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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第三章・獣人国編

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78・おや?何か出た様です

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(__)m

俺が鎖を断ち斬り、拘束から解放する際に誘い掛けた事により、どうやら俺と行動を共にする事を了承してくれたらしきフェンリル種の『ソレ』は、返事の代わりに俺を一舐めすると、それまで拘束されていた為に碌に動けなかった事によって溜まった鬱憤を解消する為か、そのモフモフの尻尾を機嫌良さそうに振りながら、ボス部屋の中を走り回っている。


『……主殿よ、お主、一体何を目指しておるのかのぅ?龍たる妾や神鳥(カラドゥリウス)を従えるだけでなく、人の分類では妾達と同じ『古代種』に当たるフェンリルまで配下として引き入れるとは、本気でこの世界を焼き払うつもりでも有るのかのぅ?

まぁ、妾は『やれ』と言われてもやらぬがのぅ』


「……つまり、やろうと思えばやれる、って事ですかね?リンドヴルムさんや?」


『……元の身体であったのならば、出来ぬ事でも無かったかのぅ?

……それで?結局どうするつもりなのか、聞かせて貰えるかのぅ?』


茶化して流そうとした俺の試みは失敗したらしく、真剣な表情で俺を見詰め続けるリンドヴルムの視線に負けた……訳ではないが、それでも多少居心地が悪くなった事もあり、この場は正直に口を開いておく。


「……『どうするつもりか』と聞かれても、俺から返せる答え何て一つしか無いんだがね?


『どうするつもりも無い』


……だって、考えても見て欲しいんだけど、お前さんと主従(こう言う)関係になったのは、ほぼ偶然だった、って事は分かっているだろう?」


『……まぁ、狙って出来る事でも無いしのぅ』


「だろう?カーラの事にしても、あいつを見付けたのは偶然だったし、助けようとしたのもあいつの羽毛がモフモフしていたから、ってだけで、あいつがあそこまで俺になついてくれる何て、思っても見なかった事だからね?」


『……言われてみれば、確かにそうなのかも知れぬが……』


「そんでもって、最後にフェンリル種のあいつだけど、確かにあいつは下心有りきで誘ってみたけど、実の処割合と駄目元だったからね?ここを出られたら、たまに遊びに来てくれる程度の関係に成れたら御の字かな?程度に考えて誘ってみたら、こうなった、ってだけだからね?

おまけに、その『下心』だって、あの最高クラスのモフモフを、もっと安全かつ安心出来る環境下で心行くまでナデナデさせて貰いたい、って事なんで、別段戦力として~、だとか、希少種だから~、とか、素材目当てで~、何て理由じゃないんで、そこの処よろしく」


『…………そう言えば、主殿はその手の欲望は持っておらなんだったかのぅ。本に欲の無い()の子よのぅ……』


「無い訳じゃあないけどね?」


そんな風に話し合っていると、ボス部屋の中を走り回っていたフェンリル種のあいつが、俺達の元へと戻ってくる。


テッコテッコと歩きながら、耳をピン!と、立てて尻尾をユラユラと揺らしている様から察するに、それなりにストレスは解消出来たのだろうと推測出来る。


……しかし、今になって思ったが、これから行動を共にしようとしている相手なのに、一々『フェンリル種のあいつ』だとか呼んでいるのは不便だし、何より関係性に壁が有るように感じられるからあまり好きくない。



……取り敢えず、名前付けるか。



「お前さん、名前とか何か有ったりするのかね?」


久方ぶりの運動により、ややテンション高めになっていたそいつの鼻先を撫でながらそう問い掛けてみる。


しかし、その返答として返って来たのは、首を傾げながらの


『ワフン?』


と言う、如何にも『何ソレ?』とでも言いたげな、とても可愛らしいアクションだけであった。


あまりの愛らしさに『あらやだ、可愛らしい』と半ばオカマっぽい感想を抱きながら、思わずモフり倒しそうになったが、そこは理性で衝動をグッと堪えて我慢する。


「……無いみたいだし、俺が着けても良いかね?」


『ワゥン!』


ただ吠えただけの返答につき、正確な意味合いは読み取れないが、それでもそのキラキラとした円らなお目目や、期待からワサワサと振られている尻尾等の反応を鑑みるに、恐らくは嫌がってはいないのだろうと予測出来た。


なので、俺の方で勝手に着けさせて貰う事になったのだが、さて、どんな名前を着けたモノだろうか……。


外見的には、ドが付く程に大きな、蒼白色でモッフモフな見事な毛並みの狼、って感じなのだが、その目を見てみれば、野生の狼どもと比べると、どちらかと言えば『険しさ』や『凶暴性』が薄れて、『優しさ』や『知性的』な印象を先に受ける。


それ故に、狼王(ロボ)と着けるには野性味が足りない気がするし、逆にポチやらタロウやらは似合わない気がする。


……さて、どうしたモノだろうか……。


そう、頭を悩ませる事数分。


まぁ、取り敢えずはコレで良いかな?と言うのが一つ浮かんだので、間に合わせとして着けさせて貰う事にする。


「……取り敢えず、俺は君を『リル』と呼ぶことにするよ。嫌なら言ってくれれば、後で改めて着けさせて貰うから、それまで我慢してくれないかな?」


……コレで、嫌だ!って反応されたら嫌だなぁ……。


何て考えたりもしたのだが、『リル』の反応を見る限りだと嫌がっている雰囲気は感じられない処か、どちらかと言えば嬉しそうにテンションを上げている様子が見られた為に、暫定的に名称を『リル』にする事になった。


半ばハイテンションなワンコと化しているリルを目の当たりにし、思わず心をホッコリとさせていたその時、ボス部屋の入り口対面に位置していた『迷宮』の『核』が嵌まり込んでいた壁の方から、突然強烈な光が放たれると同時に、何やら強烈な気配を感じさせる『何か』が急に現れたのであった。





******





タカがボス部屋にて謎の現象と直面していた時、丁度五十層の掃討を終え、次の階層へと移動した直後の彼らの前でも、通常では有り得ない事が発生していた。


「……どうなっている……?」


「今までは起きて無かったけど~、もしかして普通に起きうる事なのかなぁ~?こうして~、魔物が(・・・)こちらを(・・・・)無視して(・・・・)移動する(・・・・)何て事は~、割りと有ることなのかなぁ~?そこの処アシュタルトさんはどう思いますか~?」


「……いえ、私も『迷宮』の攻略は何度か行った事が有りますが、こんな事は経験した事も、聞いた事も有りません。お言葉を借りる様ですが、『割りと異常』な出来事ですね……」


そう、それまでは、彼らに気付けは即座に襲い掛かって来ていた魔物達が、彼らが目の前に居り、戦闘を開始していたにも関わらず、その場で背中を向けて逃げ出したのである。


……これは、目の前の敵をひたすらに襲う事しか組み込まれていない、『迷宮』で産み出された魔物には通常有り得ない出来事であった。(『迷宮』の外の魔物の場合は、自己判断で逃走する事が有る)



そんな、それまでの『通例』から判断すれば『異常』以外の何物でもない事態に一行が警戒心を顕にしていると、彼らの前方で突然に強烈な光が発生し、それと同時に何か(・・)の気配が二つ(・・)そこに現れた。



それらは、それまでこの『迷宮』では遭遇したことの無い程の存在感を放ち、そこに居るだけで周囲を圧倒する程の威圧感を感じさせる、後ろ足だけで歩行する四腕の獅子の様な外見の魔物と、背中に翼を生やした双頭の虎の様な外見の魔物であった。


……そして、それらが出現するのと同時に、今回の『迷宮』探索に於いては初めてとなる、全力での戦闘体制(・・・・・・・)へと移行するタツとレオ。


「……これは、ちと洒落にならん、な……」


「……アシュタルトさん。悪いんだけど、彼女ら連れて下がっていて貰っても良いかな?

……あいつら相手だと、誰かを守りながら完勝する、って言うのは、ちょっと無理っぽいから、さ……」


そんな、『本気』を通り越して最初から『全力』で事に掛かろうとする二人の姿を目の当たりにし、反射的に飛び出しそうになった『私も加勢します』との言葉は、終ぞ発せられる事の無いままに仕舞い込まれると、保護を依頼された他の面子へと後退を促し、自らも彼女らの護衛として一緒に下がって行く。


「……さて、では殺るか……」


「……正直、タカも居ない状況の上に、お世辞にも万全とは言い難いコンディションでこのクラスの相手とはあまり殺り合いたくないんだけど、そうも言ってられないみたいだから、ね……」


そう、溢す様に呟いた彼らの額には、他の面子が居た時には流れていなかった『冷や汗』が一筋流れるのであった。





******






「……グゥッ!!?」



咄嗟に盾にした左腕から発せられたメキメキと言う音を聞きながら、受け流し損ねた衝撃に逆らう事なく吹き飛ばされて、『ソレ』との間に距離を取る。


『主殿!?無事か!?』


『ワゥン!?』


「俺の方は良いから、そっちに集中していろ!」


リンドヴルムとリルから掛けられたこちらを心配する様な声に対して、半ば怒鳴る様に生存を告げるが、あまり状態はよろしく無い、としか言い様が無いだろう。


リンドヴルムから移植された過去を持ち、その影響で呆れる程の耐久性を持っているハズの左腕でガードしたハズなのに、どうやら先程の攻撃を受けた事により骨にヒビが入ってしまっているらしく、上手く力が込められない。


俺からの反撃を警戒してか、自ら飛び込んで来る様子を見せない『ソレ』から目線を外さずにリンドヴルムとリルの方を窺うと、そちらはそちらで大量の魔物を相手に大立ち回りを演じている。


……何故こんな事になっているのか。


その理由は至極単純。


あの突然の光の直後に、俺が今相対している魔改造された熊みたいな魔物(熊をベースに色々とくっ付けたみたいな外見だが、合成獣(キメラ)と表現するには熊の成分が強すぎる様に見える)が光の中から現れ、俺達を積極的に排除しようと攻撃してきたのだ。


最初は全員でその熊モドキを相手にしていたのだが、それが始まってそこまで経たない内に上の階から魔物の群れが殺到してきて、俺達へと襲い掛かって来たのである。


その為、それらに対処するために、こうして俺が熊モドキの相手を一人で務め、他の魔物をリンドヴルムとリルに相手しておいて貰う事となったのである。



……のであるが、正直、現状としてはあんまりよろしく無い。



満足に食事も睡眠も取れていなかった事による疲労の蓄積と、それまでは保てていた『数的な優位』が脆くも消え去ってしまった為に、こうして『全力』を出して戦っているにも関わらず、『良いの』を一発貰ってしまった訳なのだ。

幸いな事に、辛うじて左手を盾にする事で戦闘不能に陥る事は防げたが、それでも本来であれば貰わずに回避出来る(・・・)ハズだった攻撃なだけに、本来発揮出来たハズの動きを再現出来なくなりつつある事に少なくない危機感を覚えながら、左腕の治療の為に腰のポーチから回復薬(ポーション)の入った瓶を取り出そうと試みる。


すると、その俺の動きに合わせるかの様に、それまでこちらを窺っているだけだった熊モドキが動きを見せ、まるで『回復なぞさせん!』とでも言いたげな程の剣幕で、俺目掛けて突っ込んで来る。


流石に、こいつ程の重量を誇る相手(大型の羆が子供に見えるサイズ)を片手で受け流すのは無理が有るので、多少ダメージを貰う事は覚悟の上で、突進に合わせて動きながら回復薬(ポーション)を煽る。


当然の様に、回避を選択した俺へと動作を修正しながら突っ込んで来た熊モドキの攻撃を、今回はクリーンヒットはせずに済んだものの、それでもやはり掠める程度には受けてしまい、その爪によって傷が刻まれると同時に、若干であれども体勢が崩されてしまう。


が、こちらも追加の負傷を見越しての回復薬(ポーション)の使用だった為に、負傷に伴う多少の出血による失血以外は、特に後に影響の出る様なモノは無かった為に、崩されかけた体勢を瞬時に直しながら、相棒を改めて構えて熊モドキへと向き直る。


しかし、そこまでの流れを予想していたのか、それとも最初から先程の突進はフェイントだったのかは定かではないが、俺が後方へと駆け抜けていったハズの熊モドキの方へと向き直った時には、既にヤツは攻撃の準備を終えており、俺の近くでその腕を振り上げて爪を光らせていた。


……流石に、それを食らうのはマズイ!


そう、本能的に直感した俺は、その場から練気を含めた全力で後退り、半ば無理やりながらも急速に距離を離す。


そして、その次の瞬間には、それまで俺が居た場所にその豪腕が振り下ろされ、俺ですら破壊するのに苦労する『迷宮』の床材を、意図も簡単に粉砕して見せたのであった。


だが、どうやらその一撃が所謂『渾身の一撃』であったらしく、自らの手の下で俺がひしゃげていない事を不思議に思っているのか、振り下ろしたその手を上げて、顔の前に掲げてマジマジと観察している。


……どうやら、俺の事を舐め腐っているらしく、完全に俺本人の事は頭から抜けている様に見受けられる。

……ならば、今が好機と見るべきか!


俺は、先程全力で後退った事で発生した距離を、今度は『縮地』も併用する事で一瞬で詰め、熊モドキの懐へと侵入する。


そして、何か反応を返されるよりも先に渾身の一撃を叩き込むべく、適正範囲内に入った直後に急制動を掛けると、それまでの勢いを足から腰に、肩に、そして腕にと伝えて行き、手の中で得物を滑らせて加速させる『抜き』の技術を使用する事で、更なる加速を加えた超速の奥義である『天穿ち』を熊モドキの胸元へと叩き込んでやる!


……この熊モドキがどんな存在かは、正直よく分からない。

だが、瀕死だったとは言え『龍』であったリンドヴルムに止めを刺した一撃を、回避の仕様が無い状況で叩き込んでやれば、流石にどうにかなるだろう。

そう確信しての行動であった。



……だが、その『確信』は、熊モドキが咄嗟に振るった爪が、俺の相棒の穂先と同じ様に空気の壁を突破しながらソレを捉えて弾き、渾身の一撃を放った事によってガラ空きになっていた俺の胴体へと、逆側からの腕の一撃がめり込み、されるがままに吹き飛ばされて壁に叩き付けられるまでの、短い間しか持たなかったのであった。



……マジ、かよ……。


胴に貰った一撃により内臓を、壁に叩き付けられた事により何本もの骨が砕かれる中、何処かそれらの感覚から解離した様な状態で、嫌に冷静に現状を打破する方法を考える。


戦闘への復帰……命の水(エリクサー)の瓶は無事らしいので、復帰は可能。


戦闘の続行……不可能ではないが、現状では戦力が足りない。


戦力に復帰した場合の勝率……現状ではほぼ0。リンドヴルムとリルと連係出来たとしても、勝率は僅か。


……では、勝利し、生存する方法は皆無なのか……?















……否!



その答えが脳裏に浮かんで来ると同時に、壁へと叩き付けられ、全身に出来た裂傷から血を噴き出すだけであったハズの身体が、大きく『ドクン!!』と脈動した様な気がしたのであった……。





******





小鳥遊(たかなし)が謎の脈動を感じたのと時を同じくして、『ソフィア』世界に於いて絶対的な五つの存在が喜びの声ならざる声を挙げ、以前その座に在った小さな存在が、その口元を半月の形に歪めていたのだが、その事を知るモノは、今の処存在していない。

主人公、絶体絶命!?果たしてどうなる!?


面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援していただけると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[一言] フェンリルかー、パンダを予想してたんだけどw タカ、進化薬どこにヤったっけ?
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