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ミフは冥界より追放される

タイトルを半分回収いたしました。

 無言のまま振り返って歩き出した。

 途中イシャララの隣を通ったが、気にも止めずに通り過ぎる。


 白い地面に座り込んで左手が赤くなるほど右手で握っている女の子の正面にどさっと座り、固く締め付けているマロンの手を取って、ゆっくりと指一本ずつ離していった。

 まだ動悸がしっかりと収まっていないようで、呼吸が荒く、身体中小刻みに震えていた。


 ふと、ミフとマルンは目が合った。

 マルンはまだ怯えた様子で顔を上げた。

 ミフは先程までとは全く違う優しい目をしていた。


「大丈夫だ。あいつはいなくなった。」

 優しく、包み込むような口調で言った。

「これから何をしたい?」



 ミフはそんなことを突然、最初に聞いてきた。

 マルンは考えた。


 しかし、今までの一年間そんなことを思い着けられなかった。

 自分の内側から出てくる喜怒哀楽がシェイクされている記憶に自分の心を振り回されていたからだ。


 人魂を食らう死神。


 だからこその命の償い。

 気づけば、自分の存在が潰されそうになって感情を抑え続けていると、物言わないただの人形になっていた。

 私は、今何をしたいのだろう。何を求めるんだ。

 口が震えて、声が上手く出せない。この殺伐とした死の世界の主から解放された安堵感の素直な気持ちは何だろう。



 マルンはじっと、少し視線を傾けて、考え続ける。

 その様子を見ながら、じっとミフは黙って待っている。その状態のまま、数分が過ぎた。


「あのさ」

 勇気を出して声を出した。色んな思いが溢れてくる。

「何か決まったか?」

 少しいらぬ心配している顔に成りつつあるミフに向かってこう言ってやった。

「ありがとう。ミフ」

 そのマルンの瞳は潤い、輝いていて、一年ぶりの清々しい笑顔をしていた。

「うん。どういたしまして。」

 動じずに笑顔でミフも答えた。

「よし。ここから外に出るか。」

 ミフは、マルンの手を握ったまま立ち上がる。立ちやすいよう、握った手を支えた。

「でも、どうやって出るの?」


 普通に浮かび上がる疑問をマルンは言った。

 この白だけの世界である。ドアがあったとしても見えないし、自分の持ち物以外にモノと言うものは……。

「あっ。杖。」


 二人は同時に言った。直ぐに後ろに転がっている杖を拾う。ミフが杖を畑を掘り起こす際に使う桑のような形で持ち、ひび割れている地面の亀裂目がけて振り下ろした。


 バキバキ


 少しずつだが亀裂は大きくなっている。杖も頑丈なようで、このまま人が通れるようになる穴が出来るまで時間の問題だ。二人とも笑顔だ。

「あのさ」

 今度は、ミフがマルンに向かって言った。

「どうしたの?」

 横で応援していたのを中断した。

「もしかして、君の妹は……」

 まだ、質問をマルンは理解していないうちにそいつが来た。



「ほんと怖いね。神を斬るなんて。そんな奴二人目だよ。しかも、この“冥界”の壁に“ホップンロスト”(杖)で穴開けて他の世界へ行こうとするなんてね。」


 二人は見覚えのある声に振り向いた。

 そいつの服は正面から右斜めに切れているが、今さっき肉まで斬っているはずなのに塞がっている。

「イシャララ」

 生き返った化け物に対し、ミフはマルンを背に隠し、睨み付ける。

「本当、お前の行動は奇想天外だ。全て笑えない冗談かと思ったよ。」

 ケラケラ笑いながらイシャララは話を続ける。

「この世界の番人としてしっかりと釘を刺しておかないとね。千本ぐらい。」


 マントを翻し、手を空へかざした。すると、どこから現れたのか黄金色の。かつ、しっかり釘の形をしているものが千本現れた。


「ほんと、ふざけているだろ……この世界」

 ぼそっと、小さくミフは刀を抜いた。


「釘千本霰」

 釘はミフの体に向かって飛んでくる。ミフが刀で打ち落としてもすぐ体勢を立て直してきてきりがない。


「どうした。俺を斬った時のようなキレがないぞ。」

 イシャララは誇らしく笑っている。


「ふっ。単純な野郎が。」

 ミフは神という単純な存在を知り、鼻で笑う。

 自分でも、これは負け惜しみだということを充分理解しているつもりだ。



 数十分後

 体に全ての釘が刺さり、この世界に沈んで行くミフの手を両手で握って止めたが、引っ張られる力が強く、指の一本一本が間からすり抜けて行き、この何もない白く固い地に飲み込まれてしまった。




少女は孤独な世界でまた独りぼっち……。


江戸の敵を長崎で討つということわざがあります。ご期待ください。


ポイント評価をお願いします。今後の創作活動の参考にさせて頂きますので、ご協力お願いします。

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