は微かに笑い、グラスに残った水を一口含んだ。

「あの頃の俺には、覚悟が足りなかった。沙織を守るなんて言いながら、本当に守り抜く方法を見つけられなかった。」


かつて、国民的女優として輝いていた沙織。

彼女とのスキャンダルが世間に広まったとき、松永は彼女を守るつもりだった。


だが、結果的に彼女は芸能界を去り、松永は後悔を抱え続けてきた。


「でも、あいつらは違う。二人で支え合って、共に前に進もうとしている。」


松永の視線の先には、会見を終えた裕奈と渉が映っていた。


千鶴はその言葉を静かに受け止めながら、ふっと小さく笑った。


「あなたが背負ってきたものが、彼に伝わったのかもしれないわね。」

松永は短く息をついたあと、小さく肩をすくめる。


「だとしたら、せめて今度こそ見届けてやるさ。」

「ええ。私も……母親として、あの子の選んだ道を信じて見守るわ。」


二人の視線は、まだ画面の向こうにいる裕奈と渉に向けられていた。


彼らが選んだ道が、これからどれほどの困難を伴うものかは分からない。


だが、それでも——

「あの二人なら、大丈夫よね。」


千鶴の呟きに、松永は静かに頷いた。



︎☆


会見後、世間の風向きは徐々に変わり始めた。


「堂々としていて素晴らしかった」

「真実を語る彼女の目は嘘をついていない」

「あのマネージャーが彼女を支える理由が分かる気がする。」


SNSやメディアでも、彼女を称賛する声が増えていった。

最初はスキャンダルとして糾弾されていたニュースは、次第に二人の誠実さや絆を評価する記事やコメントに置き換わっていった。


その一方で当然ながら否定的な声もあった。

「本当に何もなかったのかな?あれだけ近くにいたんだし…。」

「会見は見事だったけど、まだ様子を見たほうがいい。」

「清純派って言われてきたけど、イメージは完全には戻らないだろ。」


一部の人々は疑念を抱き続け、決して全員が完全に納得したわけではなかった。


業界内からも、「今回の会見は好印象だったが、今後の行動次第で風向きはすぐ変わるだろう」という冷静な意見が上がる。


それでも、徐々に世間の論調はこうまとまり始めた。

「彼らが付き合っていようがいまいが、あの会見で見せた関係性は本物だろう。」

「別に恋愛でも友情でも、どちらでもいいじゃないか。あの二人には確かな絆がある。それで十分だ。」


渉と裕奈の真摯な姿勢は、すべての疑念を払拭したわけではない。

だが、人々の心を少しずつ溶かし、二人の関係を「それでいい」と受け入れさせていった。


会見を終えた二人のもとに吹く風は、完全に温かなものではなかったが、確実に冷たさを失いつつあった。

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