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そして世界が終わるまで  作者: rintz
第一章 その依頼引き受けましょう
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#4 魔女狩り事件

 記述試験は聞いていた通りの出題傾向だった。問題数は少なく解答時間も二時間とたっぷりある反面、内容の殆どは選択式よりも記述式の物が多い為半端な知識で臨めば解答を出すことはまず出来ないだろう。


 魔法の扱い方に関するものから歴史に至るものまで本当にありとあらゆる知識が要求される。


 一般的な学校と違い、魔法使いの通う学校は特殊だ。フロリスを始めとする魔法学校は第二世代の魔法使いが生まれて以来増える一方で、今では中央都市だけで十校を超えた。


 元々はフロリスしか魔法学校がなかったことを考えると、この七年で十校設立というのはまさに破竹の勢いだったと言っていい。


 魔法使いという存在自体も以前よりも世間に溶け込んでいて、今では生活に無くてはならないもの位の立ち位置まで来ている。魔法使いに対する風当たりも僕が子供の頃に比べて随分と改善されたものだ。たった数年でこれなのだから、数十年後には一体どうなっているのやら。


(ん、最後の問題だな……)


 自分なりに解答を進めてきて、いよいよ最後の設問まで来た。ペンを持つ右手もやや疲れているのか少し重く感じる。試験終了まではあと一時間も残っているし、余裕を持って回答できたと思う。


『魔女狩り事件について簡潔にまとめ、自身の考えを述べよ』


 その最後の出題文は、今までのどの問題よりも圧倒的な存在感を放っていた。


 まとめろというだけでなく、自身の考えを述べよとまで言っている辺りにこちらの思想がどんなものなのか確かめている節がある。


 単純に近代魔法史におけるであろう大きな事件を知識としてちゃんと持っているかを試しているのかもしれないが、どうもこの問題はきな臭い感じがした。


(どう解答したものか……)


 まず、最初の簡潔にまとめるという部分から考えよう。


 魔女狩り事件は七年前に起きた国内最大の事件である。事件当日、中央都市の魔法省会議ホールでは各国の魔法使い代表を集めた大規模なフォーラムが行われていた。年に一度の大きなイベントであり、代表以外の魔法使いの多くも世界から会場へ足を運んでいた。その様子は世界同時中継によって放送された。


 魔法使いである者なら最先端の魔法研究に誰しもが興味を示し、そうでない者からも未知なる技術分野ということもあって大きな注目を浴びていた。


 事件はそんな中で起こった。突然会場内にぞろぞろと黒装束に身を包み、フードで顔を隠した集団が入ってきたのだ。会場の出入口と階段を全て爆破し、手にしたナイフや銃などの武器で会場の人間を次々と殺した。


 各国代表の魔法使い以外は防犯の面から会場への杖の持ち込みが禁止されていた為に、犯人たちに対抗することが出来ず、一方的なその凶刃にただひれ伏すしかなかった。


 その凄惨な光景はテレビ中継にて全世界に配信され続ける事となる。


 そして、突如代表と思われる人間は宣言した。


「魔を操るものは皆殺す。魔女狩りだ」


 たったそれだけ。惨たらしい映像の中でたった一度、犯人側からこの言葉だけを残し中継は切られた。現場では丁度そのタイミングで魔法省の特殊部隊が現場に突入していた。だが、捕まることを良しとしなかった犯人たちは全員自爆して事件は終了。


 と、これがこの事件に関する一般的な知識だろう。本当に謎の多い事件で、今でもこの話題でテレビ特番が放送されるくらいには認知度が高い。


 今ではもう根も葉もない噂が飛び交っていて、どの情報も信憑性が皆無だ。現状、反魔法派組織のテロ行為だったのではないかということで落ち着いている。中央都市以外では別の意見も多いというが、ここでは書くのを伏せておこう。


 そして忘れてはいけないのが、あの事件の後の混乱を色々鎮めたのがフロリス魔法学院の学院長であり、現在の中央都市議員でもあるアヴレイン=フラウレスであるということか。


(うーん、これくらいの当たり障りの無い情報でまとめておけばいいかな)


 適当に簡潔に、文章にまとめる。


(事件に対する考え……ねぇ)


 問題はこっちだ。これは、採点者へ向けての……


 僕はそんな事を考えつつもペンを走らせる。ふと会場内の時計に目をやると、後十分で試験終了というところまで差し迫っていた。


 ささっと終わらせて一眠りしよう……なんていう僕の考えは見事に最後の問題によって打ち壊されたのである。そう考えると、出題者に対して無性に腹が立った。

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