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71・依頼は受ける事にしたのですが……

ブックマークや感想等にて応援していただき有り難うございますm(__)m

依頼を蹴って席を立とうとした俺達に対して、それまでの高圧的とも取れた態度をフライング土下座にて謝罪してきた受付嬢が、半泣きになりながらも俺達に懇願してきた為に一旦退出を見送り、とにかく頭を上げさせてから、それまでの態度と今の振る舞いの違いや、そうまでして俺達に振らないとマズイ事になるのであろう依頼の内容について詳しく聞き出す事にしたのである。


そして、しばらくしてフォリアさん(受付嬢のお姉さんの名前。落ち着かせる過程で聞き出した)が落ち着きを取り戻し、一旦アストさんと共に手洗いにてお化粧直しをしてきたから話を聞き出したのだが、それは俺達にとってはあまりよろしく無い内容であった。


「……では、フォリアさん。確認も兼ねてもう一度お願いしても良いですか?」


実際に起きつつ有る頭痛を堪える仕草をしながらそう促す俺へ対して、少し前までは崩れた化粧によってパンダの様になっていて、今ではすっかり元のキツネ顔の美人さんに戻っているフォリアさんが首肯する事で肯定の意を表明してから、ついさっきまで聞いていた内容を、今度は聞き逃しや聞き間違いが『有ること』を強烈に願いながら聞いて行く。



「……では、改めて説明させて頂きます。今回皆様に依頼させて頂きたいのは、我が『獣人国』の都市部近郊に存在が確認された新しい『迷宮』の探索、並びに内部に巣食う魔物の間引き。そして、可能であればその『迷宮』自体を『殺して』しまう事となります」



……その言葉に、自身の祈りが天には届かなかった事を悟るが、それでも何かしらの指摘点が無いかどうかを、それこそ重箱の角をつつく勢いで総浚いして行く。


「……まず、何故に、どちらかで言えば『部外者』の判定が出るであろう俺達に、こんな話を持ってきたんでしたっけ?」


「……それにつきましては、現在この『獣人国』内にて事に当たれるだけの戦力を有している、と見なせるのが貴殿方しかいない為、ですね……」


「……自国内の戦力は動かせないから、と言う話だったが、そもそも『迷宮』とは『殺さず利用する』モノではなかったか……?」


「本来でしたら、冒険者ギルドの方で適切に管理し、危険をコントロールしながら利益を産み出させるのですが、今回発見された『迷宮』は長らく人の手によって魔物の間引きがされていない状態にありましたので、内部で魔物が増えすぎてしまっている為に『氾濫』が発生し、内部の魔物が外まで溢れ出る寸前まで来ているらしい、との調査結果が出ております。

そして、この『迷宮』はここ『交易都市レオルティア』のかなり間近に存在するため、放置して一度『氾濫』させてから、と言う手が使えませんので、直接内部で数を減らす必要があるのです。

……そして、今回の様なケースに於ける危険性と、ここ『レオルティア』は交易にて莫大な利益を上げている事から、『レオルティア』の領主であるレオンハルト様とこの『獣人国』の王である『獣王』陛下が、今回の『迷宮』を『殺して』しまう様に、と決断をなさったのです」


「でも~、そんなに重大かつ重要な事なら~、僕達みたいな中途半端なランクの冒険者とかじゃなくて~、自国の高ランク冒険者とか~、国としての戦力だとかを動かせば良いんじゃないの~?」


「それに関しましても、現在この『獣人国ゾディアック』は、隣国である『ヴァイツァーシュバイン王国』との間で緊張が高まって来ております関係で、国境である『リブレント』やその周辺へと戦力を展開せねばならない状況になってしまっておりますので、その……、大変申し上げ難いのですか、国内の高名な冒険者の方々や、国家としての切り札的な戦力である『十二獣将』の方々を動員する訳にはいかない、との事でして……」


「それ故に、『魔王国』にて暴走(スタンピード)を鎮圧した実績を誇るタカ殿に声を掛けてきた、と言う事ですか……。

……しかし、いくらそんな事情があったとしても、私達にそれを為さねばならない理由は無いハズですが?元より私達は『異国人』である上に、そろそろ移動を考えていた以上、ここが災厄に見舞われるとしても、予定の通りに移動するだけで済むのですが?」


「……それは、そうなのですが……。

……実は、今回こうして国内の戦力を国境付近に集めておかなければならなくなった原因の一つに、現在敵対的な行動を取ろうとしている『ヴァイツァーシュバイン王国』の要人が『獣人国』内で亡くなられた『事件』が在るのですが、その事件って私が以前居たリブレントで起きたらしく、何でもその事件には『黒髪の『人族(ヒューマン)』』が関わっていて、被害者は『勇者』を自称していたらしい、との噂が在るみたいなのですが……。

……正直、この話を出す事に何か意味が有るのかは良く分からないのですが……?断られそうになったらこの話を出せば良い、とギルドの上役から言われていたのですが、何か関係があるのですか……?」


確認の為に、と再度聞き出した事ではあるのだが、やはり……と言うかなんと言うか、最初に聞き出した事と寸分違わぬ内容に、まるで頭痛でも堪えているかの様なジェスチャーを取る俺達だったが、その内心において、少なくとも俺は完全に頭を抱えてしまっていた。



……何故ならば、今回俺達にお鉢が回ってきた原因である両国間の緊張が高まった原因に心当たりが有る……いや、はっきりと言えば、おそらく『俺』がその原因である、と言えるからだ。



と、言うよりもぶっちゃけた話、『リブレント』で『黒髪の『人族(ヒューマン)』』が『自称『勇者』』をぶち殺した、なんて話、俺以外には該当する奴はそうそう居ないであろう自信が有る。


……自信が有る故に、こうして有事の戦力が欠けてしまっている原因の一つであろう認識もまた有るため、表には出せないまでも、こうして内心で頭を抱えている、と言う訳である。


「……ちなみに、後どれくらい『氾濫』するまで時間的猶予が有りそうで、仮に『氾濫』が発生した場合は、どの程度の被害が出ると見ているか分かりますか?」


「……それにつきましては、猶予としましては、まだある程度は持つ見込みです。現在、戦力としては召集を掛けられていないまでも、それに次ぐ実力を持っている冒険者の方々に依頼を出し、数を減らして頂いておりますので、暫くは持つかと。

……ただ、機密を保つ為にも、あまり数を揃える事が不可能でしたので、あくまでも浅い階層での間引きしか出来ておりませんので、根本的な解消には程遠いのが現状です。

……そして、万が一このまま『氾濫』が発生した場合ですが、確実にこの『レオルティア』は壊滅する、と考えた方が良いだろう、との見解をギルドの上層部並びに『獣王』陛下は下されているとの事です。もちろん、レオンハルト様もご自身の戦力を『レオルティア』に割いては下さっておりますが、それでもご自身が栄えある『十二獣将』のお一人でもあられる為に、あまりこちらに割く事が出来なかったご様子で、残念ながら防衛しきれる程のモノでは無い、と……」


……アカン。これ、本格的にアカン奴や……。


現在確保出来ている戦力だけでどうにか出来るならば、多少無茶をしてでも『魔王国』へとトンズラする手も考えたのだが、こうやって『無理っぽい』と言われてしまえば、流石に見捨てる事は……出来なくもないが、流石に後味が悪すぎる故にやりたくは無い。

……それに、何だかんだ言ってもサーラさん達には世話になってしまっているし、ここ『レオルティア』の住人の方々にも色々と良くして(モフらせて)もらった事も有る。

それに、ここはシンシアさんの実家も有る上に、その実家であるレオンハルト家には長いことお世話になっている『恩』も有る。……まぁ、レオンハルト家としては、あのクソライオンの件で掛けられた迷惑の御返しのつもりなのだろうけど、それでも拠点として利用させてもらったり、レオルティア内部で色々と便宜を図ってもらったり、と良くして貰っている以上、このまま放置する、と言う選択肢は俺達的には取りたくは無いし、そもそも存在すらしないと言っても良いだろう。


一度受けた『恩』は返す。これ常識。


まぁ、『魔王国』ひいては魔王と良い感じの関係らしいこの国は、助けておいた方が都合が良いかな?と言う打算が無いとは言わないけど、ね?


そんな訳で、俺の中では一応受ける方向に傾きつつあった為、確認の意味も込めてタツとレオとに視線を向けると、二人も俺と同じ様な結論に至っていたらしく、何時もの通りに軽く頷いて見せてくる。


俺が方向性を決定した事を察知したらしいアストさんも、まるで俺がそうすると最初から分かっていた、とでも言いたげな視線を俺へと送ってきているし、リンドヴルムとカーラも、特に抗議する様な仕草は見せていないので、おそらく反対はしていないと見ても良いだろう。


……しかし、『迷宮』かぁ……。


受けるとは決めたものの、『迷宮』にはあまり良い思い出が無い俺達(俺+タツ+レオ)が渋い顔をしながら、あの『試練の迷宮』内で体験した数々の即死罠(デストラップ)やら魔物やらを思い返していると、何を勘違いしたのかは定かではないが、慌てた様子でフォリアさんが残りの部分について説明を始める。


「え、えっと……先程仰られておりました『報酬』と『依頼人』の件なのですが、報酬に関しましては何分緊急事態なので、確定の報酬として幾ら、とは提示出来ませんが、『迷宮』の攻略途中で入手した魔核や魔道具は全てタカ様方でお好きになさっても結構だそうです。お使いになるも良し、換金なさる場合には、『獣人国』が相場よりも何割か上乗せした値段にて買い取らせて頂きたい、とのお話も伺っております。また、『迷宮』の『核』を回収出来た場合には、『獣人国』が責任をもって買い取らせて頂きたい、との事でした。

そして、『依頼人』の件になるのですが、今回の依頼人は『国家の危機』と言う事から、『獣王』陛下が依頼人と言う形となっております。なので、お会い出来るかどうか、と仰られてましても、私の方と致しましては、現在では確約致しかねますので……」


と言った感じで、必死になって説明を重ねて来ているので、おそらくは俺達が報酬やらの『条件』で渋っている、とでも勘違いしたのだろう。


まぁ、聞く話によれば、彼女の実家や友人達も、この『レオルティア』に多くいると言う話らしいから、それらが助かる可能性が出てきたのならば必死ですがりたくもなる、と言うモノだろう。

おそらく、先程の高圧的とも取れる態度も、ギルド上層部からの指示があったと言うだけでなく、彼女自身がこの事態で余裕が無くなってしまっていた事も影響していたのだろう。


そうやって、一人で慌ただしくなってしまっているフォリアさんに、落ち着く様に言ってから、俺達が渋い顔をしていた理由を説明する。


「あぁ、別に、依頼を受ける事を渋っている訳ではないですよ?……ただ、依頼の内容が、ね……?」


「は、はぁ……?と、言いますと?」


「……以前、『迷宮』で酷い目に逢ってな……。我が事ながら、中々に悲惨な体験だったと思う」


「……そ、それは……そんなにも難易度の高いモノだった、と言う事でしょうか……?」


「難易度自体はそれなりだったと思うけど~、まず最初の時点から罠に嵌まって突然攻略開始!だったからね~。中は中で~、基本的に『コレって解除させる気も無いし、そもそもクリアさせるつもり無いよね?』って言いたくなる位の難易度と隠され方をした~、一歩間違えなくても即死する様な罠のオンパレードだったし~、魔物は魔物で嫌らしい事この上ない配置でほぼ無限湧きしてきたし~、中々に散々な目に逢わされたかなぁ……」


そう、語り終えたレオが血涙を流しながら死んだ魚の目をしている事に若干引きながら、それでも納得出来たらしく安堵した様な表情を見せるフォリアさん。


そんな彼女に対して、俺も血涙を拭いながら軽く笑い掛け、何となく喉の奥に鉄臭さを感じながらも話を進める為に話し掛ける。


「……まぁ、そんな感じで『迷宮』に対して多少の『苦手意識』は有りますが、あくまでもそれだけなので、基本的には依頼自体は今の条件のままで大丈夫ですよ?」


「……!それでは……!?」


「ええ、この依頼、俺達でどうにかしてみます」


「……報酬は、国にしろギルドにしろ、そちら側が『相応しい』と思った金額で良い」


「事が事だし~、早めに片を着けた方が良いよね~?取り敢えず~、今日は他の面子の説得に回すとして~、明日一日準備に費やして~、実行は明後日からで良いかなぁ~?」


「わ、解りました!報酬も、無理矢理にでも呑ませますので、どうか、よろしくお願いします!!」


そう、それまではどちらかと言うと沈ませていた顔色に、初めて喜色を乗せたフォリアさんに見送られながら、どうやって説得したものだろうか?と思考を巡らせつつ、他の面子の元へと移動するのであった。

次回、迷宮攻略開始!


そこで『こんな罠とか見てみたい』だとか、『こんな構造とか面白そう』だとかのアイデアがございましたら、感想欄にて提案頂ければ次回以降で採用させて頂くと思われますので、ドシドシご応募(?)下さい!


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
― 新着の感想 ―
[一言] 報酬、国王お墨付き「斬り捨て御免状(貴族、王族、権力者)」…イラっとしたからヤった、後悔はしていない。 トラップ スライムプール 一見浅そうな池の底に降り階段が見えるが…溜まっているのは水で…
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