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91・ここは何処でしょう?(二度目)

ブックマークや感想にて応援して下さった方々に感謝ですm(_ _)m

 

「……ん?……んん!?もがっ!!?」


 唐突に意識が浮上し、半ば『寝惚け』にも近い状態からの再起動により数秒ほど思考に靄が掛かった様な状態となるが、次の瞬間には意識が途絶える直前までの事を思い出し、おそらく今転がされている処が敵(暫定)の拠点かそれに準ずるモノであるのだろう、との当たりを着けて周辺の情報を探ろうと試みる。

 取り敢えず、とばかりに、五感による情報収集を試してみるが、意識を取り戻した時から分かってはいた事だが、どうやら目隠しされた上に猿轡の類いを嵌められて口も塞がれているらしく、視認による確認と声によるコミュニケーションが取れなくなってしまっていた。


 辛うじて手首から先は自由であり、指先で手首を拘束していると思わしき縄(的な何か)に触れる事も出来るので、『技能』によって短剣の類いでも造り出して拘束を解除しようかとも思ったが、周囲の状況も碌に分からない状況である以上、いきなり見張りとして張り付いていた奴に見咎められて戦闘に、と言う事も考えられる為に、拘束の解除は一時保留にしておく。

 幸い、両足も縛られてはいるものの、動かせないと言う訳でもないので、その場から転がってみて周囲からの反応を探ってみたり、手首と指の力だけで這いずり回って今居るここは何なのか(建物の中なのか、外に転がされているだけなのか等々)等の周辺の情報の確保を試みてみる。


 ……ふむ?接している身体の感覚から察するに、どうやら剥き出しの地面ないし土間に転がされている訳では無さそうだね。匂いからして、多分木張りの床で、音の具合等からも考えると、小屋っぽい処にでも放り込まれているのかな……?


 そんな感じで現状を推察しつつ暫しそこら辺をモゾモゾしながら移動し、情報収集を続けていると、


「……む?……ふむ……」


「……ん~?む~、む~!?」


 との呻き声と、どうやら縄を外そうとしてもがいている様な物音が、俺の耳へと届いてくる。


 ……ふむ?どうやら、二人も目を覚ましたみたいだな……。

 なら、合流(?)しておくか。


 そう決めた俺は、呻き声の聞こえてきた方向へと這いずりながら近寄って行く。

 流石に音を立てながらもがいているからか、普段であれば無意識的に消されて判断のしにくい二人の気配も、普段よりも確りとそこに居ると感じられた為、それらを頼りに移動を継続して行く。


 そして、もがいていたタツとレオだと思われる二人の処に到着すると、流石にこれだけ騒いでお咎め無しなら、見張りも居るまい、との判断から『技能』によって造り出した短剣によってまずは自分の手首の拘束を、矢鱈と斬れにくい縄に苦戦しながら解除すると、手探りで二人の内の片方の手を探しだして持たせてやる。

 さすがに、こいつらなら何を渡されたのか分からない、何て事にはならないだろう。

 あと、多分今渡したのは、感触からしてタツの方だね。服の下に仕込みが無い。


 俺から短剣を渡されたタツ(推定)が、自力で拘束を解除しに掛かっていると、ブチブチと言う音が聞こえてきた事から判断した為に、レオと思わしき気配の方へと移動しようとするが、そちらからは既に自身を拘束している縄を切り裂こうとしている音がし始めていたので、おそらく服に仕込んでいた小柄でも使っているのだろうと判断し、そちらは放っておいて俺は俺で自分の拘束を解いてしまうべく、まずは視界を確保するために目隠しをしている帯状の何かに指を掛ける。


 ……何故か、一枚の布や幅広の縄の類いで隠されていた訳ではなく、若干の粘つきによって手や顔にへばり付く様な感触の有る細い糸を何重にも巻き付けられる事によって目隠しとされていたが、その粘りけに悪戦苦闘しながらもどうにか引き剥がす事に成功する。


 そして、妙に頑丈だった手首を拘束していた縄(の様なモノ)や、現在進行形で足やら胴やらに巻き付いている縄(の様なモノ)へと視線を向けてみると、どうやら目隠しに使われていたモノと同じ種類、少なくとも同じ素材で作られていたみたいであり、そちらも僅かながら粘着性を帯びている上に幾本もの細い糸を寄り合わせたモノであったらしく、非常に斬りにくくなっていた。


「……よう、お前ら。これを見てどう思う?」


 そんな縄(の様な何か)の断面を覗きつつ、切り落とすと言うよりもどちらかと言うと『引き剥がす』と言う表現の方が適当になりそうな感じで身体から拘束を取り払いながら、自身の拘束を解除しつつあったタツとレオへと声を掛ける。


「……植物、では無さそうだな……」


「どっちかって言うと~、植物由来と言うよりは動物由来の繊維っぽくないかなぁ~?まぁ~、どちらにしても~、わざわざ人を縛って転がしておく為に使う様なモノじゃあ無い~、って事くらいしか分からないかなぁ~?」


 目隠しと猿轡を外す事に成功した二人がそう返答してくるが、その顔は何だか嫌なモノを連想してしまっている様でもあった。


 ……まぁ、分からんでもないよ?

 粘着性の高い『動物由来の糸』を使い、樹上の梢から俺達を引っ張り上げる程の『筋力』と、俺達以外には気付かれていなかった『隠密性』を兼ね備える、何て生物に心当たりが無いでもないからね?


 ……ただ、だとしたらあの意識を失う直前に聞いた女性の声が良く分からんし、それと同様に、あの時俺に触れていた複数組の手にも説明が付かない様な気がする。

 あと、何で俺達が『拘束される』だけで生きたまま(・・・・・)転がされていた(・・・・・・・)のかの説明も付かないんじゃあるまいか?

 流石に、喋っていた以上は魔物の類いではないのだろうから、殺されて喰われていない、と言う事も理解出来なくは無いが、だからと言って何の目的で俺達を殺さずに生かしたままにしているのか、と言う事にもイマイチ納得が行きはしていない。


 俺みたいに、魔物と共存状態に在る、と言うなら話は早いのだが、特に指示を出していた様な声は聞こえなかったし、何となくソレには違和感側有るように感じられるから、多分違うだろう。

 まぁ、ただ単に、指示にしても仕草の類いで出していたりだとかしたのならば、一応は説明が付くし、俺の違和感にしてもただの勘違いって事もあり得るから、確かなことは何も言えないのだけどもね。


 一応、手掛かりとしては、『活きが良い』云々を言っていた様な気がしないでもないが、だからと言ってそこから推察しようにも情報が少な過ぎる。

 確証の無い推察をした処で意味がないし、下手をすれば逆に不利な立場に追い込まれる事になりかねないのだから、考えるだけ無駄かねぇ?


 取り敢えず、結論を出す事よりも周辺の情報を集める事を優先し、入れられている建物内部をグルリと見回す。


 パッと見た感じでは、ある程度整えられてはいるが、それでも物が色々と置かれている様子から、物置小屋の類いだと思われる。


 ……が、俺達的にはあまりありがたく無い情報として、俺達が転がされていた奥側と、出入口が設けられている手前側の中間地点を床から天井までをぶち抜く様に、木の幹(・・・)の様な(・・・)柱が立っている(・・・・・・・)のが目に入って来る。


 一瞬、木の幹をまるごと使ったインテリアの類いだと良いなぁ、とか思って近寄り、無造作にペタペタと触ってみたのだが、そこから返ってきた感触は明らかに『木材』としてのソレではなく、まだ生きて植わっている『樹』としての力強い生命力に溢れるモノであった。


「……おう、お前ら。残念なお知らせだ」


 そう声を掛けた俺に対し、何となく察していた、とでも言いたげな雰囲気のままに返事をしてくるタツとレオ。


「……それで?」


「『残念なお知らせ』って言うからには~、それなりに重要な情報の類いなんだよね~?」


 そう、何処か諦感を声に滲ませた二人が問い掛けて来るのに対し、俺も絶望感半分自棄半分と言った感じで返答してやる。



「……どうやら、俺達はツリーハウスの中にいるらしい。柱に見えるアレは、触れば分かるが歴とした『生きている樹』だからな、多分間違いは有るまい。そして、俺達が今いるこの小屋がどの程度の高さに建てられているのかは不明だけど、この樹の太さから察するに、最大で十数m程の高さに在るハズだ。

 な?残念なお知らせだっただろう?」



 それを聞いた二人も、俺の予想の通りに一瞬だけ頭を抱えるが、その次の瞬間には気持ちを立て直して倉庫として使われていると思わしき小屋の中を物色し始める。


 ……まぁ、何も情報の無い場所に行った時には、市場を覗くか民家の倉庫や納屋を漁ってみるのが、一番手っ取り早くその場所に於ける情報が集まる(市場では『何が流通している』のか、倉庫では『何をどう使っている』のか、等の情報を集める事が出来る)以上、取り得ない手段では無いのだが、それにしても躊躇するとか罪悪感を覚えながら、だとかの『人情味』を期待するのは間違いだろうか?


「……お前が言うな……」


「……何だかんだ言って~、この手の『家捜し』に一番慣れているのは~、タカじゃ無かったっけ~?」


「失敬な!何時俺がそんな事をしたと言うのかね!?濡れ衣にも程があるだろう!?

 ……ふむ、縄の類いは無いし、俺達を放り込んでいた以上は刃物の類いも無し、か……。

 割りと頻繁にモノの出し入れの形跡が在る以上、この倉庫が予備のモノだったり不要品置きだったりする事は無いのだろうけど、それにしても必需品の類いが無いのは何故だろう……?

 文化的に刃物は使わず、あの縄も各個人で管理している、って事なのか、それともそれらは個人での携帯が常なのか……?」


「……そう言う処、だ……」


「さすがの僕達でも~、そんな箱を数個開けただけでそこまで推理出来る程~、場数は踏んでいないと思うんだけどなぁ~?」


「……市場の食材を見ただけで、その辺一帯の食生活から生活習慣まで予想出来る(タツ)と、住宅街を一周するだけでその国の政治状況やら何やらを把握してくる様な(レオ)に言われたくは無いんだけど……?」


 そう、互いに突っ込みを入れつつ家捜しをしていると、一応のつもりで確認してみた処、鍵を外側から掛けられている事が判明していた入り口の扉の前に突然気配が出現する。


 その気配の現れ方は、あの梢に気配が現れた時のモノと酷似しており、現状と合わせて鑑みてみれば、ほぼ確実にあの時の犯人であろう事が判断出来る。


 咄嗟に『武器創造』の『技能』を使用し、タツには籠手を、レオには小太刀を造り出して投げ渡し、俺自身は適当な槍を造り出して全員で武装化、即席で戦闘体勢へと移行する。


 幸いにも、扉の前に在る気配は一つだけであり、あの時の実行犯であるならば女性のハズなので、取り押さえるにしても排除するにしても、この面子であればそう難しい事ではないだろう。


 ……ただ、一つ腑に落ちない点を上げるとすれば……


「……なぁ、気付いているよな……?」


「……一応は、な……」


「……僕の方でも捕捉しているし~、あんまりハッキリとは聞きたくない事だけど~、取り敢えず『何の事?』って問い返しておこうかなぁ~」


 そう、二人共に顔をしかめて、さも『聞きたくない』とでも言いたげな表情をしてくれているが、それでも共用しなくてはならない情報であろうと予測される為に、俺自身も嫌々ながら口を開く。



「……なんだか、あの扉の前の気配、一つにしては大きくないか……?」



 そんな俺の言葉に、半ば諦めの感情を込めた視線にて『気付かないふりをしていたのに!』だとか、『勘違いだと思いたかったんだが?』だとかの文句を言ってくるが、ソレを俺に言われてもどうしろと?としか言えない為に沈黙を決め込んでいると、入り口に発生していた気配の持ち主が、扉に掛けられていた鍵を外して中へと入って来る。


 それに対応して、俺達も仕掛けようとしていたが、俺達をここまで拐ってきたと思われる『ソレ』の姿を目の当たりにしたことで、飛び掛かろうとした体勢のままに暫し固まってしまう。



 何故ならば、その誘拐犯と思わしきソレは上半身こそは美しい女性の姿をしていたが、下半身は巨大な『蜘蛛』のそれであった。



 その巨体は硬質的な外見かつ鋭利な先端部を備えている八本の脚で支えられており、女性の上半身は丁度蜘蛛の身体の頭に相当する部分から生えている形となっている。

 そして、その女性の上半身の生え際、蜘蛛の身体で言う処の触脚に当たる処から脚と同じ光沢の有る表皮を持つ腕が生えており、女性の頭部には髪で見えにくい為全てを確認出来ている訳ではないが、二つ以上の眼球が存在している様に見受けられた。


 そんな、八足四腕多眼であり、もはや『異形』と形容する以外には無いであろう存在であった彼女だが、不思議と俺の胸腔には『不快感』や『拒絶感』と言ったモノは発生せず、ある種の『調和』とでも表現するべき一体感の現れているその姿に、不覚ながらも魅了されてしまっていた。


 そんな彼女は、俺達が既に自力で拘束を解いていた事に驚いたのか、それとも自分を見ながら固まっている事にこそ驚いているのかは定かではないが、俺達と同じ様に暫しの間こちらへと視線と身体を固定してしまっており、奇妙な『お見合い』状態が発生してしまっていた。


 そんな中、俺達よりも先に正気へと戻ったらしき彼女が、一色を失う間際に聞いたのと同じ声、同じ発音にて言葉を放つ。


「これはオドロイタね。もうスコシ眠っているとオモッテイタけど、もう目覚めたンダ?まぁ、アレだけ活きがヨカッタンダから、そう言う事もアルノカナ?」


 そんな事を呟く彼女は、外見程に非人間的な印象は受けず、どちらかと言うと『理性的』や『知性的』とでも表現するのが妥当そうな雰囲気を纏っている。


 ……これは、流血沙汰は起こさなくても済みそうかな……?


 一応、現状としては彼女は『敵』認定を出しても良い行いをしている(俺達を拘束&誘拐)ので、問答無用で殺しに掛かっても良いと言えば良いのだが、出来れば外見が女性的な生物を手に掛けるのは遠慮したい処である。

 それに、何らかの理由有りきで俺達を拐ったのかも知れないし、逆に俺達が知らない間に彼女らの重大な『何か』を侵したのかも知れない以上、まずは話してみるべきだろう。


 それに、別段俺達は敵と見なせば即座に皆殺し、何て言う何処ぞの蛮族ではないのだから、話し合いで解決出来るのならば、そちらで解決するのに越した事は無いだろう。


 そんな思いと共に、彼女へと声を掛けてみる。


「……なぁ、さっきから『活きが良い』云々とか言っているけど、俺達をどうするつもりで拐ってきたんだ?」


「……俺達が、何かやらかした結果と言う事ならば、言ってもらわねば判断がつかん……」


「何かしらの協力が必要だったのなら~、出来る限り協力するからさ~、出来たら教えてもらえないかなぁ~?」


 そう問い掛けつつ、最悪の場合に備えて気付かれない様に得物を構えている俺達に向かって、彼女は事も無げに言い放った。



「……お前らをサラッテキタ理由?そんなものキマッテいる。私達はソロソロ繁殖期ダカラナ、そのタネツケ要員として拾ってキタンダ。『協力する』とイッタイジョウは大人しくしてクレルト、タガイニ面倒が無くてヨイと思うから、大人しくシテオイテクレナイカナ?そうすれば、痛くシナクテスムから」



 ……それを聞いてしまった俺は、話なんてしないでさっさと倒してしまうべきだったかな?と若干後悔するのであった。

拐った犯人と目的の予想は当たりましたか?

彼女らの『種族名』だとか『特性』だとかは次回にて紹介する予定です


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変ありがたいですm(_ _)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりアルケニー、繁殖目的だったw 彼らの祖父並み(以上?)の拘束術w タカ達だって地球では抵抗を試みたハズでこちらでは身体能力全般が上がっているのを簡単に拘束したんだから。 蜘蛛って餌を…
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