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死んでほしい訳じゃなかった

作者: さゆき

彼の奥さんが亡くなった。

死んでほしい訳じゃなかったのに。


彼と知り合った時にはもう彼には婚約者がいた。

でも私たちは出会い、愛し合った。と私は思っていた。

彼にとっては結婚前の遊びだったのかもしれないけど。


でも私たちは毎日連絡を取り、お酒を飲み、それから身体を合わせた。

私は幸せだった。彼に結婚を取りやめてほしいなんて言わなかった。

彼は婚約者のこともポツリポツリと話してくれたが、別に興味なんてなかった。


彼の結婚式の前日、一番好きな人は私だと、彼は言った。


そして私は彼の教会での結婚式に招待され、出かけて行った。

昔流行った歌のようだ。

真っ白なドレスに身を包んだ花嫁は幸せそうで、でも正直私よりも美人では

なかった。

彼は終始、照れくさそうに笑っていた。


その夜、私はひとりでワインを飲んだ。泣かなかった。でも飲んだ。


彼の結婚後も私たちは会っていた。身体を合わせ、でも今までよりも少し空虚な気持ちで。


一年くらい経ったころ、彼の奥さんが妊娠したと告げられた。奥さんはとても

喜んでいると聞かされた。


同時に胸に何かグリグリしたものがあって、検査していることも聞かされた。


しばらくした頃、彼から子供を堕胎したことを聞かされた、胸の病気の進行に

影響があるので子供は諦めなければならなかったそうだ。


そしてまた一年くらいたった頃、彼の奥さんは亡くなった。治療でやつれ、髪も

抜け落ち、でも最後まで精神的にはしっかりとしていたらしい。


私は彼の奥さんに死んでほしいなんて思ったことはなかったのに。

呪ったことなんてなかったのに。


それから私からは連絡しなかった。さすがに出来なかった。


半年くらい経った頃、彼から連絡があった。お悔やみを言い、お酒を飲み、彼の

マンションに行った。

仏壇は無く、亡くなった奥さんの小さな写真の前に、やはり小さな花が供えられていた。


その写真の前で、また私たちは身体を合わせた。


でもそれが彼に会った最後になった。彼は仕事で海外に行った。


やがて彼は海外で知り合った人と再婚した。


私はそれから、また奥さんのいる人と付き合い、今もその人からの連絡を待っている。



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― 新着の感想 ―
[良い点] うまいですね。 長編小説の一編を読んだような気分になりました。
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