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第一章 悲劇と異世界体験とハッキング 第三話

ここは…現実世界…戻って来たのか…

さて、夜食を作らねば…俺は冷蔵庫を漁る為に起き上がろうとしたが、ここである異変に気付く。


「アレ…この二人は…?」


俺の体の上でスヤスヤと眠っている二人の猫耳少女の顔に俺は見覚えがあった。


「ひょっとして…スズとリン…なのか?」


という事は、ここは現実世界ではない…?

いいや、この質素な部屋。ここは一時的に住む事になった俺の部屋だ。

だとしたら、何故ゲームの世界にしか存在していないこの二人が俺の部屋に居るのだろうか?

そんな事を考えていると、二人が目を覚ました。


「んにゃ…んんーっ!」

「アレ…ここは…何処ですか…御主人様…?」


一瞬偽者かと思ったが、この喋り方は確実に本人だ。

という事は、ゲームの世界から二人を連れて来る事が出来たという事なのか?

いいや、そんな都合が良過ぎるイベントが発生する訳がない。

つまり、これは夢だ。

俺が二人を可愛く思い過ぎて、現実世界に想像で写し込んで居るだけだ。

俺は頬を抓ったが、リアルに痛かった。

二人が実際にこの世界に存在している……

いや、ちょっと待て。この二人のデータがそっくりそのまま現実世界に移動したという事は…!?

俺は急いで鏡で自分の姿を見る!


「アァー……!?」


俺の最悪の予想は的中していた。

俺の姿はゲームでの姿のまま…関係ないけど背も縮んでる…

暫く学校には行かなくて良いから、当分の間は大丈夫だけど…

そこから先はどうしよう!?

この姿で学校に行ったらあの虐めっ子共に虐められる未来しか見えないよ!?

……ま、まぁ…今回は普通に過ごそう。

スズとリンの事は後からでも何とかなるだろう。

俺は恥ずかしいが、この恰好のまま

足りない食材を買いにスーパーまで向かった。


 ヤバい…視線がヤバ過ぎる…!

俺一人だけなら全然大丈夫だけど、駄々を捏ねてスズとリンも付いて来るとは…

お陰でピンクな視線がビンビンに感じ取れるんですけど!?

ま、まぁ…俺は男装してるから、男から変な目で見られないから良いけど。

しかし、あっちの世界で俺が見繕った服装のまま現実世界を散策する事になろうとは…

はぁ…松崎と岩本になんて言おう…「肉体改造して可愛くなりました~」なんて言えないし…

まぁ、今はさっさと買い物を済ませよう。

俺は足早にスーパーに入る。


「おぉ…これが異世界の『スーパー』…」

「なんだか冷たい空気が流れてるぞ…」

「そういえば二人はこっちの世界で外に出るのが初めてだったよな?

 とりあえず俺に付いて来てくれ」


そう言い終えると俺は足早に買い物を済ませたかったが、

そうは問屋が下ろさなかった。


「お?可愛い三姉妹だねぇ?」

「写真撮って良いかな?」


今の俺達はこの世界でいう所の「コスプレ」状態だ。

そんな恰好で出歩いて居れば当然人だかりが出来る。

しかし、こうも簡単に人が集まるとは…

日本は巨大なアニメ王国だからアニメの数に比例してファンやヲタクも多くなるのは仕方のない事だが、街中のスーパーで撮影会が始まるのは少し気が引ける。

どうしたものか…


「御主人様、どうするの?」

「私は写真を撮られるのは少し怖いかな?」

「そうだよな、皆には悪いけどここは逃げるとしよう」


俺達は足早にスーパーから出て行った。


 その後、俺達三人は無事に仮住まいの部屋へと帰る事が出来た。

しかし、スーパーでの撮影会モードはどうでも良いとして…

ゲームの世界にしか存在していないはずのスズとリンが俺の世界に存在している事、

そして、俺の容姿の変化…

正直知りたい事や聞きたい事は山ほどある。

しかし、この事を聞ける人物は居ない。

とりあえず、明日大家さんに諸事情を伝えるしかないだろう。

俺は夕食を作り終えた後に色々と考えていた。

俺の身に起きている様々な異変、これから先の生活…そして事件の後始末…

考えればキリがないくらいだ。


「御主人様ぁ~…早く食べようよぉ~?」

「私も待ちくたびれたよぉ~…」


おぉっと、そういえば夕食を食べ終えてなかったな。

俺は二人の元へ向かい、三人で夜を過ごした。


 午後十二時。俺達三人は小さいベッドの上で睡眠を取っていた。

スズとリンはスヤスヤと眠っているが、俺はイマイチ眠れなかった。

寝床が狭くて物理的に寝れない所もあるが、これから先の事を考えると余計に眠れなかったのだ。

しかも、俺が今日プレイした「ワールド・ハッキング」というゲーム自体も

不思議で仕方なくなっていた。

俺はこのゲームをプレイしただけ、現実世界の姿形を変えた覚えはないし、

スズとリンをこっちに連れて来れる様に設定を弄った覚えもない。

それなのに、彼女達は姿形そのままにこっちの世界にやって来る事に成功しているし

俺の容姿もあのゲームのままに変更されている。

まぁ、声までは変わっていないけど…

しかし、コンピューターの成長も著しいものだ。

こんなにハイクオリティな業を成し遂げるとは…

いいや、ちょっと待て。

俺の体にこの様な異変が起きているという事は、

この国に…いいや、このゲームをプレイしている全世界のプレイヤーにも

大きな異変が起きているという事ではないか!?

………って、今更そんな事考えても後の祭りだ。

今日は大人しく寝るとしよう。

そう思い終えると、俺は睡魔に意識を闇へと落とされた。


 翌日、俺は外からのけたたましい音で目を覚ます。


「んんっ…にゃんだ…?

 アラーム…ではない…?」


スマホのアラームでも、目覚まし時計の音でもない…

だとしたら、この音は何処から鳴り響いているんだ?

まさか、「ワールド・ハッキング」の期間限定イベントの告知か何かか?

俺は後から確認するつもりで身支度を済ませ、学校に向かおうとした。

すると、俺の袖を引っ張るカワイ子ちゃんが二人。


「御主人様…置いて行かないで…」

「私達を守るんじゃなかったの?」

「いや、連れて行きたい気持ちは凄くあるんだけど、

 俺が不審者扱いされるからな…猫耳付けた薄着の少女二人を連れて学校に行こうものなら、確実に警察に御用になるから…」

「大丈夫、僕達は御主人様にしか見えない設定が組み込まれているから」

「そんな都合の良過ぎるスキルがあるとは…」

「そうさ、私達は莉音様の部下だよ?

 このくらい出来ないと恥と言うものだよ?」

「そ…そうか…なら連れて行っても良いけど」


そう言われれば連れて行く方が得策だろう。

俺は久し振りの学校へとスズとリンを連れて向かった。


 さてさて、無事に学校に着いたは良いけど…


「もう、始業の時間はとっくに過ぎていると言うのに…皆来ないな」

「この教室で…御主人様は『ベンキョウ』をしているの?」

「でも、誰も来ないね…病気にでもなったのかな?」


俺のクラスメイトが誰一人として姿を現さないのだ。

松崎も、岩本も…誰も姿を見せないのだ。

そう思っている時だった──


「お、誰かは分からんが生き残りが居たんだ?」


俺の教室に聞き覚えのある声の持ち主が入って来たのだ。


「そ…その声は…?」

「おや?その声は坂本か?」


その声の主は、俺の数少なき親友である坂田篤武だったのだ。

しかし、その姿は…


「「お前誰だよ!?」」

「坂田だ!」

「坂本だ!」

「「分からないよ!」」


坂田の姿は顔立ちは女の子の様になり、背丈は少し大きくなっていた。

そして、髪色は水色、可愛い狐の耳とモフモフしている5本の尻尾が生えている。

そして、彼の後ろに7人の女性が見えた。


「お互いに…聞かなきゃいけない事あるみたいだな…」

「そうだな、俺から話すよ」


そう言うと、まずは坂田が口を開いた。


「俺の身の上話をする前に、まずは衝撃的な事実を告げる必要がある」

「衝撃的な事実…?」

「あぁ、この町…いいや、この国…いいや、この世界は

 『ゲーム』にハッキングされるらしい…」


は?この世界がゲームにハッキングされる?

なぁーにを言ってるのか皆目見当も付きませんな。


「まぁ、信じるか信じないかはお前次第だ。

 ただ、俺はお前にこんなふざけた事件に巻き込まれて

 死ぬよりも辛い地獄を味わって欲しくない…それだけだ」

「…?」


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