89・次の行き先を決めてしまいます
ブックマークにて応援してくださった方々に感謝ですm(_ _)m
今回少々短めになっております。
獣王ルプスとの謁見を終えた後、やっぱり他のモフモフと触れ合った事が匂い等でリル達にばれ、拗ねてしまった彼らの機嫌を取る為にほぼ丸一日費やしてしまい、謁見を終えてから二日程経過しているのだが、俺達は未だにレオンハルト家にてお世話になっていた。
あの依頼を受ける直前まで出立を視野に入れていた俺達が、何でまだそんな処でグズグズしているのか、と言うと、誠に遺憾ながらその原因は俺達にあった。
「……言われてみれば確かに付いているみたいだけど、そんなに大事なの?小鳥遊君」
レオンハルト家の居間にて集まった俺達の目の前には、俺の相棒である『朱烏』が鎮座されており、今それを持ってまじまじと眺めていた乾が不思議そうな顔をしながら俺へと問い掛けてくる。
「正直、私はこの手のモノの価値はよく分からないし、この程度……って言っちゃうと不快かも知れないけど、でもこんなに小さな傷一つでそんなに神経質になる必要が有る事なの?」
そんな、あまり明るく無い分野に対する疑問そのもの、とでも表現しても間違いでは無いであろう乾の質問と、元より武術を嗜んでいなかった為に事の重大さを理解出来ていない女性陣や、嗜んでいたのであれば理解出来たハズの女性陣も含めて、乾と同じ様な表情を浮かべていた事に軽く頭痛を覚えながら、俺にとっては如何に重大な事態であるのかを説明して行く。
「……まぁ、正直、この程度の傷一つで何を騒いでいる、って思っているんだろうけど、コレって俺だとかこいつらにとっては、割合と死活問題に直結していると言っても間違いでは無い事柄だからね?」
そう言いながら、直前まで乾が手にしていた俺の相棒を手元に引き寄せると、その穂先の中程に出来てしまっている長さ一㎝程の傷を指先でなぞる。
……済まんなぁ、俺が未熟だったばっかりに……。
そんな思いと共に、相棒を労る様に指先で撫でる俺の姿と、感慨深そうに頷いているタツとレオの姿を見た女性陣は、元よりこの世界にて戦闘に携わっていたアストさんとサーラさん達『獣人族』以外は皆一様に驚愕の表情を浮かべていた。
……だが、それもやはり無理もない事なのだろう。
何せ、彼女等は基本的に元の世界では『武術』に触れる機会なんてかけらも無かったハズだし、仮に久地縄さん達の様に触れる機会が有ったとしても、一振りの得物に己が全てを託す、と言った様な事をせざるおえない様な状況にはそうそう成り得ないのだから、俺の言い分を理解出来なかったとしてもある意味当然と言うモノなのだろう。
そんな女性陣へと、多分理解はされないんだろうなぁ……なんて思いながら、取り敢えず説明してみる。
「……ぶっちゃけた話をすれば、武器や防具って言う物は、基本的に消耗品である、って事は理解しているよな?」
手始めにそう問い掛けた俺の言葉に、『まぁ、その程度は……』と言った感じで頷く女性陣。
それを確認した上で続けて問い掛ける。
「そして、その『消耗品』の立場に在りながら、必然として発生する『損耗』を最低限に抑え、一定以上の水準にて強固さと性能の高さを備え持つ物を、一般的に『逸品』だとか『業物』だとかと呼称する、って事も、頭に入っているよな?」
それに対しても、先程と同じ様に頷いて肯定してくる女性陣。
「……で、その『逸品』や『業物』の類いを、平気で使い潰す程に武器への負担を強いるのが、俺の修めている『飛鷹流』でね。当然の様に、武器へと負担を掛けない様に扱う方法等も流派に組み込まれているのだけど、それを使った上でもなお強烈な負担を強いるので、余程の『業物』でなければそもそも使い物にならない、と言う事を前提として覚えておいてもらって良いかね?」
そう前置いて相棒へと手を伸ばすと、何時の間にかタツとレオまで各自の得物を取り出していた。
「そして、その『余程の業物』に該当するのが相棒なんだが、こうして僅かながらでも傷や罅が入った状態のままで使っていると、そう遠くない未来で必ず壊れる。そうなると、俺の『技能』でまた相棒を造れるか分からない以上、実際にこわれてしまっては俺の戦闘力がガタ落ちする事になるから、それは可能な限り避けたい」
「……俺の『龍鱗』も、そろそろ本格的な手入れをせねば、致命的な欠損を起こしかねん」
「僕の『虎爪・狼牙』にしても~、そろそろ拵えだとか~、僕じゃあ手入れしきれない処何かにガタが出始めちゃってるからね~。そろそろ~、プロに整備をお願いしたい、って訳なのさ~」
そう説明を終えると、皆一様に納得したような表情を浮かべる女性陣。
「……成る程、確かにそれは急務だよね……」
「先生も、最近はあの大弓(リンドヴルムからのドロップ品)以外だと下手をすると壊しちゃう様になってきたから、なんだか分かる様な気がする、かな?」
「オレは基本鉄塊しか使わないからよく分からないけど、そんなもんなのか……?」
「……確かに、拙も実家の関係で『業物』と呼ばれるモノと触れ合う機会が有りましたが、こうして見てみればこの小鳥遊殿の一振りがそれらと比べて遜色の無い……いや、それらよりもなお上位に在るモノである事は理解出来ます。
しかし、このランクの『業物』をして『消耗品』と位置付けるとは、やはり途徹も無い流派であると言えるでしょう、ね」
「……ん。悔しいけど、私じゃあ一生掛かってもそこまで酷使出来るレベルにまだ無い」
「……音澄さんは、少々張り合う処が違う様な気がしないでもないですが、流石に私でも、このクラスの『業物』が必要になる程の方が、この状態の得物を振るえばどんな結果が産み出されるのか程度であれば、想像出来なくは無いですわ」
「た、確かに、何時壊れるか分からないモノは、あ、危なくて使えないですからね」
それまでは反応の鈍かった女性陣にもどうやら理解して貰えたらしく、皆納得したような表情を浮かべている。
そんな彼女らに対して俺達は、互いに視線で示し合わせると、俺達の現状も鑑みた上でこう切り出してみる。
「……と言う訳で、俺達の現状は理解して貰えたと思うから、その上で提案させてもらいたいのだけど、次の目的地はこいつらの修理が行える様な処にしたいと思っているんだが、ダメだろうか?」
そんな俺の問い掛けに対し、援護するかの様にタツとレオからも言葉が発せられる。
「……正直、こいつが無いままでの戦闘は、得物を使い潰しながらになるだろう。それでは、札束で殴っているのと大して変わらん」
「他に行きたい処が有ったりだとか~、何か外せない用事が有ったりする場合は考慮するけど~、ぶっちゃけ現状で戦闘力が低下したままでいる方が~、危険度が高くなりかねないから~、なるべくこちらを優先して貰えると助かるかなぁ~?」
「あぁ、もちろん、一旦魔王国には帰るつもりでいるから、そこら辺を心配している人も安心してもらって構わないからね?」
一応、反対意見も覚悟した上での提案だったのだが、どうやら皆からの理解を頂けたらしく、特にそう言う意見はでないままに承認され、取り敢えずは魔王国を経由する事まではスムーズに決定した。だが……
「じゃあ、取り敢えずはそう言う方向で行くとして、誰かこいつらの手入れや修復、最悪打ち直しまで任せられる様な鍛冶屋か鍛冶師、もしくはそれらの在りそうな場所の心当たりが有ったりする人は居るかね?」
そう問い掛けた俺の声に、皆一様に視線を反らす事で沈黙のままに返事の代わりとしてきた。
……うん。まぁ、今まで基本的に必要が無かったからね。そりゃ知らないだろうさ……。
「……お前さん達はどうだ?何かしらは調べていたんじゃないのか?」
そう二人に話を振ってみるが、二人ともに苦い顔をしながら、答えにくそうに口を開く。
「……一応、この辺りの鍛冶屋は覗いてみたのだが……」
「……正直に言っちゃうと~、あんまり任せたいと思える様な腕の人はいなかったかなぁ~……。この国の形態上~、仕方の無い事なのかも知れないけど~、やっぱり必要なモノは『作る』よりも『買う』方に意識が傾いているみたいだから~、工業系は建築以外は並程度だねぇ~」
……まぁ、仕方無い、か……。
ここ獣人国は商業国家でもある側面を持つ関係上、どうしても消耗品のだが類いは『良い物を作る』努力をするよりも『安く仕入れる』努力をする方がより容易に結果を伴えてしまう為に、他の国よりもその手の工業系が育ちにくい土壌が出来てしまっているのだろう。
「……正直、ここの鍛冶屋に任せる位であれば、魔王国で店売りの品を使う方がまだマシだろう」
「必要が無かったから~、そこまで詳しくは見ていなかったけど~、鍛冶のレベルで言うなら多分魔王国の方が上かなぁ~?それでも~、下手な処で弄られるんだったら~、取り敢えず使わない様にして大人しく『迷宮』で出てきたモノを使うって手も~、無くはないのかなぁ~?」
……おいおい、そこまでか?
流石に無いよね?との思いも込めて、サーラさん達へと視線を向けてみるが、三人ともに悔しさ半分恥ずかしさ半分、と言った表情を浮かべたままに、沈黙を保っている。
……あぁ、自覚は有ったんですね……。
何だか哀れに思えて来た俺だったが、それはそれとしても取り敢えずの候補地位は決めておきたかったので、先程から俺に熱い視線を送り、軽く目が合えば『私に心当たりが有ります!』とでも言わんばかりな表情にてアピールして来ていた人物へと話を振ってみる。
「……と言う訳で、俺達の方からは良い意見が出せなかったんですが、何か良い候補地とかは無いですかね?アストさん?」
「はい!もちろん♪」
そう、なにやら楽しげに答えたアストさんは、少々緩みかけていた表情を引き締めると、まるで『出来る女!』とでもアピールするかの様な雰囲気を纏いながら、こう続ける。
「『妖精族』達が治める国家、『妖精国アルフヘルム』であれば、タカナシ殿達が求める鍛冶師も、きっと見付かる事でしょう。あの国は工業技術が売りですし、何より『ドワーフ』の鍛冶師が山程居ますからね。中には偏屈で気に入った相手にしか打たない、と言う職人も居るとは聞きますが、腕は基本的に『国が保証している』そうなので、行くだけでも行ってみる価値は有るかと思いませんか?」
その言葉を聞いた俺がタツとレオを含んだ皆へと視線で『どうする?』と問い掛けてみると、満場一致で肯定の意が返ってきたので、何故か議長的な役割を毎度やることになってしまっている俺が、この場を締める為にも言葉に出して結論を伝える事とする。
「……じゃあ、取り敢えず行ってみようか?その『妖精国アルフヘルム』へ」
……まぁ、魔王国経由で行けるのかは知らないけど。
取り敢えず第三章はこの話かこの次の話でお終いにして、その次から第四章を始める予定です。
まだまだ続く予定ですので今しばらくお付き合いお願い致しますm(_ _)m
面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(_ _)m




