第五章 来たる「災厄」・〈異世界の神の下部〉 第一話
俺は最悪のタイミングで最悪の敵と遭遇してしまった。
「まぁまぁ、そう躍起になるなよ?
どうせお前は、僕に嬲り殺しにされる運命なんだからさ?」
「お前が…ハテナか…?」
俺は頭をフル回転させてこの状況をどう打破するか必死で考えた。
しかし、どう考えを巡らせてもロクな未来にしかならない。
どうする…アッチは俺の事も知っているし、
ここにスズとリンを呼び出す訳にもいかないし、
そもそも、ここが何処なのか分からない以上、下手に暴れる訳にもいかない…
クソッ…万事休すか!
「あぁ、ここは僕の家だ。
周りは森だから大きな音を出しても何ら影響はない。
好きに暴れても良いけど、君が僕に勝つ未来は見えないから、
暴れる前に死んじゃうかもしれないね?」
なるほど…ここで大暴れしても誰かに迷惑が掛かる可能性はない、という訳か。
だったら…
「その言葉…俺も返させてもらうぞ…?」
「ん~?
何々ぃ~、もしかして僕を倒す気で居るのかにゃ~?」
「『倒す気で居る』んじゃない、『倒す』んだ!
もうこれ以上、お前等の好き勝手で関係のない人達が死ぬのは耐えられないんだ!」
「『倒す』……ねぇ…
いやぁ~…あまりにも可哀想だよ、君?
実力の差は歴然としているのに…!?」
俺は会話に夢中になっているハテナの顔面目掛けて拳を叩き込む!
「悪いがお喋りに付き合っている時間はないんだ、早くくたばってくれ!」
「ぐふぉぉっ!?」
完全に油断した瞬間を狙われたとはいえ、俺が放った攻撃は奴に相当大きなダメージを与える事に成功した!
そして、奴は廊下の壁に勢い良く突っ込み壁を貫通し、家の外へ弾き飛ばされた。
「ぐふぅぅっ!?」
奴は内臓にダメージが出たのか、多量の血を吐く。
「フッ…フフフッ…」
俺も外に出て飛んで行った奴の元へ駆けつけた。
「アーッハッハッハッハッハ!!
油断した所を狙ったとはいえ、良いパンチだったよ!
内臓が破裂しちゃったよ…で・も・ね・?」
奴がそう言い終えると、奴の体が激しく光り出した。
そして、全身に溜まっていた傷が癒えたのか、俺に勢いよく突っ込んで来た!
「僕達『神』の力を持つ者は、傷を勝手に治す事が出来る!
だ・か・ら・?内臓破裂なんか軽い怪我に過ぎない!
君が僕を攻撃しても、その傷はすぐに癒える!
だ・か・ら・?君が僕に勝つ未来もなぁ~い!」
次の瞬間、奴が俺の腹部に激しい蹴りを入れた!
「さっきのお返し、受け取ってくれぇっ!!」
「ぐふぅぅっ!?」
俺はその蹴りを思い切り喰らい、勢いそのまま岩の壁に勢いよくぶつけられる!
「かはぁっ…!?」
『マズい…全身の骨が折れた…!』
俺の体から完全に力が抜け落ち、俺は約20mの高さから力を失ったまま落ちた。
「かふっ…!?」
俺が力を失くして倒れている所にハテナが現れ、俺の頭を踏みつけながら話し始めた。
「そうだ…いつもそうだ…
人間は…力がない癖に生意気だ…
僕の大事な人を殺したアイツ等も、僕の仲間を殺した上に僕を倒すと宣言した君も、
結局は人間だからすぐに力を失って僕に殺される…」
「な…何を言って…いるんだ…!」
俺がそう答えると、奴は俺の首を勢いよく踏みつける!
「がぁぁっ!?」
「黙り給え、僕の独り言の邪魔をするな…
はぁ…でも、君も僕と同じだ…」
「かふっ…かふっ…!?」
『「君も僕と同じ」…?
急に何を言ってるんだコイツは…!?』
俺が心の中でそう考えていると、ハテナは俺にこう勧誘して来た。
「なぁ?君も僕の力を得て、『神様』にならないかい?
君も大事なものを人間に奪われたんだろう?」
「な…何で…その事を…!?」
「君の目を見れば一目瞭然…
いいや、僕の『万里眼』で君の記憶を読み取り、頭の中にインプットしただけさ?」
「お前は…何で…神様に…なったんだ…?」
「あぁ、それは至って簡単な理由さ?
僕は人間に復讐したくて、神様になったんだ。
神様になって、この世界の覇権を最高神様から奪えば…」
すると、奴は更に狂気的な笑い声を出してこう叫ぶ!
「僕達が夢見て描いた新世界を創設する事が出来るんだ!
アーッハッハッハッハ!!僕から大事なものを奪ったアイツ等も、
僕を人間扱いして来なかった人間と僕を助けてくれなかった『神』の名を騙る神共も、
全員殺せるんだ…フフフフフ…アーッハッハッハッハ!!
全員殺して、全部一からリセットする!
そして、生まれ変わった新世界で僕は新たな神様として君臨し、
低劣な愚民の人間達を支配する、それが…僕が神様になった理由さ?」
「そんな…身勝手な…理由で…」
「ん~?なにぃ~、全然聞こえないよぉ~?」
その言葉を聞いた俺は、奴の身勝手な理由に憤ったのと、少し憐れみを感じた。
そして、全身粉々になるまで砕かれた体に鞭を打って立ち上がる。
「お前は…俺と同じな訳ないだろ…
この糞野郎!」
「何だと…?」
「お前は俺と違って…過去の苦しみを乗り越えていない!
お前は自分の過去に甘えて人殺しをしようとしているだけだ!
それに、皆それぞれ辛い過去や思いを持っている、
それを乗り越えて今を生きているんだ!
自身の過去も乗り越えられなくて、その上他人を不幸に陥れようとするお前に…
『苦しみ』を語る資格はない!」
俺は全身ボロボロの体に鞭を打って剣を構える!
そして、こう言葉を続ける!
「掛かって来い、卑怯者!
お前は俺が…ここで終わらせてやる!」
「上等だよ…人間…!
僕を本気で怒らせた罪を…命を以って償ってもらうぞ!」




