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間章:澤村遼

澤村遼は、裕福な家庭の一人息子として生まれた。


両親は共に経営者で忙しく、幼い頃から家には使用人がいたが、親の愛情を強く感じる機会は少なかった。

特に父親は仕事中心の人間で、家に帰ってくることも少なく、母親も表向きは良き母を装いながら、息子には厳しく接した。


だが、遼はそんな家庭環境を気にすることなく、自由気ままに育った。

何をしても許される環境で、欲しいものは何でも手に入ったし、困ったことがあれば周囲の大人が解決してくれた。

そのため、「努力しなくても何とかなる」という感覚を幼い頃から持っていた。


また、遼は幼い頃から容姿が整っており、どこに行っても「かっこいい」「将来はモデルかな?」とチヤホヤされることが多かった。

本人もそれを自覚しており、早い段階で「人生イージーモード。自分は特別なんだ」と思うようになる。


小学生の頃にはすでに女の子からモテ始め、「遼くんかっこいい!」と無邪気に言われることに慣れていた。


それは、遼にとってはただの”当たり前”であり、自分が誰かを特別に好きになることもなく、なんとなく流されるように日々を過ごしていた。


中学に入ると、そのルックスの良さと社交的な性格でますます女子に囲まれるようになる。

勉強はそれなりにこなし、スポーツもそこそこ得意だったが、特に努力をすることもなく、なんとなくこなしていた。


付き合った人数は数えきれないほどだが、遼自身は誰にも本気になることはなかった。

相手が夢中になっても、彼にとってはただの遊びであり、恋愛に対して深く考えることもなかった。


そんな中、ある日友人に誘われて軽い気持ちで応募したモデルオーディションで、遼はグランプリを獲得することになる。


オーディションでの優勝をきっかけに、遼は高校生になる頃には雑誌のモデルとして活動を始める。

最初は「なんとなくカッコよく写っていればいいんでしょ?」くらいの気持ちだったが、その適当なスタンスでも周囲の評価は高かった。


天性の華やかさと、飾らない態度が「自然体でかっこいい」と受け入れられ、またたく間に人気モデルとなる。

ファッション誌の表紙を飾ることも増え、次第に「イケメンモデル」として名を馳せるようになっていった。


この頃から夜の街にも出入りするようになり、年上の女性との関係も増えていった。

年齢を偽ってバーに出入りし、大人の世界に足を踏み入れる。


だが、どんなに綺麗な女性と遊んでも、どんなに甘い言葉を囁かれても、遼の心が本気で動くことはなかった。


「どうせ俺は、顔が良いからちやほやされてるだけ。」


そう思いながらも、それを楽しむ自分がいた。

人を本気で好きになれないなら、遊びでいい。傷つかないし、傷つけられもしない。

そんな考えが、彼の根底にあった。


高校を卒業した遼は、そのまま芸能活動を本格化させる。

モデルとしての人気は相変わらず高かったが、事務所の方針で俳優業にも挑戦することになった。


だが、遼にとって演技は「遊びの延長」だった。

役作りにこだわることもなく、台詞を覚えてそれっぽく演じれば、それなりに評価される。

天性の華やかさと、持ち前の器用さで、演技力がなくてもなんとかなっていた。


演技に本気で向き合う俳優たちの姿を見ても、遼はどこか冷めた目で見ていた。


「そんなに頑張っても、売れるかどうかなんて運じゃん?」


彼にとって芸能界は「顔がいいから選ばれただけの世界」であり、演技に情熱を持つ理由がなかった。


それでも彼は人気俳優の一人として扱われ、主演ドラマが決まることも増えていった。

ルックスが武器である以上、内容は二の次だった。

彼自身も、「まあ、やれるだけやるか」くらいの気持ちで、仕事を続けていた。


そんな遼の人生が、大きく変わる瞬間が訪れる。


それは、高宮裕奈との共演だった。


最初は彼女のことも、他の女優と同じように「綺麗だけど、まあ普通に可愛い子」くらいにしか思っていなかった。


だが、撮影が進むにつれ、彼女の芝居に対する姿勢や、どんな瞬間でも”本気”でいる姿勢に、遼は強く引き込まれていった。


演技の世界に情熱を持ち、全力で役に向き合う彼女の姿を見て、初めて「俺が今までやってきたのは、ただのごっこ遊びだったのかもしれない」と思い知らされる。


それだけではなかった。


遼は、裕奈に初めて「本気で惹かれる」感情を覚えた。

これまで何人もの女性と遊んできたが、それはただの表面的なものだった。

だが、裕奈に対しては、初めて「この人を知りたい」「この人に近づきたい」と思うようになった。


それは、遼にとって未知の感情だった。


だが、遼はすぐに気づくことになる。


――彼女の心の中には、すでに別の男がいるということを。


そして、その男の存在が、彼女の”輝き”を支えていることを。

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