第八章 天国を打ち砕く女 第一話 幸せの崩壊・前編
松本にはかけがえのない存在が2人居た。
その者達は女手一つで松本を育ててくれた松本の母。
そして、まだ幼い松本の遊び相手になってくれた本当の姉だった。
「かあさぁーん?
菊斗がまたバカ親父のAV見て抜いてるよぉ〜?」
「いっ…いちいち言わなくても良いじゃんかぁ?」
「まだ中坊のアンタには早過ぎる体験なんだっつーの!」
「じゃあ、姉さんがマッチングアプリで二股してる事も母さんにチクろうかな?」
「おっ!?お前、どこで見たんだそれは!?」
「あっれれれ〜?
カマをかけただけだけどぉ〜、図星だったのかなぁ〜?」
「こんの糞餓鬼!」
「二人共落ち着きなさい、あんまり激情してると寿命縮むよ?」
「「はーい…」」
この時、松本はまだ15才。
受験を控える前途豊富な学生だった。
彼の家庭はお世辞にも裕福とは言えなかったが、人並み以上の幸せに包まれていた。
「母さん、テストで一番取ったよ!」
「まぁ、凄いわね!
貴方は私の自慢の息子よ!」
テストで良い点を取った事や、
運動会で一等賞を取った事、
絵画のコンクールに入賞した事、
松本が快挙を重ねて行く事に松本の母は本人よりも喜んだ。
そして、弟が優秀な事に姉も歓喜していた。
「菊斗、アンタの姉になれてアタシは幸せだよ!
生まれてきてくれてありがとうだよ!」
「姉さん…」
松本はこの幸せがずっと続く事を願い信じていた。
しかし、その幸せはある女により完膚なきまでに叩き壊される事になる。
それは、休日の昼間時だった。
松本の家にある女性が訪れる。
「やぁ、君らみたいな可哀想な弱き者を
僕が救いに来たにゃ!」
「に…にゃ?」
「頭がおかしい大人は帰れ!」
「誰が『頭がおかしい大人』だにゃ(怒)?」
「はいはい、母さんが話付けてあげるから」
そう、その女性が後に松本の偽りの姉となる諸悪の根源。
〈異世界の神の下部〉のルールだった。
話が自由気ままに進んで行き、ルールが松本家に入り浸る事になった。
まぁ、松本から見ればルールは赤の他人。
気さくに話しかける事など出来るはずもなく…
「菊斗くぅーん?
お姉さんと遊ぶにゃ〜!」
「語尾にゃん変態とは遊ぶ筋合いはない!
つか、家にいるなら働け、穀潰しが!」
「酷いにゃー、こんな美人で美形なお姉さんと遊べる貴重な体験なのににゃ?」
「当たり前だ、難癖付けて赤の他人の家に居候しやがって!
俺はお前を家族とは認めないからな!」
「黙れよ、出来損ないの分際の木偶の坊が…」
「えっ…!?」
「あぁ、冗談だよ!
気にしなくて良いからね?」
「…」
仲は良くなかったものの、当たり前の日常にルールが加わった。
しかし、彼女が家に居候してから数日後に異変が起こる。
彼の家の周りに不審な死に方をした動物が転がり始めたのだ
「不気味だね…
何か嫌な予感がするんだけど?」
「母さん、怖い事言わないでよ」
「不気味だにゃ〜怖いにゃ〜」
「…」
松本もこの時は何かの偶然かと思い、気にも止めなかった。
しかし、事態は思いもよらずに最悪の展開になる。
動物の不審死事件から数日が過ぎたある日。
松本は最悪の光景を見る事になる。
「え…!?
ま、まさか…姉さん…?
う…嘘だよね…!?」
そう、彼が近くの森で見たものは…
(松本の姉、体をバラバラにされて死んでいる)
「姉さぁぁぁぁぁん!?
嘘だ…嘘だ嘘だ…何だこれはぁぁぁぁ!?」
森の中に無惨に殺され、全身をバラバラにされ無作法に捨てられた姉の亡き骸だったのだ。
「なんで…なんでなんで…何でなんだよぉぉぉ!!」
この時松本菊斗14才。
最愛の姉と一生の別れを告げられるにはあまりに早すぎた歳だった。
更に、松本は衝撃的な事実を知ることになる。
「え…こ、この桃色の髪の毛は…!?」
そう、姉の遺体に一本だけ付着していた桃色の髪の毛。
その髪の毛の持ち主に彼は覚えがあった。
そう、家に居候しているあの女だ。
彼は大急ぎで家へと帰った!




