読み切り ユーが夢見たユートピア
読み切りとなります。人気が出る様でしたら、連載してみようと思います。
20XX年 4月3日 AM8:30
プオーン プオーン
船員「お客さん、起きて下さい。お客さん!」
オレンジ髪の少年「…う、うん…?」
船員「もう到着しましたよ。ユニバーサルアイランドに。」
少年「え、もう!?いっけない!」ドドド
少年「あ、カメラカメラ!」
ユニバーサルアイランド…
北緯35度 東経160度に位置した日本領土の人工島
日本政府の指導の元、数多の大企業による資金、技術の集約により作られた理想郷と呼べる島
面積は18000㎢(四国とほぼ同じ)で、住居はもちろん、ありとあらゆる売店やレジャー施設、テーマパークも用意されている
この島では働く必要がなく、ずっと遊んで暮らすことができるという。
この島で暮らすには年3回行われる抽選に当選する必要があり、1回につき10人しか当たらない(辞退も可能)
そんな中この島での居住権を得た僕、島影優人はこの島へ最初の一歩を踏み出した
僕はまず、ベルトコンベアに運ばれて入島審査所へ入った。島へ来たらまず、入島手続きを済ませないといけない。受付の人に国が発行した入島許可証、身分証明用の元々持ってた学生証その他一式を見せた後、金属検査、生体検査を行って、船から運ばれてきた大きい荷物を手にして一通り完了した。
次に僕を含めた10人の入島者は、島の最高責任者と言う人から島の概要、今後の生活に関する説明の為に、モニタールームへと案内された。
最高責任者「えー、新しく入島される皆さん、ようこそユニバーサルアイランドへ!私、この島の総管理を任されてます、財部というものです。以後、お見知りおきを。」
財部さんはこの島の地理情報、これから僕たちがすべきことの詳細、生活するにあたって気をつけるべき注意点等を説明した。説明の途中だった。僕は隣にいる薄い水色の髪の女の子に目がいった。
優人(あの子…船のデッキにいた…)
その女の子は船で本土からこの島へ向かう途中、船のデッキで髪を靡かせながら海を見ていた子だった。凄い可愛かったから印象に残っている。
少女「?」
優人「あ、すみませんっ!」
彼女のことを見入ってしまっていた。
説明が終わった後、少し早めの昼食を済ませ、僕は送迎車でこれから住む場所へと送ってもらうこととなった。何でも僕1人の為に一戸建ての家を用意してくれると言うから凄い話だ!僕は気持ちを高揚させつつ黒の軽自動車に乗り込んだ。因みにその自動車、何と自動運転なのだ。場所さえ指定すれば自動で目的地まで僕たちを運んでくれるらしい。時代がここまで来たかと感心している矢先だった。
少女「え?」
優人「あ、君さっきの…!」
何と説明の時隣の席にいたあの女の子が先客として乗っていたのだ。定員に達しないと動かない仕組みのようで、僕が乗ったら車はエンジンがかかり始めた。
「トランスファーシステムへようこそ。目的地まで、快適な時間をお過ごし下さい。」
車にはAIが搭載されてるようで、目的地までの距離を確認した後すぐに運転し始めた。
移動中
…今気づいたんだけど、僕今女の子と2人きりだ!気持ちが落ち着かない…けど、折角一緒の車になったんだし、何かおしゃべりした方がいいかな…よし、勇気を出して話しかけよう!
優人「あの…」 少女「あの…」
優人「あ、ごめん!何だった?」
少女「船の時いた子だよね…?もしかして君…中学生だったりする…?」
優人「え?そうだけど…?」
少女「何年生…?」
優人「今年で2年。」
少女「嬉しい!私も今年から2年なんだ!私たち、明日から同じ学校に行くんだね!」
この島で生活する未成年は、島に建てられている学校へ通うことが義務付けられている。いくらユートピアと言えど、やはり学校はあるのだ。
優人「そうなるね…。」
少女「よかった〜。島で友達できるかどうか不安だったから…。あ、名前言ってなかったね。」
少女「瀬奈 美崎。よろしくね。」
優人「あ、島影優人。よろしく。」
美崎「なんて呼べばいいかな…そうだ!優くん、でいい?私のことは美崎でいいよ。」
優人「ゆ、優くん…」
なんか渾名つけられた…。
そんな感じで過ごしてる内に、車が僕の住む住居に着いた。2階建ての、洋風な二世帯住宅だった。これ一件が僕へのプレゼント…改めて思うと凄いな…ここから僕の新生活が始まるのかー!あー最高だ〜!!あれ?車が動き始めてないぞ…?
美崎「え!?優くんち私んちの隣!?」
え…?今何て…?隣…?
優人「えええええ!!こんなことってある!?」
どうなってるの本当!?僕の人生は恋愛ゲームかラノベか何かなの!?
美崎「わ、私たち…ご近所さん、てことだよね…。その…これから何卒…よろしくお願いします…。」
優人(あかん!恥ずかしくて体が熱いー!)
美崎「じゃあ、これからお互い家のこと進めなきゃいけないし、またね。」
優人「あ、うん…」
僕たちはそれぞれの家へ足を踏み入れた。
家の中は1階が一般的に知られる1LDK、2階が自由に使えるベッド付きの1部屋という具合だった。新築のように真新しく、テレビで見たシェアハウスの番組のようにおしゃれな雰囲気だった。既に必要な電化製品は完備されており、家具に関しても不足が無かった。僕はまず、居間のテーブルに置いてある機械を起動させる。
優人「ハロー、ホームキーパー!今日からお世話になる島影優人です。よろしくね!」
ホームキーパー「初めまして、島影優人様!私は、この家の管理を担う者です。不束者ですがよろしくお願い致します。」
ホームキーパーとは家事全般を担当できるアシスタントAIのことだという。何でも掃除から電化製品貴重品の管理、果ては留守番から相談事までこの家や住人に関するアシストは何でも行ってくれるらしい。ホームキーパーに個人情報を全て登録すると…
ホームキーパー「それでは、本日より快適な島での生活をお過ごし下さい♪」
その言葉の後、部屋に灯りがつき始めた。ホームキーパーに個人情報を登録することにより、電気や水道といったライフラインが使用可能となるらしい。僕は既に宅配にて発送した荷物一式を1階、2階共に思い通りに配置し始めた。
優人「1階は食事や来客の対応に使うようにしよう。早く2階の方を済ませたいな!」
こうして一通り模様替えを済ませた後僕がやることといえば…
優人「どうも!世界の窓からこんにちは!ユユートでーっす!」
僕は2階を自分の部屋兼動画撮影のスタジオにして、動画の撮影を開始した。実は僕は趣味で動画撮影をしていて、それをユユート、という名前で動画配信サイト「ヨーツーべ」にアップしている。所謂「ヨーツーバー」という奴だ。
優人「さて、前回ご報告させていただいた通り、僕ユユートは、あのユニバーサルアイランドでの生活を開始させていただくこととなりましたー!楽しそうなところがいっぱいでもうほんっと楽しみです!」
優人「本日は皆さんに、僕にプレゼントされたこの家を紹介したいと思います!では早速いってこー!」
ーーーーー
優人「…と、家の紹介はここまでになります!」
優人「本当は今からでも島を巡りつつ動画撮影したいところですが、少し残念なお知らせがあります。ここユニバーサルアイランドで撮影ができる場所はこの家含め数箇所に限られているようでして、そのような場所を仮にヨーツーべにアップしてもこの島のシステムで消されてしまうようです。考えていた企画が軽く100個はあったのに、その内の70個はできそうに無いのが悔しいです…。」
優人「でも、それで凹んでいたらヨーツーバーの名折れです!新たな企画を、島を巡り、考えていきたいと思います!新しい友達も作りたいし、いろんなことをこの体で見て、聞いて、感じていきたいなー。」
優人「っと、今日のところはここで終わらせていただきます。また会う日まで!」
撮影を終えた後、すぐに編集に取り掛かった。ヨーツーバーを始めたのは1年ぐらい前のことだが、今までで100人くらいしかチャンネル登録してくれていない。でも僕はユニバーサルアイランドでの生活を許されたのだ。これからこの「ユユートズチャンネル」も注目を浴び、あっという間に有名になっていくだろう。その為にも、日々精進するつもりだ。
編集を終え、投稿完了した時には既に午後6時30分を過ぎていた。そろそろ夕飯にしようと思い外へ出ようとした時だった。
ピンポーン
インターホン?一体誰だろう…?僕は1階の小型のモニターのボタンを押した。
優人「はい。」
美崎「優くん…今、大丈夫…?」
優人「美崎ちゃん!今行く!」
何と美崎ちゃんが僕に用があるそうだ!僕は急いで玄関に向かった。
ガチャ
優人「どうしたの?」
美崎「あの…もしよかったら、夕ご飯、一緒にどうかなって…」
な、何だと!?女の子が僕を夕飯に誘うだって!?まっ待て待て、落ち着くんだ僕!僕は何とか気持ちを抑えて返事する。
優人「い、いいけど、急にどうしたの?」
美崎「ほら、記念すべき初日の夕食だし、誰かと一緒に楽しい時間にしたいなぁって…」
優人「うん、丁度夕飯にしようと思っていたところなんだ。一緒に行こう!」
僕たちはここ住宅街の近くにあるショッピング街へ向かうことにした。
優人「出かける前まで何してたの?」
美崎「あ、模様替えを済ませて風景画を描いてたの。2階の窓から見える景色。私、画家志望なんだ!」
優人「へぇ〜凄いな…今度見せてくれないかな?」
美崎「いいよ!優くんは今まで何してたの?」
優人「動画撮ってた。実は僕、ヨーツーバーなんだ!」
美崎「ヨーツーバー…あぁ!テレビでも話題になってるあれね!」
優人「あれ?もしかしてあまり動画とか見なかったりする…?」
美崎「そっちのことは疎くて…ごめんね…。」
優人「それは是非見た方がいいな。世界が広がるから!」
美崎「へぇ〜…」
そうこうしている内に、僕たちはショッピング街に着いた。ショッピング街にはレストランはもちろん、本屋からゲーム屋まで一通り揃っていて、買い物には不自由なさそうだ。僕たちはファミレスにて夕食を取ることにした。
金髪の少女「ほんっとテレグラのアンチがウザくって…て聞いてるの!?」
黒髪の少年「聞いてる!聞いてるから少し静かに!」ピコピコ
優人「隣の子達、賑やかだね…」
美崎「はは…」
優人「何にする?僕はこの煮込みハンバーグ定食ってのにするけど…」
美崎「私このナポリタンとシーザーサラダのセットにしようかな。あ、せっかくだからこのプリンアラモードも追加で…」
注文をタブレットにて発送して暫くすると、奥から女性の店員が台車でご馳走を運んでやってきた。僕たちは島での最初の夕食を開始した。
優人「美崎ちゃんは、この島に来る前はどんな感じに過ごしてたの?」
美崎「普通に中学生やってたかな。ただ、絵画のコンクールの賞は結構取ってた。」
優人「へぇーそれは凄いね!やっぱ才能あるんだなー!」
美崎「…それを心の底から思えれば良かったんだけどね…。」
優人「え?どういうこと?」
美崎「…私んち、両親2人とも美術商でね…絵画や彫刻とかを、とんでもなく高い値段で売り捌いてるんだ…。私のことも、将来自分たちが楽に過ごすための財布としか見てないみたい…。」
優人「え…」
美崎「私はお金欲しさに絵を描きたいわけじゃない!見た人を感動させて、幸せな気持ちにさせたい、ただそれだけなのに、あの分からずやときたら…!誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだとか、そんなことばっかりで…!」
美崎「だから私、清々してるんだ。暫く家族の手の及ばないところで自由に暮らせるんだから…。あ、ごめん!変な空気にさせちゃって…。」
優人「…親に理解してもらえないって悩み、僕には痛いほど分かるよ…。」
美崎「え…?」
優人「僕がヨーツーバーになったのは、従兄弟の兄さんがきっかけでね…兄さんは、凄く有名なヨーツーバーだったんだ…。よくこんなこと思いつくなってくらい面白い企画ばっかりやっててさ…物々交換で金塊貰ったり、アメリカまで行って蜻蛉返りで帰国したり、核シェルター買ったり…」
美崎「はぇ〜…」
優人「そんな兄さんが僕に言ってくれたんだ。「優人は俺の2世になれる。だから優人もヨーツーバーになるんだ!」って…。そんな事を言ってくれた兄さんが………その1週間後に死んだ………」
美崎「え…!?」
優人「無人島で1週間暮らしてみたって企画だったんだけどさ…港へ向かう途中に…運転していた車が事故に遭って…」
優人「兄さんのニュースはネット中心にあっという間に広がった…後追い自殺者が出たって…そんくらい人気だったんだ…」
優人「僕は数日間頭が真っ白だった…葬儀の時の記憶が曖昧でさ…ただ、あの時の兄さんの言葉が頭の中で何回も響いていたのだけはしっかり覚えているんだ…。」
優人「それから僕は決心したんだ!兄さんの遺言通り、有名なヨーツーバーになるって!それも兄さんの知り合いって事を公にせずに、自分の実力だけで!」
優人「…それで、1年前に動画投稿を開始したんだけど、父さんと母さんがそれを知って、猛反対してきたんだ。勿論、僕に兄さんみたいな目に遭ってほしくないって言いたいのは分かってた。だから決して危ないことはしないって言ったんだけど、お前じゃ兄さんの様にはなれないって言ってきたんだ…。確かにヨーツーバーで有名になれるのはほんの一握りだし、片手間でやるようじゃ生き残れない世界だということは理解している。だけど、面と向かって簡単に否定することないだろって…ここで諦めたら死んだ兄さんが浮かばれないだろって…それ以来、僕も両親とはあんま仲良くないんだ…。ほぼこっちの独断でヨーツーバーやってる感じ…。だから、今の美崎ちゃんの話聞いてて他人事とはとても思えなくって…。」
美崎「私以上に重い過去があったんだね…。」
優人「僕たち、おんなじ悩み抱えているみたいだしさ…また何か嫌なことがあったらいつでも聞いてあげるよ。家だって、その…隣なんだし…。」
美崎「ありがとう…優くんって、初めて話した時から思ってだけど…優しいね…。」
美崎ちゃんは暖かい眼差しと微笑みで僕を見つめてそう言った。
優人「うぇ!?そ、そうかな…?」
僕は顔を赤らめてそう返事した。
食事を一通り終え、僕たちは会計を済ませた。ここで、このユニバーサルアイランドにおけるお金の仕組みについて説明しよう。まず、この島では現金が存在しない。全て電子マネーでの決済だ。この様にファミレスなど外で食べた時は島の住民アカウントに情報が行き渡りその人の個人口座から引き下ろされる。そうする事で自動に決済を進めてくれるシステムになっている。どのくらい残高があるかはスマホで確認可能。因みに、コンビニとかの買い物の場合も同じで、会計せずとも自動で決済してくれるシステムだ。その為、殆どの店ではレジが存在しないんだ。
僕たちは会計を終え、外へ出た。
優人「あ、明日の朝ご飯買っておきたいな。ちょっとコンビニ寄っていい?」
美崎「いいよ。折角だし私もサンドイッチか何か買っておこう。」
僕たちは急遽コンビニへ向かうこととなった。すぐ近くのコンビニ「エイトトゥエルブ」へ向かおうとすると…
???「どわあああああ!!!」
優人「な、何!?」
美崎「いやぁ!」
コンビニの入口から人が飛ばされてきた!男の子?見たところ僕たちと歳は大差ない様だけど…。
???「いってぇ…やっぱりこの島で立ち読みは不可能なのか…?」
青く耳をすっぽりと覆うくらいに伸ばした髪で、黒縁メガネをかけたその男の子は、うつ伏せに倒れながらそう呟いた。
優人「あの、君大丈夫…?」
???「あ、すみません…お見苦しいところを…て、あれ?俺と年齢大差ない…?いや、ショタジジイって可能性も微レ存…?あ、もう1人いる。もしかして…」
???「失礼だけど、君たち、中学の2年生だったりする…?」
優人「え?そ、そうだけど…?」
???「よし、タメだ。敬語必要ない。いやー本当に恥ずかしいところを見られてしまったなー。ほら、週刊少年ステップってあるでしょ?少年誌の。俺愛読者でさ、毎週読んでるわけ。この島のコンビニって立ち読みがバレたらカメラから情報得た監視AIが警備デバイスに追放の指令を出してコンビニから摘み出されるんだ。だけどステップって1冊250円かかってさーこれを毎週買うとなると1ヶ月大体1000円、1年で12000円もかかる計算になってねー。島で毎月支給されるマネーは俺たち中学生の場合は月15万円、1年で180万円になるとは言え貴重なベーシックインカムの内の12000円を毎年確実に失っていくのは大損説が俺の中で浮上して…。そこで俺はコンビニでの立ち読み作戦を決行した!島内のコンビニは全て防犯カメラが天井の隅に4つずつつけられていて、その内雑誌売り場を映している物は2つ。そしてそのカメラは1分毎に首を90°振って監視範囲を変更している。カメラの種類を調べて視野を考慮したところ、死角となるポイントをカメラの向きが変わる毎に1箇所ずつ、計2つほど割り出したんだ。後は1分経つたびにその2つのポイントを商品棚に隠れつつ上手いこと移動すれば、監視AIの目を掻い潜れるって寸法。それを島中のコンビニで実行していたんだけど、これで5連敗…。カメラの他にもサーモメーターとかが搭載されてんのかな…。あ、電磁波読み取ってる可能性も…?」
美崎(やることに対して目的が小さい…)
優人(そんな立ち読みの仕方疲れるだけな気がする…)
???「あ、つい喋りすぎてしまった、失礼。まだ名乗っていなかったね。」
???「俺、雨宮京一。さっきも言った通り君たちと同じで中二。そうかー、君たちが噂に聞いてた編入生2人かー。」
美崎「編入生?それって明日私たちが向かう「天則学園」の話をしているの?」
京一「そう!俺は天則学園の2年1組。と言ってもクラスは1つだけだけどね。クラスメイトは今のところ俺含めて7人。全員アクの強い曲者ばかり。つい最近編入生が2人来るって連絡があって大きな話題になっててね。今回もどんなキワモノがやってくるかと身構えていたんだけど、穏やかな感じの人らで助かった。」
美崎「そ、そんなに凄いクラスなの…?」
京一「あぁ、凄いぜ…暇さえありゃ走り回ってる風の子みたいな奴とか、地下アイドル経験してる小うるさい女とか、過去からタイムスリップしてきたんかってぐらい純和風な奴とか…。」
優人(君も大概だよなんて言えない…)
京一「だけど、問題が起きたことは少なくとも俺がきてからは一度もないからそこは安心していいね。なんだかんだ言って根はいい奴らなんだよな。それに加えて、天則学園は他の学校なんて比にならないくらい設備が整ってるから、最高の学園生活を送れると思う。楽しみにしてていいと思うよ。」
優人「そうかー。僕正直ちゃんと学校生活送れるかどうか心配だったから、それ聞いて少し安心したよ。」
美崎「私も。なんだか明日が楽しみになってきたな〜。」
優人「あ、こっちも名乗ってなかったね。島影優人。よろしく。」
美崎「瀬奈美崎。これからよろしくね。」
京一「島影優人に瀬奈美崎…よし、覚えた。これも何かの縁だ。お互い良いようにしていこう。」
その後僕と美崎ちゃんは京一くんと少しばかり言葉を交わし、LIME(連絡交換用システム)の連絡先も交わした。京一くんはTmitter(SNS)をやっているらしく、アカウントを教えてもらい、フォローした。暫くして僕ら2人は京一くんと別れ、家路に着いた。
美崎「正直…変だけど、話してて面白い子だったね。」
優人「うん。今日1日で同い年の子と2人も知り合いになれるとは思ってもなかったよ。明日京一くんのいるクラスに行くのも、楽しみだなあ。」
美崎「話に聞く分だと愉快なクラスらしいからね。きっと平穏な生活とはかけ離れるんだろうね〜♪」
優人「ちょっ、美崎ちゃん!?」
美崎「ふふ♪なぁ〜んて冗談!」
そんなたわいもないやりとりをしている内に、僕らはそれぞれの自宅に着いた。
美崎「今日は付き合ってくれてありがとう!折角だから明日も一緒に学校に行こう!」
優人「あ、うん。僕朝弱い方だから、早起きしないと…。」
美崎「大丈夫!行くときになったら私が迎えに行くから。」
優人「そ、そんな、悪いよ…。」
美崎「いいからいいから!じゃあ、また明日ね♪」
優人「あ、じゃあね…。」
美崎ちゃんって掴みどころがないな…。僕らは明日からの夢のような生活に備えるため、お互いの家へ足を踏み入れた。
ホームキーパー「おかえりなさいませ、優人様。お風呂の準備を開始しますので暫くお待ち下さい。」
優人「ただいまホームキーパー。へー、お風呂の準備も時間と行動を考えて行ってくれるのか…。ありがとう!」
優人「お風呂の前に…そうだ!さっきの動画どれぐらい見られてるかな…。」
僕は2階へ向かい、パソコンを立ち上げてヨーツーべを確認した。
優人「え…何だこれ…」
僕は画面の前の信じられない光景に呆気に取られていた。と言うのも…投稿した動画が信じられないくらいに再生されているんだ!しかも評価とチャンネル登録ボタンも凄く押されている!
優人「こんなに再生されてるのは初めてだ…。」
優人「あ、コメント…」
僕は半分の期待と半分の不安を胸に、これまた1000件以上されているコメントに目を通した。
「ユニバーサルアイランドでの生活を配信していただけるなんてとても楽しみです!これから応援します!」
「家めっちゃ豪華!これがプレゼントされるなんて羨ましい!動画楽しみに待ってます!」
「凄いを通り越して言葉が出ない…あの島で配信する動画なんて面白くないわけないから登録した、これからも頑張って下さい!」
優人「………凄い………」
投稿してから2時間ちょっとしか経ってないのに、もうこの勢いだ…。美崎ちゃんと食事に行ってる間に、僕は有名人となっていた。こんなにも大勢の人に応援されるなんて…
もちろん中には
「偶々抽選に当たったクソガキがイキんな」
「島嫉妬民が量産されるだけだからやめた方がいいよこんなん」
と言った心ないコメントもあったが、こんなのは動画投稿した最初の頃から言われ続けていることだから今更って感じで気にならない。そして今はそれ以上に、一躍して有名人となったことの高揚感が圧倒的に勝っていたからどうでも良かった。
この島に着いた今日、僕は素敵な一軒家をプレゼントされ、友達が2人もできた。加えて、ヨーツーバーとして大躍進を果たした。そして明日からは、更に幸せな日々が待っている。
僕が夢見たユートピアは、確かにそこにあった!!
4月3日
天気 晴れ
新規入島者を10名確認
その入島者全員が、島での生活に満足している模様
ユニバーサルアイランドは、明日以降も皆様にとって夢の様な生活を送れる島となりそうです
プロローグ 完