No.002 魚雷戦、用意!
「了解。 魚雷戦、配置に着け」
そばにある伝声管に声を通すと、その直ぐ横にあるボタンを右親指で押した。
ボタンを押すと艦首魚雷室と艦尾魚雷室に警報が鳴り、女性兵士たちが忙しなく魚雷棚から室内クレーンで魚雷を移動させて発射管に差し込み、発令所から来る諸元を打ち込み、勢いよく押し込んで蓋を閉めた。
そして、「艦首、1番と2番に装填完了!」と伝声管に声を通した。
発令所に『艦首、1番と2番に装填完了!』という報告が入ると、水雷長のエザリカ・フォラーセルが背後に座っている艦長のリラム・サブマールに声をかけた。
「艦首魚雷、装填完了」
リラムが静かに頷くと水雷長が手元にある[FIRE]と書かれた赤いボタンを親指で強く押した。
「艦首魚雷、発射!」
直後、艦首発射管から飛び出した魚雷は、海中を飛ぶように進みその先にあったガリオン船の船体に激突した。しかし、本来ならそこで起爆するが、木造船なので船体を突き破り浸水を発生させながら食糧庫で止まった。
食糧庫で止まった魚雷は内部に装備された時限式信管が、ゆっくりと3秒きっかりに炸裂した。
炸裂した時に発生した熱波が食糧と船底部分を炭に変え近くにいた船員2人を火傷させた後、発生した衝撃波で船体を引き裂く力と破壊する力が発揮されてあっという間に沈めさせた。
その様子を潜望鏡で見ていたリラムは「敵船、轟沈確認」と言って、潜望鏡を降下させた。
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その後、海面まで浮上させると久々の日光浴を始めた。
船員達は、溜まりに溜まった洗濯物や甲板上を走るといった自由時間を過ごしていた。
そんな中。発令所では、艦長以外の乗員達がリラックスしていた。
「思えば、国に逆らって親や先生、友達を裏切って、もう3年かぁ」
「そういえば、そうだね〜」
「でもさ、ここまで来れたのはリラム君のおかげだよね〜?」
「そうだね。 お兄様が、[この世界は腐っている! だから、俺たちで変えるのさ!]なんて言わなけりゃ」「会えもしなかったねー」
「「ね〜」」
この潜水艦にいる乗員達は仲が良い、理由はほとんどが姉妹だからだ。
それに、喧嘩をし始めても艦長を悲しませたらいけないという暗黙のルールが存在する為、ものの数分で喧嘩が終わる。
艦長以外の乗員達がリラックスしている中、艦長はというと発令所の下にある艦長室で横になっていた。
そして、天井を見つめながら「I am promise to fight to change the world.(俺は世界を変える為に戦う事を約束する。)Goddess of this world(この世界の女神に)」と呟いていた。
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午後18時50分。
夕陽が水平線に沈み込む中、艦内では夜戦に備えて食堂室が開放されていた。
「ほら!沢山、食べなー!」
「1番攻撃の為に、腹を満たすんだよ!」
砲弾の装填を専門としている砲兵員が声を上げて、激励をしているのを横目に魚雷の装填を専門としている雷兵員達は静かに戦闘配食として出された白米を食べ終えると駆け足で持ち場に走って出て行った。
その時。艦内に張り巡らされた伝声管から副艦長の声で『総員戦闘配置、総員戦闘配置。 訓練ではない、繰り返すこれは訓練ではない!』という声が艦内に響いた。