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第二章 世界を守る者達 第一話

「君にも…アイツ等の…

 本物の『世界掌握』を阻止する任務を任せたい。

 良いかな?」


その話を聞いた俺は困惑する他なかった。


「ほ…『本物の世界掌握』?

 な…何を言っているんですか、貴方達が今、世界を掌握しているんですよね?

 それなのに、更に悪役が出て来るみたいな…そんな嘘みたいな話…簡単に信用出来る訳ないですよ!」


俺がそう質問すると、黒川さんは一切動揺する事なくこう言葉を返す。


「まぁ、今すぐに信用しろとは言わない。

でも、いずれこの事実を受け入れなきゃいけない瞬間が訪れる。

 その時が来た時の為に、ここで話そう…

 何故私達が、この様な行動に及んだのか…」


そして、彼の口から全てが話された。


 時は今から8年前。

後の世界ハッキングの首謀者となる男、いいや男の子、黒川広大は何気なく

今日もスマホをイジイジしていた。


「今日もトラブルはなし…平和が一番だな…」


その頃の彼は中学生。普段なら学校に居るはずだが、今日は…

いや、今日も学校をサボっていた。


「学校に行くのは良いけど、どうせ虐められるだけだから

 行ってもメリットが皆無なんだよ…」


そう、彼は学校で酷い虐めに遭っていた。

金品を壊されるのは当たり前、殴る蹴るも当たり前。

そんな環境下に居れば必然的に学校に行く気も失せるだろう。


「それに、先生に相談しても『我慢しなさい』の一点張りだし…

 大人って何様なんだろうね?」


彼の両親をはじめとする大人達も彼の味方になってくれなかった。

そう、必然的に彼は天涯孤独だったのだ。

誰もが彼の味方をしてくれなかった、彼は必然的に部屋に籠もる様になった。


「私は生涯孤独だ…」


彼の心は日が経つにすれ擦り減って行き、遂に自分の部屋から出て来る事もなくなった。


「広大…ごはん、ここに置いておくからね?」

「……馬鹿がうつるから喋んじゃねぇよ」


リアルの方では彼の友達や信頼出来る者は確実にゼロに近かった。

しかし、彼はインターネットにハマった事もあって、ネッ友は多かった。

いつもの様にネッ友とボイスチャットでベラベラと話し合っていた。


『それでさ、クロッキーがアスレチックの隙間に綺麗に落ちて行く姿は

 とんでもなく面白かったよな?』

「その話は止めろって言ったよな(笑)…?」

『まぁまぁ、怒るなよクロッキー?』

「別に怒ってないよ、恥ずかしいだけだよ(笑)」

『『あははは…』』


そんな感じで、彼は今日もいつも通りゲームに一日を消費させていた。

しかし、そんな状況を良く思わない輩も少なからず存在していた。

(広大の父親、広大の部屋の扉を蹴破る)


「この馬鹿息子がぁー!!」

「私の事を守ろうともしなかった貴方が、よく父親面出来ますね?」

「お前は俺等の思い通りに生きていれば良いんだよ、早く学校に行け!」

「それは断らせてもらうよ、学校に行っても虐められるだけだし」

「嘘を吐くな、お前は誰からも虐められてないじゃないか!」

「デタラメを言わないでもらいたいな」

「デタラメじゃない、先生もそう言っているんだ!」

「チッ…ったく、アンタ等偽善者気取りの大人は頭が固すぎるね…」

「何だと!?」

「何度でも言うよ、そのカチコチの頭、早く治した方が良いんじゃないの?」


おいおい、今まで散々虐められたからって実の父親にそこまで言うか、普通?

案の定、広大の父親は怒髪天を貫いていた。


「何だと…コラ…?」

「私が貴方の子供だからって、何でもして良い訳じゃないからな?」

「その舐め腐った性根…叩き直してやるわぁ!!」


そう言い放つと、父親は広大に思い切り殴り掛かって来た!

しかし、広大はその攻撃を片手で受け止めた。


「んなっ…!?俺の渾身の一撃が…!?」

「アンタの拳は飽きる程受けて来た。

 いつまでも、アンタの方が力で上だと思うなよ?」


そして、広大は流れる様に父親の腹部を思い切り殴った!


「子供に暴力振るったから、やり返されても文句は言えないよなぁ!!」

「ぐはぁぁっ!?」

「きぃやぁぁぁー!?」


そう、彼の家庭は完全に崩壊していた。

毎日父親と広大は喧嘩している。

そして、母親は父親の味方な為、広大に優しい言葉を掛ける事もなかった。

彼は常に孤独と憤慨の心で過ごしていた。


「クソッ…いつか…倍にして…返して…やるからな…!」

「へ~い、そうなると良いね~」

「広大!お父さんに謝りなさい!」

「何で貴方達に謝罪を要求されないといけないんですか?

 この状況を見れば明らかだよね、明らかに悪いのは私に一切手を差し伸べてくれなかった貴方達両親の方だよね?

 私が謝る理由なんか、欠片もないんですけど?」

「アンタは何も分かっていない!私達はアンタに普通の大人になって欲しくて…!」

「その普通を奪ったのは誰だよ、私が虐めを受けていても、一切手を差し伸べてくれなかったよね?

 学校で虐めに遭って、先生も頼れなくて、そんな俺に…アンタ等は何をした?

 何もしてないよな、寧ろ、学校に行って

 『迷惑をおかけして申し訳ありません』って言わせようとしたよな?

 アンタ等の事を一度も親として見ていない、早く死んで遺産をくれよ?

 それだけが、アンタ等の存在意義だ」

「…アンタは…うちの子じゃない…出て行け!」


広大の母親はそう吐き捨てた。

いや、性根が腐っているのは広大ではなく両親の方だと思うんだけど?


「あぁ、いつでも家を出れる様に準備はしてたから

 すぐにでも出て行くよ?」

「え……!?冗談よね?」

「冗談じゃないよ、本気だよ?

 あと、学校も勝手に転校したから、バイバーイ」


そう言うと、その日の夕方には広大は荷物を纏めて家を出て行ったのだった。


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