カサカサ③
カサカサ
「しっあの音だ」
桑原が全員の足を止めさせた
「もぅやだぁ」
井野がぐずりはじめた
「なんで俺達がこんなことに」
桑原は井野の頭をポンポンとなだめながら周りを見渡す
「目をつけられてたんだよ」
小文間がボソッと言う
何を突然言ってるんだと全員が小文間を見た
「カサカサはいつも見てたんだよ、家にいる時も、遊びに言ってるときも、仕事をしてる時も寝てる時だっていつもそばに居るんだ」
小文間は半笑いで続けた
「あるだろ、なんか気配を感じる時
なにも無いのにカサカサっと音がする時
常にカサカサは観てる」
「お前何が言いたい、何を知ってる?」
僕は穏やかな性格な方だが小文間の得意気な顔、半笑いな話し方に心底ムカついた
長い間ここに居るといろんな人が居て
色んな話を聞いてるうちに全員の生活が観られて居たことに気付いたらしい
「こんなに早くこの話をするとは思わなかった、もっとみんなの状況を聞いて色々分析したかったのに」
何が言いたいのか解らない
そう思った時
ドン!
小文間は井野を突き飛ばした
「え?」
白山が声を上げると
井野は倒れ桑原が慌てて井野の手を握る
カサカサ
黒い物に井野の体が喰われた
腕だけを残して井野が消えた
「井野ーっ!わぁぁ!」
桑原が腕だけを持って叫ぶ
カサカサ
音が桑原に近付く
「腕を離して!」
僕はそう叫んでライトを当てた
桑原が腕を離すと井野の腕が消えた
「あんた何してん…」
振り返ったとき小文間はもう居なかった
周りを照らし小文間を探したがその姿は見えない
「い、井野ーっ」
桑原は膝から落ちるように座りこんだ
「酷いよあの野郎!許せねぇっ」
口が悪くなった白山
怒りをあらわにライトを周りに照らし色々な暴言を叫んでいた。
大変な事になった
カサカサの話題なんて出さなきゃよかった
僕は心の底から同窓会での話題に後悔をした
話題?
同窓会での記憶が甦る
楽しく食べて、飲んで会話して
甦る記憶の会話、話をしているのは
桑原?
ボヤけた記憶、顔が認識出来ない
井野?白山?
僕は誰と話をしている?
いや、誰とも話していない
ただ立って話している人を見ているだけだ
カサカサの話?いつしてた?
「大丈夫?新町くん」
白山が僕の肩を持って呼んでいた
僕は我に返り、まじまじと白山の顔をみて
大丈夫と頷いた
「あの野郎ぜってぇ見つけてぶっ殺す」
涙を流しながら地面を殴る桑原に中学生の頃の桑原が甦る
ツキン
頭が痛い
桑原の昔を思い出すと頭が痛くなる
頭を抑える僕を白山が心配してくれてる
桑原は中学生の頃、高校生と喧嘩するくらいの悪だった。
喧嘩っぱやく、誰彼構わず傷つける
窃盗、恐喝等当たり前
そうだ
桑原は友達じゃない
いつも桑原の脇にいた女の子
確か
井野と白山
ズキズキと頭が締め付けられる
記憶がフラッシュバックしていく
殴る桑原の顔が映る
両サイドにタバコを咥えて笑う女子
殴られているのは
僕だ
路地裏で殴られて、殴られてボコボコにされた
薄れて行く意識の中で桑原は僕の財布を抜き取り
バイクにまたがった
直ぐに井野と白山も後に乗る
3人で乗ったバイクが走りだすと
ガンッ
と音と共に横から来たダンプにはねられた
ザマァみろ
そう言って僕の意識は消えた
「うおおお、カサカサもあいつも見つけ出してぶっ殺してやる!」
豹変した桑原を見て僕は我に返った
カサカサ
また音がした
桑原と白山がライトを照らす
僕はスマホのライトを切った
「何してんだよ」
桑原が僕に怒鳴ってきた
白山も「どうしたの?」とまた肩を持って問いかけてきている
「思い出したよ」
僕は笑顔でそう言って白山をカサカサと音のする方へ突き飛ばした
「おいっ」
桑原が白山を掴むがカサカサッと音がすると縦半分が消えた
その瞬間桑原は白山の手を離す
白山はまたカサカサと言う音と共に居なくなった
「新町てめぇ」
桑原が僕に襲ってきた
とりあえず腕力では敵わないので僕は逃げた
正直カサカサに出てきて欲しいとも願った
怒り狂って怒鳴りちらして走ってくる桑原
僕はまた人魂が出るお寺の前に来ていた
隠れたいのでお寺の中へと逃げ込みお墓の後に身を隠す
「何処行ったぁ」
桑原の声がお寺の前を通りすぎて行った
深い溜め息と共に落ち着きを取り戻そうと僕は僕の事を考え始めた
多分僕は死んでる
ではここは地獄?
なぜ大人になっている?
僕にはやりたい事もある、死んでるのにそんな事があるのか?
謎が深まる
あの小文間と言う青年なら何か知ってるだろうか?
憶測で動くには色々危険だが
このままでは何も解らないままだ
僕は少し休んだら小文間を探そうと決心した
カサカサと桑原から隠れながらだからリスクはデカイけどこのままだと正に成仏出来ないと思った
次で終わります
カサカサの正体とこの世界が何処か解って終わります。