難波の浦に 虹かかりけり
ぼく達を作ってくれた楽団のみんなへ
雨雲を追いはらえなくて、ごめんね。
ちょっと、調子が悪かったんだ。
でも、みんなはぼく達をコンサートホールに並べて
くれたね。
はさみでおしおきされたらどうしようって、びくびくしていたよ。ほら、歌にもあるじゃない?
お船に乗っているみたいなホールだったね。
晴れていたら、もっと海がきれいだったんだろうなあ……。
でもね、みんなの演奏は夕焼け空を見せてくれたよ。
虹だって、ホールにかかっていた。
音楽は、そこにないもの、ほしかったものを生みだせるんだね。
みんなの力で、アンコールの後、お客さんがるんるんと帰っていったよ。
きらきらした音楽を、ありがとう。
みんなの浴衣姿、花火みたいだった。
いつか、ぼく達にも、着せてほしいな。千代紙を巻いてくれるだけでいいからね。
えへへ、おねだりしちゃった。
またね。
あとがき(めいたもの)
座って日没を眺められない状態は、多忙な証拠である。
恩師が谷崎潤一郎『文章読本』の紹介文にて、そのように書いていました。その理屈に当てはめるなら、僕は暇な毎日を送っていることになります。
先日、某コンサートに参りました。無料ですよ、中にはプロ奏者がいるのに、気軽に聞けたのですよ。
入場前に、海に浮かぶ廃墟を見物しました。そこは、海底エレベーターとトンネルが自慢だったのですが、惜しいものです。
次回こそ、晴れますように。