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うさぎの名探偵ロップとフェザーランドの怪事件  作者: Kan
第1部 エレクトロンポリスの光と影
2/29

2 不良うさぎダッチ

 挿絵(By みてみん)

「僕はロップ。今日からラビットゲージで探偵社をはじめたんだ」

 とやっと勇気を出して、ロップは目の前のダッチに言いました。

「すると君は探偵か」

 ダッチはへえという顔をすると、グラスにつがれているウイスキーを舐めるように飲みます。


「そう。もし恋人の浮気や行方不明のペットについて調べてほしかったら、ラビットゲージ中央区の4階建てのアパートメントに来てほしい。今なら安い金額で引き受けるよ」

 とロップは心臓がぱくぱく音を立てているのをどうにか抑えながら、早口で言いました。


「このエレクトロンポリスにおいては……」

 ダッチはウイスキーのグラスをテーブルの上におくと、するどい口調で言いました。

「探偵に求められているのはギャングを撃ち殺す、こいつの腕前さ」

 そう言って、ダッチはリボルバーという銀色の拳銃を小さな指先にからめて、テーブルの上にごとんと放り出します。


「ギャング、ギャングがいるのかい?」

 ロップの心臓は、はげしいドラミングを続けています。

「そうだ。なにも知らないんだな。エレクトロンポリスは犯罪都市さ。だから誰だって用心棒(ようじんぼう)を欲している。俺のような、用心棒をね……」

 用心棒というのはボディーガードのことです。ダッチは拳銃の腕前を買われて、誰かのボディーガードをしているのでしょう。


「もしも、ここで探偵をしたいのなら、生半可な気持ちでは仕事を引き受けないことだ」

 そう言うとダッチは、ちらりと横を見ました。ロップもそちらの方を見ます。いつの間にか、大柄のうさぎが、カウンターで細長いうさぎと口論をしています。どうやらギャンブルをして揉めてしまったようです。カウンターからジンの瓶が床に落ちて、割れてしまいました。


「喧嘩だ……」

 ダッチはにやりと笑ってふたりの様子を見つめています。なんというおそろしい表情でしょう。彼は喧嘩なんかおそろしくないのです。

「ぶっ殺してやる!」

 大柄のうさぎは腰から拳銃を抜くと相手の胸元に押しつけました。

「おいおい、俺の店で喧嘩はやめろ!」

 と店主らしきうさぎがカウンターの奥から顔を出しました。丸い眼鏡をかけている神経質そうなうさぎです。しかし、大柄のうさぎは興奮していて、ふうふう息を吐くと、今にも引き金を引きそうです。


「かまわねぇ。ぶっ殺してやる」

「ちょっと待ちな」

 ダッチはそう言うと座ったまま、大柄のうさぎの方を向きます。

「やめないとあんた、棺桶に入ることになるぜ」

「なに? この生意気なガキが……」

 大柄のうさぎは拳銃の引き金を引こうとしますが、よく見ると手が震えていて上手くいきません。ダッチは、それを見てふふっと笑いました。

「あと5秒以内にこの店から出ていかないとお前の命はない」

「え、偉そうに……」

 大柄のうさぎは、細長いうさぎをぐっと突き放すと、興奮した様子で、ダッチの方に拳銃を向けました。ロップはびっくりしてテーブルの影に隠れようとします。

「残念だったな」

 ダッチは目にも止まらぬ速さで、テーブルの上に放り出していた拳銃を手に取ると、大柄のうさぎに発砲しました。

 大柄のうさぎは、うっと(うめ)くと大きくのけぞり、天井に銃弾を発砲しました。そのままカウンターに寄りかかるようになってから、ドタっと床に倒れました。


「すごい……」

 ロップはダッチの拳銃の腕前の凄さやら、うさぎが殺される一部始終を一度に目の当たりにした怖さやらで、わけがわからなくなりました。

「そのうさぎの(むくろ)を片付けるんだ。はやくしねえと警察が来るぞ!」

 と店主のうさぎが叫びました。店内にいるうさぎたちがのそのそ近づいてきて、床に倒れている死骸を掴んで、どこに運ぶべきか、口々に言うのでもはや収拾がつかなくなっています。


「店の奥だ。とにかく物置きに突っ込んどけ!」

 この店主のうさぎはとても不機嫌そうな様子です。知らないうさぎが慌てて、床の血を雑巾で拭いています。


「すぐに警察が来るぞ! 外にも銃声が聞こえたはずだ」

 と店内にいる名前の知らないうさぎが騒ぎます。するとダッチは舌打ちをし、リボルバーの拳銃を腰にさすと立ち上がり、いかにも面倒くさそうな、重たい足取りで、店の奥へと消えていきました。


「いいか。ここで起こったことは誰も口にするんじゃねえぞ。ここは俺の店だ。わかったな!」

 と店主は怒鳴ります。つまり彼がジョンソンか、マッピンフィルという名前の店主なのです。ジョンソンなのかマッピンフィルなのかは分かりません。


「どうしよう。僕はどうしたら……」

 とロップが慌てていると、先程のうさぎの娘が走ってきて、

「これから警察が来ますが、何を聞かれても、何もなかったと答えてください。お願いします!」

 と言って、ダッチのウイスキーのグラスを掴んで、またどこかへ走っていってしまいました。

(何もなかっただって? だってうさぎ一匹、射殺したじゃないか!)

 とロップはもう真っ青です。


「来たぞ。巡回中の警察がここに来る。みんなしらを切り通せ。ここにいるやつらはみんなごろつきばかりなんだからな!」

 と名前の知らないうさぎが入り口の近くから店内に向かって叫びました。


 探偵社をひらくことになったロップは、はやくも犯罪都市エレクトロンポリスの洗礼を受けることになりました。果たしてロップは無事に探偵をつとめることができるのでしょうか。次回、お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 当たり前のように殺しが起きて隠蔽工作がされる…… ロップはすごい危ない香りがするとこにきてしまいましたね(´゜Д゜`)
[良い点] はじめまして! ちはや様の企画からやって来ました! 童話テイストの文に可愛いらしいイラストが とてもマッチしていますね! それとダッチのキャラが良いです。 可愛いけど強い、これは人気でそう…
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