幼少期
その時、自分は恋に落ちました。彼女と話していると、こんな自分でも、きれいな存在に一時的にですが、なっている気がしていたのです。しかし、結果から言えば、この恋は彼女を、そして自分の人生を傷つける結果に終わりました。それは自分の抱いたリビドーが招いたものでした。全部、自分が悪いのです。
自分は、静岡の、割と栄えている場所で育ちました。幼少期、自分は不自由を感じていませんでした。その頃の記憶はゆらゆらして曖昧ではありますが、よく遊んだビニールプールのにおいと父と母についての思い出は鮮明に覚えています。父は自分と似て軟弱で、母は少しヒステリックなところがある、そういう夫婦でした。
一つ忘れられないことがありました。
夜(たしか、9時頃だったと思います。自分はたいてい、その時間には寝てしまっていましたが、その日はなぜかコーフンしていつまでも寝つけずにいました。)、酔った父が千鳥足で帰ってきました。フラフラ酔っぱらった父は物音に目を覚ました母の介錯も意に介さず、ほとんど酔いつぶれている感じでした。アルコールの狂乱によって、我を失った父は、しなびた白シャツのボタンを外す母の手首を掴んでそのまま、強引にキスしました。そのまま、二人は、なし崩し的に肌色になりました。自分は、父と母の、二人の裸の世界を寝室の毛布から、顔だけちょこんと出して、じっと見ていました。半狂乱の父はおろか、母も監視者の存在に気づいていないようでした。
途中、馬乗りになっている母と目が合っているような錯覚に襲われました。自分が初めて劣情を感じたのは、その時でした。
自分が二人の行為の意味を知ったのは、中学に上がってからでした。
中学生。自分の中学時代は陰鬱と屈辱に満ち満ちていました。
いじめ。自分はその標的になりました。