全地神イシャララ(とてもかんじわるいやつ)
何だイシャララってやつ。突然沸いてきて(怒)
全地神『イシャララ』
ホイシャルワールド(マルンがいた世界)で今から一万年前のこと。
世界規模の農作物の大不作に陥った。
人々の怒りの矛先は当然、当時世界最高機構かつ世界的な信仰網を持つブラキタ教元老会の腐敗に向けられた。
数々の浮き彫りになる教会の悪態、初めて分かった残虐さ、過去に行われてきた殺戮の歴史。
人々への不満が溜まりに溜まり、世界の四つ各地で教会相手に反乱軍が戦闘行為が続いていった。
世界が戦争、飢え、明日も見えない恐怖で笑顔一つも見えない中、一人の神が舞い降りた。
その方は、どこからともなくふらっと現れ、人がいる所でとても満足に言えないが少しの食べ物と水、音楽に合わせて語る陽気な話をする。
その姿に疲労しきった人々は小さな安らぎを感じた。
全地神 序章“登場”より
「ふーん。イシャララ様って良い人なんだね。」
ソファに座っている小さなバルジャック王国の双子の姫は揃って言いました。
「そうね、マルン、ソリア。良いことが一万年前の事なのに人々に語り続けられているのは素晴らしいことだね。」
二人はその話を聞いて笑顔になりました。だって世界中の人が尊敬するイシャララ様を世界で一番大好きな二人のお母さんの話からでたのですから。
「でもね。マルン、ソリア。」
お母さんは少し怖い声で話しかけました。
「自分が将来結婚する王子様はみんながどんなに凄いと誉めたたえようがどんなに秀てる武術、魔術が使えようが、周りに流されずに自分が心から愛している王子様じゃないとだめよ。しっかり相手を見なさい」
「はーい。」「はーい。」
二人は揃って返事をした。話は難しくてよく分からなかったが。そして、二人は揃ってこんな質問をした。
「お母さんはお父さんが好きだから結婚したんだね。」
「ええ。私は貴方たちのお父さんを愛していたから結婚したよ……。そして、あなた達が生まれて私はとても嬉しかったわ」
そのことを聞いて、とても喜ぶ二人の娘をよそに、少し悲しそうな目で我が娘達を見ていたのを姫二人は気づかなかった。
バルジャック王国の姫二人に五百年に一度のイシャララ様へ生贄にされる儀式の当人になる事実は儀式当日まで知らせていなかった。
元バルジャック王国第一王女マルン=メイナン=バルクはその事実を知るまでイシャララを信仰する世界の中の一人として存在していた。だが今はそいつの二十人目の妻となっている。
そういう立ち位置になった一年間。その時間何に怯えていたのかを面やパーカーといった拘束器具が取れた今でも体が覚えていた。
トラウマは簡単に絶ち消えない。
「どうした。早くしないと食事が多くなっちゃうぞ。」
その言葉でびくっとマロンの体が震える。
一方、その様子を見ていたミフは白服のイシャララの生い立ちは知らないし、マロンの世界でどんな評価をどれだけの長い期間人々が共有してきたとかは知らない。
初対面でその人のこと全て分かったら苦労しない。
「すいません。マルンはどのようなものを食べるのですか。神様。」
ミフは、清い好青年スマイルで質問をした。取りあえず礼儀を通す。
すると、気を良くしたのか無視を続けていた態度が急変した。
「因みに私の名前はイシャララね。迷える子羊よ。この後、死神マルンはその日捕れた人魂を体に入れるよ。新鮮さ抜群の人の記憶だよ」
あー。マルンの持っているあの杖か。
確か、人魂採っていると言っていたな。
何でここに魂が紛れ込むのか、理屈はよく分からないが、ここに生きる人はそれが主食か?
「へー。貴方様も召し上がるのですか?」
飛びきりのスマイルで続けた。気分を良くしたイシャララ様は答えた。マルンの左指は真っ赤になっている。
「いや。別にこの世界にいて腹減ることも、食べるものもないし、楽しみと言ったらどこからか知らないが……。俺に奉げられたとか言って下等生物に肉体ごと流されてくる哀れな女に人魂を食べさせることかな。だんだん狂ったように精神が崩壊していって、最後は魂を貯めおけずに大きな赤い華を咲かせるからいいね。あのこう……そこに行くまでの苦労とか紅い華が咲き誇った時の達成感はこう……。」
「熱弁の途中悪いが。」
宙に静止している神と呼ばれている男が前を見ると、目から出る一本の雷を放ち、全身の体を捻らせる。
空高く振り上げている鍛えられた一本の鋼の牙を持つ者が導く一閃で、自分の体を二分割に切り裂いていた事に気づいたのは全て終わった時だった。
両断したミフは、静かに着地した。
バタンと二つに分けられた体は白い地面に落ちたことを背中で感じる。
後からふらりふらりと後ろに掛けていたマントがイシャララの体を覆った。
カチン
背中に掛けてある鞘と鍔が鳴った。
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