勇人、凍結隊入隊!
当たりは静寂に包まれていた。謎の武装神機の出現に隊員達は少しの間
沈黙していた。
その頃、ほのかは家に戻っていた。鬼が退治され、街も落ち着きを戻したので
一度劇場に戻ってから家に帰って来た。
「もう帰ってたの勇」
「ああ。大した事なかったからな」
「凍結隊の人達には?」
「何もしてない」
「もう、あいさつぐらいしないとせっかく鬼を倒しても褒めてもらえないわよ」
「そんなのはいらない。ま、報酬をもらえるなら別だがな」
「だったら、入隊すればいいじゃない。普通に働くよりはもらえるわよ」
「……姉さんの助けになるなら考えるけど」
「じゃぁ明日にでも行ってきなさい。あんたがちゃんと誰かと一緒に戦える
方が私はうれしいから」
勇人はほのかに言われてしぶしぶ行く事にした。
翌日、街は復旧作業をしながらもいつもの日常に戻っていた。その街の
中心にある建物。そこは凍結隊の名護野支部だ。
入り口には警備員がいる。勇人はそこに向かった。当然、警備員に
止められるが、勇人は入隊希望と言い、通してもらった。
凍結隊はつねに鬼と戦える者を募集しているのでその志望者なら
通してもらえた。
中に案内され、小さい部屋で待つ様に言われた。
勇人は窓から街を見ていた。少しすると部屋のドアがノックされ
誰かが入って来た。
「待たせたわね。あなたが入隊希望者?」
「ああ。紫藤勇人。昨日鬼を退治した者だ」
「!?あの神機に乗っていたのがあなた?」
「ああ。あれは俺の神機だ」
「そう。驚いたわ。部隊以外の人が神機を持ってるなんて」
「それで、あんたは?」
「ごめんなさい。私はこの凍結隊の副隊長をしている八神志乃よ!
よろしく」
髪を後ろで結んでいて美人で豊満な胸をしている。もちろん腰には
刀をさしているが。
「じゃぁ中を案内してあげるからついてきて」
志乃に言われ中を見回る。他の隊員らしき人達は志乃にあいさつを
するついでに勇人を見ていく。勇人は顔は怖そうに見えるが容姿は
良いので女の子達は気になる様だ。
色々部屋を案内されて、最後に通されたのが隊長室だ。
志乃がノックをし、中に入っていく。そこには座っている男とその前に数名の
男女が居た。勇人達は座っている男の前に立った。
「隊長!」
「どうした?そんな大声出して」
「そ、その彼が新入隊員になるんですけど」
「それは見ればわかる。若いな」
「そ、それより。昨日のあの神機!あれに乗ってたのが彼なんですよ」
「何!?」
男も含めてそこにいた全員が驚く。
「本当に君なのか?」
「ああ。あれは俺の神機だ。国のとは違っただろ?」
「確かに。あんな機体は見た事がない。あれはどこで手にいれた?」
「あんたに言う秘密はない。俺は鬼を倒す。それだけだ。だが、それだけじゃ
生きてけないんでね」
「それでうちに入ったと?」
「そういう事だ。与えられる仕事はきっちりする。だが、俺は誰とも
仲良くなる気はない。鬼を全滅させたら俺はただの人だからな」
「鬼を全滅。君も鬼に何かを奪われた方か」
「そうだ。大事な親友を奪われた。育った村もな」
勇人の声に全員が同情するような顔をする。
「わかった。ならこの街の平和の為に君にも協力を願おう。あの機体が
味方なら心強い。えっと」
「紫藤勇人」
「紫藤勇人。私がこの名護野支部隊長をしている葉桜康介だ!
よろしく」
康介は立ち上がり勇人の前に立ち、握手を求めた。勇人も背は高いがそれ
以上に康介は高く、眼鏡をかけてるいるイケメンだった。
勇人も一応握手をする。それからそこいた隊員達も紹介されその後
勇人は一人で行動する事になった。
この支部には隊員達の住んでいる寮もあったりするので広い建物だ。
その中を一人で回っていると誰かに声をかけられた。
「紫藤君」
「……あんた部屋にいた」
「井上神奈子。あなたと一緒で私も最近入隊したの」
そう言ってるのは短い髪に勇人と同じ様な目をしていて、怖い感じが
するが可愛くスタイルの良い女の子だ。さっきも部屋の中では皆が
驚いてるの中、一人だけ笑わなかったのが彼女だ。
「何か用か?」
「私と戦ってくれる?」
「あんたと?」
「ええ。お願いできるかしら」
「構わないが、機体は使うのか?」
「いえ、さすがに使えないから、このままでいいわ。じゃぁついてきて」
神奈子に言われてついて行った所は隊員達の訓練所だ。そこには数人の
隊員達が訓練していた。
二人が来たのに一度振り向くがそのまま訓練を続けている。勇人も
神奈子に教えられてから勇人も整えた。
二人は中央に立つ。それを見て他の隊員達もやめて二人を見る事に
した様だ。
「本物は使わないのか?」
「ええ。ここじゃぁ竹刀でしか訓練できないから。なんならその刀と同じ
数使う?」
「あんたが使うにふさわしかったら使ってやるよ」
「そう。ならすぐに使わせてあげるわ」
勇人に言われて神奈子の目つきが変わった。そして、神奈子が先に
攻撃をしかけて来た。
一瞬で勇人の前に現れ、しかけるがそれを勇人は簡単に止める。
「瞬行を使えるみたいだな」
「これぐらい使わないと隊員にはなれないわ。それからこういう事も」
「!?」
神奈子は霊力を放った。それを勇人はよけてその霊力は壁に当たった。
「いいのか?壊して?」
「あとで治すからいいわ。それに、次は外さない。悪鬼羅刹覇!」
神奈子は黒い霊力を放った。さっきのとは違い、勇人はその技を受けて
しまった。
「この技を受けて立っていた人はいないわ」
「じゃぁ俺が初めてだな」
「!?まさかノーダメージ?」
「いや、少しは痛かったぞ。傷もつけられた。あんた強いな。いい練習相手に
なりそうだ。じゃぁ今度はこっちから行くぞ」
「!?」
――
夜。勇人は部屋に戻っていた。支部の寮ではなく元々の家の方だ。
そこにはほのかがお風呂上りの姿でいた。つまりバスタオル一枚だ。
「へぇあんたに声をかけてきた子がいたんだ」
「まぁ喧嘩を売られただけだがな」
「それは訓練でしょ?それで」
「俺が負けるとでも?」
「もしかしてケガさせたり」
「そのぐらいしないと訓練じゃない。それに、あいつも心配ないって
言ってたからな」
「強い子みたいね」
「それぐらいじゃないと隊員にはなれないって言ってたからな」
「そうとうな覚悟でなった感じね」
「そうみたいだな。おそらくあいつも俺と同じだ」
「なら、仲良くしないとね」
「それはない」
「あんたに可愛い彼女ができたら私はうれしいんだけどな」
「この時代に必要ない」
「なら、この時代を終わらせないとね」
「ああ。終わらせるよ」
勇人は改めて鬼を全滅させる事を誓った。その勇人を見てほのかは
勇人の顔を自分の胸にうずめてしばらく抱きしめていた。勇人も
その間はおとなしく姉の優しさに甘えていた。