第三章 〈八帝・最強〉の過去 第二話
その後、先生と解散して俺達は帰路へと付いていた。
しかし、ゲームの世界に誘われた人達の数は相当多く、夕方なのに人が全然居ない。
恐らくだが、全世界の4割の人達が意識不明の重体になっているだろう。
「しかし、これからどうするよ?
俺等のクラスメイトもいつ目を覚ますか分からないし、
お前等が隠してる事が全てバレれば、俺等は晴れて犯罪者。
生き難い世の中になるな、こりゃ…」
「それを守る為に俺達は嘘を吐く。それしか生き残る道はない」
でも、まぁ、選別に選ばれた全員がまだ昏睡状態という事は…
暴動が起こる可能性もほぼ無いから、暫くは安全に暮らす事が出来るだろう。
すると、商店街の真ん中で悲鳴が木霊した!
「悲鳴!?」
「行くぞ、坂本!もしかしたら、暴動者が出た可能性がある!」
俺と坂田は悲鳴が聞こえた方へと走る!
駆け付けてみると、既に遅かった。
「フフフ…ハーッハッハッハ!
俺は黒川様のお陰で強大な力を手に入れた!
金がなければ奪えるし、嫌いな奴は簡単に殺せる!
この力は、俺の求めていた最高品質の賜物だぜ!」
現場の中央に立って居る男がやったのだろう。
周りには血を流して倒れている老人達が転がっていた。
俺はスキル「生死判断」を使い、老人達の命に別条がないか確認した。
しかし、全員に生命反応はなかった。
つまり、あの男に全員殺されたという事だ。
「坂本、お前は下がってろ…アイツは俺がやる…!」
「坂田…?」
坂田が殺人鬼の男に歩み寄る。
「おい、下種野郎?」
「何だ、クソガキ?俺に盾突くなら殺すぞ、おぉん?」
殺人鬼の男がそう吐き捨てたと同時に──
(坂田、殺人鬼の男の四肢を斬り飛ばす)
「何の罪もない他人から大切なものを奪う奴の両手足なんか必要ないな!
とりま、もう使えない様にボロボロにしてやるからな?」
「ぐばぁぁぁ!?」
坂田は奴の四肢を剣で勢い良く斬り飛ばしたのだ!
俺はその光景をただ眺める事しか出来なかった。
だって、ゲームの力を頼っているとはいえ、アイツがやっているのは人殺しだ。
今の俺には、その決断に踏み出せる覚悟がなかったのだから。
「坂田…?」
俺はただ坂田の名前をボソボソと呟く事しか出来なかった。
「ひっ…ひぃぃっ!?」
「おい、何で爺ちゃん婆ちゃんを殺した?」
「お金がなくて、死にそうだったからです!」
そして、奴にそう問うと同時に坂田は奴の胸に深々と剣を突き刺した。
「お金がなくて死にそうなのは、アンタだけじゃねぇよ?
皆、お金がなくて死にそうでも、それぞれが頑張って毎日を生き抜いているんだよ。
そうする人達を無差別に殺したお前に生きる権利はない。
『コンテニュー』も出来ない様に地獄に送ってやるからな!」
「ぐっはぁぁっ!?」
俺は頭が真っ白になった。
先生をはじめとする数パーセントの帰還者の中から暴動者が現れるなんて…
しかも、更に帰還者が増えれば暴動者の数はもっと増える事になる。
つまり、セーフティーゾーンでも平穏に生きていけるかは分からないという事!
俺は恐怖で腰が抜けた。
そんな俺に坂田はこう言葉を掛ける。
「坂本、確かにお前の恐怖は理解出来る。
これから先、俺達はさっきの奴みたいな『悪』に負けない様に生きなきゃいけない。
でもな、やっぱり辛いよ…平和を守る為とはいえ、俺は人殺しの片棒を担ぐ事になった。
この事実は消えないし、忘れられる事もない…
でも、平和を守る為に戦う覚悟がないと、この先の人生は生きてはいけない。
それだけは、心の奥に刻んでおけ…」
「わ…分かった…」
こうして、商店街無差別殺人事件は犯人死亡で幕を閉じた。
しかし、俺はある異変に気付く。
「あ…あれ!?犯人の遺体が何処にもない!?」
「あぁ、この世界では死んだ者の魂は『楽園』に飛ばされて
そこで幸せに生きてもらう様に出来ている。
まぁ、殺人犯とかの大罪人は『地獄』に飛ばされて
そこで罪を肉体的痛みで償わせて、魂を殺してもらうシステムになってる」
「死んだ後の設定もキチっとしてるな」
「さぁ、もう時間が時間だ。家へ帰るぞ」
「おう…」
そして、俺達はゲートを潜って〈妖界〉の家へと帰った。
翌日、今日も新たに帰還して来た者が教室に現れた。
「松崎、岩本!
無事にクリア出来たのか!」
「おう、俺と岩本は手を組んでクリアしたぜ!」
「苦労したんだぞー、クリアする為に何回死んだか…」
「そうか、俺は『先行プレイヤー』だったからそのクエストを
クリアしてないから分からないんだよね?」
「そうか…それは良いけどさ…」
「…どうかしたのか?」
俺と岩本と松崎はそんな会話を重ねていた。
すると、岩本が何か異変に気付いた様で…
「お前の後ろに居る可愛い女の子達は誰だ(怒)…?」
「え……えーっと、話すと長くなると言うか…?」
「僕は莉音の許嫁だ!」
「僕は御主人様の下部だよ!」
「私も同じく坂本様の下部だよ?」
あ、馬鹿!それを言ったら俺の人生お終いよ!
俺が岩本を落ち着かせようと言葉を投げる前には、岩本は憤怒と嫉妬の炎で包まれていた。
「おい…なに勝手に抜け駆けしてんだお前(怒)…?」
「違うんだ、これには事情が…」
俺が怒りを鎮めようとしても、岩本の怒りは鎮まる所か更に激昂するばかりだった!
「親友様が苦労して何回も死んでクエストをクリアしている時に
ペット二人と許嫁一人とイチャイチャするとはどういう神経してんだ貴様ぁぁぁぁ!!
極刑だ貴様ぁぁ…極刑だぁぁっ…貴様ァァァァァ!!」
ヤバい、完全に岩本の怒りがフルスロットルしてるぞ、おい!?
岩本は満面の怒りで俺にナイフを持って入って来た!
「殺してやるぅぅぅ!!殺してやるぅぅぅ!!」
「うわぁー!?」
俺と岩本の鬼ごっこは昼まで続いた。
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