第五章 来たる「災厄」・〈異世界の神の下部〉 第三話
─ 坂本莉音の過去回想 ─
俺の幼少期はあまり友達が増えなかった。
理由は病弱なお父さんの看病に勤しんでいたからだ。
病院の先生からは長くて5年と言われ、今は3年目の夏を迎えている。
「莉音…ごめんな、
父さんがこんなんだと、自慢出来ないだろ?」
「そんな事はないよ、父さんは代わりが居ない父さんなんだからさ」
「莉音…その言葉が聞けて嬉しいよ」
父さんとは毎日こんな会話をしていた。
しかし、時の定めとは酷いものだった。
「と…父さん…?」
医者からは5年は生きる事が出来る。そう言われていたのに、
父さんは3年目の秋に命を落としたのだ。死因は老衰らしい。
「何でだよ…父さん…早いよ…早過ぎるよ…!」
その時の俺は泣き続ける事しか出来なかった。
しかも、死因が「病死」じゃなくて「老衰」という事も信じられなかった。
俺は小学校に入学する前に父親を失った。
そして、俺の頭の中に父さんとの最期に交わした言葉が蘇って来る。
確かその日は、夜になっても暑さが抜けなかった日だった気がする。
そんな過酷な暑さの中で父さんは数人の大人達に混ざって踊りを舞っていた。
そう、その日は俺が住む町で夏祭りがあったのだ。
しかし、子供の俺でも暑過ぎてバテそうなのに、
病弱な父さんが長時間踊りを続けている事に不安と疑問視か湧かなかった。
その表情で見つめる俺に、母さんがこう言葉を掛ける。
「莉音、何でお父さんがあんなに元気そうに見えるか分かる?」
「…分からない…父さんが心配だよ…」
「確かに、いつもお父さんは家で寝たきりの生活を送っているわ。
でも、この日だけは絶対に起きて動いているの」
「そうなんだ…明日筋肉痛で倒れなければ良いけど…」
「安心しなさい、お父さんは心の中でこう願っているの…
『自身の人生の敵は自分自身、自分に負けなければきっと良い事が訪れる』
と、ね?」
「…?」
そして、祭りが終わった夜に
父さんは俺にこう言葉を送ってくれた。
「莉音、父さんは病弱だ。それでも、そんな過酷な運命に立たされて居ても、
絶対に忘れちゃいけない事がある…」
「なぁに?忘れちゃいけない事って?」
「俺も莉音も、人間として生まれたんだ。
だからこう思うんだ、『人間に限界なんて存在しない、限界を決めるのは人生に満足してからだ』と、な?」
そして、俺の意識は現在に戻る。分かったよ、父さん、母さん…
二人に散々生かせて貰ったんだ、ここで人生終了させる訳にはいかない!
俺は剣を握る両手に力を籠める!
「『白の剣・一の醒〈千貫万物〉』!」
俺が放ったソノワザハハテナの巨体の右腕を斬り飛ばす!
「ぐはぁぁっ!?」
俺はもう、自分の可能性を、人生を、そして限界も…
人生が終わるまで、決めつけない!
「これが、人間として生まれた者の覚悟と決意だ!」
この一撃でこの戦いを終わらせる!
俺はそのつもりで全身に力を籠める!
『何だ…コイツ…!?
というか、さっきまでと全然オーラが違う…!?
しかも、さっき僕が喰らった技は…まさか!?』
「やっ…止めろぉぉぉぉぉ!!」
「お前は奪ってはいけないものを奪い過ぎた、それが、お前が死ぬ理由だぁぁ!!」
ホワイティング、剣が壊れるかもしれないけど許してね!
「『白の剣・三の醒〈白夜閃光〉』!
お前は死ぬべき巨悪だ、地獄行きぃー!!」
「ぐわぁぁぁぁ!!??」
俺が放った技で巨体になったハテナの体は爆散し、
俺の目の前に四肢がもげたハテナが落ちて来た。
「ガハッ…!?」
「何だ、今の一撃で確実に仕留めたと思ったのに…
本当に痛みに耐性があるんだな、お前は」
「…ゴフッ…そうだね…僕は…痛みに耐性があるんだ…」
そう話す奴の命の炎は、風前の灯火と言っても過言ではなかった。
そして、ハテナは自分がここで死ぬ事を悟り、俺にこう言葉を掛ける。




