転生者バトルロワイヤル
ホイシャルワールドの真実。
※お知らせです。2018年7月11日の更新分で完結となります。もう少しお付き合いください。
※近日中に新作の投稿を予定しています。第一章は連日三話更新予定です。お楽しみに。
「まさか異世界転生者同士のバトルロワイヤルか。」
「はい。これは機密情報ですが、お二人は該当される方々だ。と確信持って話をしています」
机越しにミフとジョー。反対側にボットとアオが隣同士で座る。
ブノは少し離れた所で座って、様子を見守る形となった。
最初はジョーから、ボットを尋問するようになった。
「どうしてそう思った? 話題になっても、普通は絵空事の噂話で済むはずだ。最初からそれを見抜いていたとか。」
「そうですね。ジョーさんの場合、この世界における住民に共通する魔力が存在しないことがかなり目立っていました」
「マジか。異世界生活を満喫できないじゃん」
「はい。魔力欠乏症と言って、この世界では先天性の障がいに当たります。赤ん坊の頃で死亡率は高く、ジョーさんの生まれた世代では、満足な治療は限られているはずです」
「なるほど。早い段階から、変装出来ていた手応えはあったのだけどな。」
「それに腰に巻いてある魔法器具。それは矯正器具を兼ねているのではありませんか?」
「怖いな。その推理力。友人の刑事を思い出した。」
後から聞くと、この時点で話をしていないことも指摘したらしく、素で驚いていたらしい。
ジョーはこれ以上追求をせず、ボットに話題を戻した。
「それでは、本題に入ります」
ボットの話はこういった内容だった。
この世界ホイシャルワールドは、古来より別世界の魂が紛れ込んでくると記録されている。
その魂が宿った転生者は、多大な富や知恵をこの世界にもたらしたという。
その客観的な由来として、“恩恵”という莫大な性能を持つ古代魔法器具がある(ボットが所持しているのは、最近発掘されたもの)。
これはイストール地方にあった大国の指導者が、大変優れた者へ贈られた最上級の品物とされている。 古文書からは、贈られた者の正体が転生者という推測が充分立てられるという。
「そんな転生者の末裔が集まったのが、バルジャック王国だった」
「当時のバルジャック王国は、どこの地方にも属さない孤高の国でした。
資源が乏しい国でしたが、四つの全ての大陸勢力と渡り会えるほどの国家運営は現在も学ぶところがあります」
殿下の言葉にアオは反応した。
分かった分かったと制止させて、ボットは続けた。
「現在、バルジャック王国の名前は悪名高く、声に出すのも嫌われているので忘れてください」
「かの国が、どういったものか理解しました」
ミフは返事した。
そして考えた。
どうしてだろうか。
ジョーがこちらの警戒心を和らげようと、先ほどの茶番を設けてくれたことは分かる。
だが、なぜこの皇子は、ピンポイントでこちらの知りたい情報を伝えてくるんだ?
「ここからは、バルジャック王国の滅亡の理由です。
簡潔に申し上げますが、歴史学者に言わせると、大陸間の抗争や国内部の政争や内紛といった等々が原因として上げられます。
私も一つ一つがそれぞれ筋の入っていると確認しています。
が、知る限りあまりにも突発的すぎる疑惑が多々あります」
「つまり、第三者がその状況へ陥れた者がいると?」
ミフの疑問にコクリと頷いた。
「そこで明らかになったのが、“イシャララ”という存在です。世界で唯一の宗教の神であるという信仰対象ですが、正体はこの世界の魂の監督者と呼ばれる存在です。
丁度、代替わりの時にトラブルがあったらしく、この世界の住民をもてあそぶ鬼畜になった。
その代表例が、異世界転生者に特殊な能力。あなた方にはチート能力を与え、殺し合わせるように仕向ける。異世界バトルロワイヤルの開幕です。それはそれは血ドロドロの戦いで……」
「…………」
「もしかして異世界に転移してきたのは遅すぎたのかもしれないな。って思っていたけど、実は俺たち幸運なのかもしれないな。」
威圧スキルを使ってきたボットに、素直に異世界出身の二人は圧倒された。
「その異世界ロワイヤルの影響が、バルジャック王国への滅亡に導いた訳か……」
「いえ。もっと直接的です」
ボットはそのように断言した。
バルジャック王国は古代の転生者の末裔が治めていたらしい。
ならば、転生者の影響が何かしらあったに違いない。それでは無いらしい。
何だ? と耳を傾けた。
「バルジャック王国は、世界で唯一イシャララとコンタクトの取れるゲートがあったと考えています。それが新しい“イシャララ”にとって都合が悪かった。それで、転生者の魂を管理して行く中で、長期的にバルジャックへ攻撃が仕組むようにしていた」
「……」
ミフは少し考えた後、手を上げた。
「質問良いか?」
「はい」
「その“イシャララ”に会ったことがあるのか?」
「はい。ただ奴らは一つの存在ではありません。多く魂から来る世界の数だけ存在すると言って良いでしょう。私も奴らに借りがあります。倒すべき動機はあります」
「成る程。やっぱり、あいつはロクデナシで違いなかったか」
「良かった。やっとあなたの事を言ってくださいましたね」
ふふふと二人とも笑った。
「そして、ミフさんの現状が大変重大です。イシャララから何かされませんでしたか?」
「釘を身体中に打ち込まれた気がする。」
「そうですか。それは、このホイシャルワールドに留まるためのくさびです。転移者はこの特徴が共通点です。ただジョーさんはそれが無い例外で疑問なところですが」
微妙なところで特別感が出てもな。とジョーのぼやきが聞こえた。
「そのデメリットは何だ? くさびならば、元の世界には帰れないという想像がつくが」
「それもあると思います。後、くさび分の体重の増加とか……それよりも一番は毒だと思います」
「毒? 死ぬことに?」
「はい。私の婚約者もそれにやられました」
ボットはその言葉だけは、頷いた。
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