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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第三章・獣人国編

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76・おっと、何処かで見たような……

ブックマークや評価にて応援してくださった方々に感謝ですm(__)m


「ハァァァァアアア!タァ!!」


それなりのスペースが広がっている通路にて加速し、その巨体による重量と槍の鋭さで『迷宮』内の魔物を貫くが、一撃では威力が足らずに仕留める事が出来なかったらしく、スレ違い様に前足でブレーキを掛けて急停止し、後ろ足で蹴り上げる事でようやく一体の魔物を倒す事に成功するサーラ。


「シッシッ、フッ!!」


その横では、『獣人族(ベスタ)』特有の身体能力で敵をかき回し、細やかに傷を与えて動きを鈍らせてから両手の短剣にて止めの一撃を放ち、魔物を討ち取る事に成功したシンシアと、


「シャァァァァァァァア、てぇりゃあ!!」


その長大でありながら、その実構成しているのは九割方が筋肉である下半身をしならせて上体を打ち出し、普段の様子からは想像もつかない程にパワフルな肉弾戦を繰り広げ、最後には下半身による鞭の様な打撃にて敵を叩き潰したサーフェスの姿があった。


かくして魔物との戦闘を終え、大した負傷も損耗も無い状態で勝利する事に成功した彼女らだったが、その表情には勝利の爽快感も、戦闘の興奮も残ってはおらず、ただただ自分達の無力さ、非力さを呪う忌々しそうな表情だけであった。


「……もう、か。

……もう、なのか。

……某達は、こんなにも早く『壁』に当たってしまうのか……」


「……本当、早すぎるよね。『一撃の壁』に当たっちゃう何て、もっと後なら良かったのに、ね……」


「……私もぉ、もう少しはイケるかと思ってたんだけどぉ、こうまで早いと自信無くすわぁ……」


そう、嘆く様に彼女らが溢す『一撃の壁』とは、『迷宮』に潜る事を専門的に行う冒険者達の隠語で、意味合いとしては『適正階層の限界』として使われている。

『適正階層』とは、『迷宮』に潜った冒険者が『無理の無い範囲で行動する限り、危なげ無く帰還できる』階層の範囲の事であり、それらの基準の一つとして、『出てきた魔物を一撃で倒せるか否か』と言うモノがあり、それが出来なくなる階層の事を『一撃の壁』と呼んでいるのである。


もちろん、この『一撃の壁』と言われるモノは無視しようと思えば簡単に無視出来る。

先程の戦闘を見れば容易に理解出来るだろうが、彼女らは別段、魔物を倒せなくなった、と言う訳ではない。まだ二撃もあれば十分に敵を倒せるし、その間に敵から攻撃を貰って負傷した訳でもないのだから、その気になればもっと下の階層まででも潜る事は可能であろう。



だが、彼女らが目指すべき階層を考えると、そうも言っていられないのだ。



彼女らが目指すべき階層は、未だにはっきりと『何階』だとは分かっていないが、それでも潜る程に強さを増して行く事を考えると、まだ『30』しか階層を数えておらず、既に潜り始めてから二日目が終わろうとしている現段階で、既に一撃で敵を葬る事が叶わなくなり、一回一回は僅かな時間であれども、目標として『各階層の殲滅』を設定している以上、無駄な時間(・・・・・)を浪費する事が確定してしまっているのだ。


その上、今はまだ二撃も有れば魔物を倒せている為に、比較的時間のロスは少なくて済んでいるが、そこまで遠くない未来に置いては、その『倒すのに必要になる攻撃』が、二撃から三撃、三撃から四撃、五撃、六撃、と増えて行くのは決まっているし、それだけの手数が必要な相手であるのなら、必然的にそれらを打ち込むのにもそれ相応の時間が掛かってしまうだろう。

更に言うならば、それだけの手数が必要な相手が、一方的に攻撃を受けるままになってくれる訳もない為に、必然的に負傷も増えてくる事が予想される。


……そう、既に彼女らは、自分達が足手まといになりつつあることを理解しているのだ。


現に、タツとレオはある程度手加減して戦う程に余裕を残しており、このレイドで一番冒険者ランクが高いアシュタルトも、魔法を温存してもなお一撃で相手を葬り去る事を可能としている。

そして、サーラ達よりも冒険者ランクの低い乾達にしても、既に割合と本気で戦っている、と言う点に目をつむる(既に余裕が無い、とも言える)ならば、既に自分達が叶わなくなっている『敵を一撃で倒す』と言う行動を、未だに取り続ける事が出来ているのだ。


……この集団の中で、自分達が一番弱い。


恐らくはそうなのであろう、と言う自覚は有ったが、それでもこうして眼前の事実として突き付けられれば、少なからずショックを受けるのは当然であり、無力感に襲われるのも、また仕方の無い事なのかも知れない。


しかし、そうやって沈んでいた彼女らに、タツとレオの二人が声を掛ける。


「……甘ったれるな、とは言わない……」


「流石の僕らでも~、元の世界で武術の『武』の字も碌に知らなかった様な彼女らが~、ああまで高度な戦闘力を~、大した訓練も無いままに振るえるようになっている事には~、思う処が無いでも無いからさ~?

タカはそうでも無いみたいだけど~、僕達からしてみれば~、血ヘドを吐く程の修業も~、人間性が壊れる程の修練も無しにあんな事をされちゃ~、あまり面白くは無いし~、流石にどうかと思わなくも無いよ~?

……でも~、この一刻を争う様な状況で~、自身を哀れむのは止めてくれないかなぁ~?実際足手まといって事もあるけど~、それ以上に『不快』だから、さぁ~?」


「……下を向くな、前を向け。でなければ、その足は二度と前には進めなくなる。

……立ち止まるな、足を引き摺ってでも前に行け。そうすれば、何時かはあいつらも追い越せる。

…………そのどちらも無理だと言うのなら、悪いことは言わんから、今のうちに上に帰れ。これ以降は邪魔になるし、俺達とて守ってやれるか分からん」


……それは、一見悪態にも見えるが、二人を知っている人間からすれば、確かに激励の言葉であった。

……それは、一見邪魔者を切り捨てる為の発言にも思えるが、確かな気遣いが感じられる言葉であった。


『項垂れている場合か?』と。

『今優先するべきは何か?』と。


確かにそう問い掛けて来るその言葉に、諦めによって折れそうになっていた彼女らの膝に再び力がみなぎり、うつむきそうになっていたその顔が再度前へと向けられる。


「……いや、某は、某達は、まだ戦える!自らの主を、『愛しき』主を地の底の地獄に放置したまま、おめおめと地上に逃げ帰るなど、出来るはずも無いだろう!『一撃の壁』なぞ何するものぞ!某は、貴殿方に『邪魔だ』と言われたとしても、主様を迎える為に行かせて貰う!!」


「……そう、だね。うん。タカ様は、ボクの主って訳じゃあ無いけど、それでもボクらがこうして生きていられるのはタカ様のお陰だし、ボクの実家のゴタゴタで迷惑もかけちゃってるからね。ご主人と引き合わせてくれた恩もあるし、是が非でも助けには行きたいかな?実力が足りない、ってことは解ってるから、最悪『肉壁』にされる程度は覚悟出来てるよ!」


「私もぉ、こうして元の身体を取り戻してくれた事に感謝しているしぃ、何より旦那様に出会わせてくれた事だけでもぉ、私の命を掛け金にする事位は余裕で出来るわぁ。……もっともぉ、こう言う時に命位張らないとぉ、あの方に受けた『恩』を返しきれる気がしない、って事も有るのだけどねぇ?」


そう、タツとレオへと言い放った彼女らの表情には、もはや乾達に対する羨望や妬ましさは存在しておらず、如何にしてこの先戦うのか、どうすれば戦い抜けるのか、を予測し思考する『戦士』の顔が並んでいるのみであった。


そんな彼女らの表情を一通り眺めた二人は、何処か安堵した様な雰囲気を微かに漏らしながら満足そうに頷き合うと、既にこの階層の残りの魔物を殲滅し終えていた他の面子へと集合の合図を出すと、次の階層へと繋がる階段の前で順番に仮眠を取るための長休止を行うのであった。





******





悪意満載の開幕落とし穴により、初っぱなから仲間達と分断され、敵として登場した時はともかくとして、現在ではすっかりペットポジションにいるリンドヴルムのみをお供に、元『試練の迷宮』ボスのリンドヴルムの感覚では『百層』辺りであったらしき階層から、仲間との合流を目標に下の階層へと下って行っていた俺なのだが、その途中途中で雲蚊の如く沸いて出てくる魔物を相手に、これまで無かった様な『苦戦』を強いられている。


「……えぇい!次から次からキリがない!おら、『風切り』!『風切り』!もう一丁『風切り』!!」


俺が投擲した槍により、俺の背丈の倍は有ろうかと言う巨大な熊の魔物が三体、それぞれ眼窩から脳を、立ち上がった処で心臓を、四足のまま口から内臓を突き通されて串刺しになり、ほぼ即死級のダメージを受けてその場に魔核を残りして消滅する。

だが、そんな三体を盾として利用する形で俺との距離を詰めて来たもう一体が、俺の体勢が崩れている間に身体を引き裂かんと爪を振りかぶり攻撃してくる。


しかし、その攻撃は、リンドヴルムが吐き出した焔を顔面に受けてしまった熊が身をよじった事により勢いが殺され、ギリギリで俺が回避行動に出るだけの時間を稼ぐ事に成功する。


「悪い!助かった!」


そう、敢えて声に出して謝意を伝えながら、手にしていた相棒により、顔面を爛れさせた熊の魔物を仕留める俺と、


『礼なぞ要らぬ!そら、次が来るぞ!』


その俺の死角側に居た別の魔物を容赦無く焼き払いながら、俺達の戦闘音を聞き付けた他の魔物が接近してくる事を告げるリンドヴルム。



そんな『危機的状況』に在る俺達だったが、その口元には確かな『笑み』が浮かべられていた。



ここ最近、『小鬼(ゴブリン)』戦線や、『試練の迷宮』でのリンドヴルム戦を除けば、自身に届きうる刃を向けられる事も、命のやり取りが発生する程の強敵と見える事も碌に無かった事により俺は、自身が『武人』として鈍りだしている事を、ただ一方的に相手の命を刈り取る事に不快感すら感じ始めていた事を認識していた。

そんな俺にとって、常に互いが互いに相手の命を奪いうる立場に在れるこの状況は、ひりつく様な命の危機感を感じ取れる現状は、鈍り掛けていた己の刃を研ぎ澄ますのには『最適な状況』であり、対等に己の命も失いかねない状況に在れる事により、己を『武人』として更なる高みへと押し上げる事が可能である場所故に、今ではあの落とし穴に掛かった事を感謝していたりする程である。


そして、リンドヴルムはリンドヴルムで、主である俺と二人きりで在れる事が嬉しく、ここ最近無かった程の激戦であるが故に、『龍』としての本能で大変テンションが上がっている……と本人は語っているのだが、どうやら『それらだけ』が理由と言う訳ではないみたいなのだが、まぁ、別段無理やり聞き出すつもりは無いし、何となくだが、その内自分から語ってくれるだろう、と言う様な確信にも似た何かが有るので、今のところ放置していたりするのだけどね?


そんな訳で、それぞれの理由により、この地獄の様な状況下に有りながらも、何故かテンションアゲアゲで魔物を駆逐していった俺達は、落とし穴からの直通で落とされた階層から降ること数階層(数えてはいないが、二桁は行っていないハズ)。


少し前に現れた合成獣(キメラ)っぽい何か(頭が狼で胴が虎、四肢が馬で尻尾がモフモフしていた)をぶち殺した俺達は、休憩も兼ねて目の前に聳えるソレ(・・)を、俺が自身で持ち込んでいた+配給された携帯食料を二人でかじりながら眺めていた。


「……なぁ、リンドヴルムさんや?」モグモグモグモグ


↑タツ手製のカロリーバー(ナッツとドライフルーツギッシリ)をかじる俺。


『……何じゃ?主殿よ?』ガジガジガジガジ


↑俺が作っておいた干し肉(特製スパイスタップリ使用)をかじるリンドヴルム。


「……『アレ』って、そう言う事で良いんだよな?」ゴッキュゴッキュゴッキュゴッキュ


↑水筒から盛大に水分補給してから、リンドヴルムに渡す俺。


『……もしかしなくとも、『アレ』じゃろうのぅ……』コッキュコッキュコッキュコッキュ


↑貰った水筒から可愛らしく水分補給するリンドヴルム。



各自で補給を終え、返還された水筒を俺が受け取った時に、奇しくも同じようタイミングで同じようにため息をつきながら、二人同時に溢すのであった。




「『……やっぱり、もしかしなくても『ボス部屋』かぁ……』」





そう、俺達の目の前には、何時ぞや御目にかかったソレと非常に酷似している、と言っても良いであろう、でかくて重そうな一対の扉が、その向こう側から異様な雰囲気をプンプンに漏らしながら鎮座していたのであった。


「……どうするよ?見なかった事にして帰るか?幸いにも、俺達が降ってきたのとは別の登り階段も見付けては有るんだし、最悪不可能じゃあ無いぞ?」


『……それは、主殿のモノとは思えぬ程に、腑抜けた発言よのぅ。妾の知る主殿であれば、妾にその様な事を尋ねるよりも先に、あの扉を押し開いておったと思うのじゃがのぅ……?』


「……別段、それでも構わないと言えば構わないんだが、そうすると残りの食料やら水やらがちと心配でな?……まぁ、どのみち行くにしろ戻るにしろ、食料と水の残量は変わらんのだし、何処に居るかもよく分からんあいつらを頼って登るより、勝てるか怪しいボスに挑んで、倒した後の魔方陣で脱出、の方が現実的……かね?」


『まぁ、勝算の低さはどちらも大して変わりはしないじゃろうがのぅ?』


「……なら、一丁やるだけ殺ってみますかね?」


そう言って立ち上がった俺は、眼前に聳えるその扉を押し開けるべく手を掛けたのであった。

次回、主人公ボス戦突入!


面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変ありがたいですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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