第二章 世界を守る者達 第三話
最高神様は俺達と暫く教室で語り合うと、所用の為に「神界」という住処に帰って行った。
そして、黒川さんも「悪役の演技を学ばないといけないから」と言って転移魔法で帰って行った。
最後に残ったのは俺と坂田だけだった。あとは、その仲間達くらいだ。
「さて、意図せず大きなミッションを背負う事になった訳だけど…
緊張するか?」
「いいや、今の今まで驚きに満ち溢れた事しかなかったから
ある程度緊張は解けたかな?」
「そうだな…」
「でも、一つ懸念点があるとしたら…
今の俺達の状況を良く思わない奴が居るかもしれないという事だけかな?」
「俺を虐めてた奴等とかか?」
「いいや、岩本だ…アイツ、『リア充撲滅委員会』の委員長やってるらしいから…」
「なんだよ、その『リア充撲滅委員会』って!?
つか、何の為に作ったのかも、そんな無意味な活動してるのも
どっちも辞めちまえ!」
「いや、そんな事はどうでも良いな…」
「御主人様…いつまで僕達を無視するの?」
「そうだぞ、私は甘え足りない!」
そう言えば思い出した、俺は下部を二人連れて来ているんだった。
俺は少し怒っているスズとリンの頭を撫でてやった。
すると、二人共大変御満悦な顔で俺の膝に顔を擦り付ける。
「あの…さっき俺がやってた事って…」
「あぁ、坂田も俺の手に顔を擦り付けてたよな?
もしや、獣の本能で甘えたい気持ちとかもあるのか(煽)?」
「んなもんないわい!」
「篤武…僕もナデナデして?」
俺達三人もまぁまぁイチャイチャしているが、
坂田と鈴さんもまぁまぁリア充感半端ないな…
しかも、坂田の場合…イチャイチャ出来る奴が7人も居るんだから
岩本にこの事がバレれば「即☆殺害」されるだろうな。
「どうする?このまま家に帰るのも良いけど、
スマホを弄る事しかやれる事がないし…」
「そうだな…じゃあ、俺のパーティーメンバーに入って暫くこの町を攻略でもするか?」
「この町を攻略…?まさか、今、俺達が居る場所がゲームの世界とでも思っているのか?」
「いいや、『思っている』んじゃなくて『実際に起きている事を言ってる』だけだから」
「え……?」
この世界が黒川さんにハッキングされている事は知っているが、
その影響で世界の仕様がゲーム仕様にもうなっているとは考えにくい。
俺は冗談のつもりで「ワールド・ハッキング」のステータスを見る時に使うモーションを取った。
すると…
(坂本の目の前にモニターが表示される)
「おわわっ!?」
「ほらな?」
ゲームの中で出来るステータス確認作業が現実世界で出来てしまったのだ。
ほ…本当にゲームの世界で出来る事がこっちの世界でも出来てしまうとは…
「〈ランク12〉のレベル67か…仲間にするには充分過ぎる能力だな」
「〈ランク〉ってレベルと何か違うのか?」
「あぁ、簡潔に言うと〈ランク〉が一つ増えるだけでステータス値が10倍も跳ね上がるんだ」
「へぇー、そうなんだ」
しかし、俺はゲームの世界でモンスターとか倒した覚えはない。
スズとリンを拾ってそのままこっちに戻って来ただけだ。
だとしたら、何故ここまでレベルとランクが上がった状態になったのだろう?
「もしや、勇者の職業を選び、獣人を仲間にしたからか?」
「あぁ、俺は気分で勇者のジョブを選んで、獣人のスズとリンを仲間にしたけど…」
俺がそう答えると、坂田はなるほどと思う表情でこう言葉を続けた。
「俺も職業は勇者なんだ。そして、獣人の仲間も有している。
つまりは、状況は俺と同じ…と、言う事だ」
「と、言うと?」
「お前は俺達と同等の強さを持てる保証がある訳だ。
つーわけで、早速レベル上げに行こうか!」
「いきなり過ぎるだろ!
つーか、近くにバトルエリアなんてあるのか?」
「近くにはないけど、テレポートすれば何処にでも行けるから安心しろ!」
「『【悲報】旅行会社倒産の未来確定』!」
という訳で、坂田の案内で俺はレベル上げに赴く事になった。
ここは東京からかなり離れた小さな島。
坂田曰く、バトルエリアは本土(沖縄を含む)には存在しないんだとか。
こうした無人島と呼ばれる地域に集中してバトルエリアが存在しているらしい。
「よぉ~し、まずはこの島のモンスターを狩り尽くすぞぉ~!」
「おぉ~!…ってなるか、いきなり見知らぬ島に連行すんじゃねぇ!」
「でも、ここしか穴場はないし?
それに、今は現実世界に居るプレイヤーはほぼ居ない。
つまり、今が経験値の稼ぎ時なんだよ!」
「そうだな、それに俺等が強くなればアイツ等に虐められる事もない、そうだよな!」
「あぁ、別にアイツ等を恨んでる訳じゃないけどさ(笑)」
「坂田、後から相談したい事があるけど良いかな?」
「おう、今日のノルマを終えてからな?」
そんな訳で、俺は坂田の援護でひたすらにモンスターを倒しまくった。
その中で最も鍛えられた事がある。それは…
「炎、滝、風、岩、雷、氷、光、闇…一応全部上級魔法までは会得出来たな」
全属性の魔法を使える様になる事だ。
モンスターを倒して獲得した「奇跡の欠片」を消費して上級までの全属性の魔法を会得する事が出来たので、暫くは攻撃手段で悩む事はないだろう。
そして、その技を会得した俺は坂田から一つの技を教わる事になる。
「全属性の魔法を現在配布されている全種類会得した…
ここまでははっきり言ってチュートリアルだ。
ここからは、属性を極めた者が使う事が出来る…
〈属性剣〉をお前に伝授するぞ」
「ぞ…〈属性剣〉…?」
そう、この技を会得するのが本当に苦労した。
坂田が今日教えてくれたのは坂田が得意とする属性の〈氷の剣〉だ。
技の種類は全部で7つ。確認の為にここに書き記そう。
○一の技・〈アイス・キラー〉
○二の技・〈アイス・ピッカー〉
○三の技・〈アイス・スピア〉
○四の技・〈アイス・ナックル〉
○五の技・〈アイス・ブリザード〉
○六の技・〈アイス・エターナルフォースブリザード〉
七つ目の技は教わらなかったので分からない。
ていうか、技名が厨二心を擽るものだな…
坂田曰く、この技名を言うのが恥ずかしくて堪らないらしく、
心の中で念じるくらいだと言う。
そして、氷の剣を伝授した俺は坂田からこう言われる。
「お前は才能が高い。俺を超える日もいずれ訪れるだろう。
そして、最後の七つ目の技だが…最後の技はお前が作るんだ。
他の属性剣士もそうやってきたんだ」
「そうなんだ…自分で作る…オリジナルの技という事か…」
「あぁ、そうだ。
それと、他の属性剣は明日以降に順番で教えるから、体力は付けておけよ?」
「え!?坂田、他の属性剣も使えるのか!?
お前は〈八帝・氷帝〉だろ、氷以外の属性は扱い難いんじゃないのか?」
俺は素直に思った疑問を坂田にぶつける。
すると、坂田は当たり前の様にこう答える。
「いいや、俺が苦手とする属性はないぞ?
俺は全属性魔法と全属性剣を扱える、〈八帝・最強〉だぞ?
それに、俺が得意とする属性は…『氷』ではないからな?」
「そ…そうか…」
自分の事を〈八帝・最強〉と語る訳だから、相当な実力を有しているのだろう。
あれ?このままだと、この作品の主人公が俺じゃなくて坂田になりそうなんですけど!?
この物語の主人公は俺だからね!
坂田は準レギュラーだからね!
「でもさ、今日だけで300匹のゴブリンを倒しちゃったけど…
環境的にはマズくないのか?」
「あぁ、ゴブリンやオークとかの雑魚モブは3日経てば元の生息数に戻るぞ?
これも、最高神様の力の賜物さ♪」
「都合良過ぎるだろ…まぁ、異世界系のゲームが好きな奴等にとってはこの仕組みはさぞ楽しいものになってくるだろうな?」
「そうだな、まぁ、時々セーフティーゾーンにここから泳いで来たゴブリンが攻め込んで来る可能性は否とは言い切れないけどな?」
「うん、充分に想定出来る未来だな!
その時はどうするのさ?」
「恐らくだが、異世界系のアニメで見るだろ?
『自警団』的な組織が作られて町の治安を守る戦士が生まれて
暫くは平和は守られる。それに、俺達と違って皆はこの世界を作った本当の理由を知らない。
だから、最高神様の気持ちの為にも…俺等はこの秘密と世界の平和を守らなきゃいけないんだ。例え、この身が絶えたとしても!」
「そうだな、俺は後から関係してるから詳しい事情は分からんが、お前と最高神様の思いは伝わってる。
だから、俺も精一杯頑張るからさ、これからも力を貸してくれるかな?」
「勿の論だ!お前は俺の大事な親友だからさ?」
そうだ、俺の生きる理由は見つかった。
俺は母さんが遺してくれた俺の人生を楽しく平和なものにする為に…
松崎や岩本達クラスメイトの日常と笑顔を守る為に…
そして、悪の手で世界が壊れる未来を防ぐ為に…
戦うんだ、前を向いて、後ろを振り返らずに、俺等の正義の為に…
この世の悪を根こそぎ断ち切る!
俺は弱くもなければ強くもない。でも、心に宿る思いは〈八帝〉の皆とは変わらない。
俺は弱きを助け、強きも守る。
これが、俺が見つけた人生の答えだよ、母さん。
「さて、一旦家に帰るか?」
「いいや、今の俺は家がない。今日から野宿だよ」
「そうか…だったら、俺の家に来ないか?
空き部屋なら腐る程あるし」
「え……良いのか?」
「だって、親友が困ってんなら親友である俺が助けないといけないだろ?
気にすんな、俺が何とか交渉してやるからさ?」
「坂田…」
すると、坂田はスマホで誰かと連絡を取る。
そして、数分すると連絡を取り終わり、俺の方を見てこう言った。
「『養子として坂本君を引き取るけど、坂本君と話がしたいからすぐに家に来い』…だってさ?」
「そ、そうか…」
そんな訳で、俺は坂田の案内で坂田の家へ向かう事にした。
ブックマーク、評価、いいね、コメントお待ちしてます!