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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第三章・獣人国編

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69・とうとう昇級します

ブックマークや評価にて応援してくださった方々に感謝ですm(__)m



「さっきは助かったよ、ありがとうな」



名も知らぬ自称『勇者』の亡骸から目ぼしいモノを剥ぎ取っていると、先程自称『勇者』の手によって重傷を負い、俺が投与した『強回復薬(ポーション)』によってよって一命をとりとめた、格好からして恐らく冒険者と思われるウェアウルフの男性が、そう声を掛けて来る。


俺としては別段下心が有って助けた訳ではないのが、それでも感謝されれば悪い気持ちはしないモノで、素直に受け入れる事とする。


「何、目の前に怪我人が転がり込んで来れば、誰でもああしただろうさ。気にしなさんな」


こう言う義理固そうなタイプの人には、わざと軽めの口調で若干茶化す様に接すると、意外と食い下がられずにスンナリ話が通ったりする。

……まぁ、『真面目にやれ!』と突然キレたりする事もあるから、良く見てからやるようにね?


「それでも、さ。あんたが助けてくれなきゃ、俺はこうして生きていられなかったんだから、礼位はさせてくれ」


「……なら、その毛並みを撫で回してモフモフさせて貰うが、別段構わないよな?」


そんなセリフを吐きつつ、両手をワキワキと動かしながら立ち上がり、先程助けたウェアウルフの男性へと向き直る。


すると、その冒険者らしきウェアウルフの男性は、俺の顔……と言うか全身+相棒を信じられないモノを見る様な目で眺め回した後、半ば呆然としながら言葉を漏らした。


「……黒の軽鎧に眼帯をした黒髪の『人族(ヒューマン)』、そして、焔のレリーフの入った黒槍って事は……あんた、あの『黒槍』だったのか……?『魔王国』で発生した、あの『小鬼(ゴブリン)』による暴走(スタンピード)を事前に防いだだけでなく、既に発生していた『大公(タイクーン)』クラスのボスを一騎討ちで下した、って言う、あの……?」


「……誠に不本意ながら、最近はそう呼ばれているみたいだね……」


驚愕しているウェアウルフの男性からそっと視線をずらしながら、内心で頭を抱えたくなる衝動に必死で抵抗する。


……そう、どうやらあの対『小鬼(ゴブリン)』戦線に於いての功績が認められた影響からか、いつの間にか俺達に『二つ名』が付けられていたらしく、それが俺達の知らない間に各所へと拡散されていた様で、こうやって国を跨いでいたとしても、知っている人は知っている、と言う状態になっているみたいなのである。


俺達がその事実を認識したのは、あのクソライオン(故)との騒動が収まった後、『魔王国』からの道中で達成した依頼の報告兼昇級試験への申し込みをするために冒険者ギルドへと寄った際、受付の人にタグを提示したタイミングで『貴殿方がかの~』と語り出され、その人からの直接的な説明によって情報を得た時であった。


……正直、そんな大層なモノを貰う様な事をしたつもりは無いし、一度も『欲しい』とも思った事は無いのだから、いきなり『貴方がかの~』みたいな感じです話し掛けられても、大した事は話してあげられないんだけどなぁ……。

……現に、俺達がギルドで付けられている事実を認識した直後は、速攻で用事を片付けてレオンハルト邸へと逃げ帰り、部屋に引き込もって手で顔を覆いながら床を転がり回るハメにはなったからね……。


それに、恐らく……と言うか、多分それしか思い当たる節が無いのだけれど、俺の愛用している相棒たる『朱烏(あけからす)』の外見が、俺に付けられている大層な『二つ名』の由来になるのだろう。

ちなみに、タツには『蒼拳』の、レオには『白刃』の『二つ名』が付けられているみたいである。


と、そんな感じで正体(?)がバレてしまった為に、終始恐縮気味と言うかビビり気味になってしまったウェアウルフの男性だったが、それでも礼はさせてくれ、と言って引かなかった事と、俺達の方も一応は依頼が控えている関係上、そこまで時間に猶予が有った訳では無かった事もあり、その場でモフモフさせて貰う事で手を打たせて貰った。


……まぁ、そうやって俺がモフった結果として、何故か激烈に『懐かれ』てしまい、最後の方には尻尾をブルンブルンと振り回しながら、貴方(俺)のパーティーに入れてくれ!とお願いされたり、自称『勇者』によって重傷を負わされていた仲間の方々(桜木さんの回復魔法によって完治済み)が回収しに来ても、その場で地面に寝転がって腹を見せ(ウェアウルフの人達に取っては最大級の『お願い』の作法……らしい)た状態のままで


「嫌だ~!この人にもっとモフって貰うんだ~!」


と子供が駄々を捏ねるかの様な必死の抵抗を見せるも、結果としては無事に回収されて行った、と言う一幕があったりする。

なお、その時に然り気無くお仲間さん達が、その駄々を捏ねていた人の事を羨ましそうと言うか、けしからんモノを見る様な目と言うか、とにかくそっち系の視線を送っており、その後に連れ込まれた物陰から犬系の動物が出す様な悲鳴が聞こえて来たらしいのだが、それはまた別のお話。





******





「試験依頼、『ヒュージワイバーンの討伐』達成おめでとうございます!これにて、お三方共に晴れて『銀級(Bランク)』へと昇級が認められました!より一層のご活躍を期待しております!」


あの通用門でのいざこざを強制的にうやむやにした後、ギルドによって討伐対象として指定されていたヒュージワイバーン(前足が翼に変化した巨大なトカゲちゃん。その中でも、一際デカイ個体……らしい)を二日掛けて探し出し、俺の風切りで撃ち落としてから三人掛かりでフルボッコにしたお陰で戦闘自体はものの五分程度で終わらせた俺達は、依頼の納品の対象でもあり、ワイバーンの討伐証明部位でもある頭部(全長約1m)を携えて、こうしてリブレントの冒険者ギルドへと帰還したのである。

もちろん、身体の方も素材やら肉やらが勿体無い為に、レオの『技能』で収納して回収してある。


そして、依頼書と受験票、討伐証明部位である頭部を纏めて提出した俺達に対して、最初のセリフと共に、満面の笑みを浮かべながら差し出したこちらの手を包む様に握り、更新されて新しくなったタグを手渡ししてくる狐系の『獣人族(ベスタ)』と思わしき受付嬢(最初は虎系の『獣人族(ベスタ)』の男性だったのだが、タグを渡した時に交代してきた)から出来立てホヤホヤの銀製のタグを受け取ると、彼女に拘束されたままの右手は取り敢えず放置し、空いていた左手でタグを目の前にぶら下げてマジマジと観察してみる。


基本的な形は最初の『木製(ウッド)』の時から変わっておらず、長方形のプレートの真ん中に、デカデカと一文字刻印されているだけだ。


まぁ、最初に手に入れた『木製(ウッド)』のタグの時との違って、今眺めているタグは銀製で、刻印の方法が『焼き印』か『打刻』か、刻印されている文字が『F』か『B』か、と言った相違点は有るが形自体は変更されていたりはしない様子だ。


……あんまり変わったりしないんだなぁ……。


なんて感想を内心で抱いていると、軽く咳払いをする音が聞こえたのでそちらへと視線を向けると、そこには未だ俺の右手を両手で包んで拘束したままになっている、狐系と思われる耳と尻尾を『人族(ヒューマン)』から生やしたみたいな外見をしている受付嬢(推定)がおり、俺が視線を向けた事を認識すると、そのやや吊り目で狐っぽい印象を受けるが確実に『美人』と形容出来るであろうその顔に笑みを浮かべながら、俺達が『銀級(Bランク)』に昇級した事によって発生する各種権利と、それに伴う義務や罰則の類いを説明し出した。


「今回の昇級試験にて皆様は晴れて『銀級(Bランク)』へと昇級された訳ですが、それによって『金級(Aランク)』相当のギルドでも『高難易度依頼』として指定されているモノを受注する事が可能になります。

これは、それまでの依頼とは文字の通りに難易度が『桁違い』に跳ね上がる上に、どれもこれも『緊急性』が高く、それでいて『確実性』を求められるモノばかりとなっておりますので、『失敗しても大丈夫』等と言う様な軽い気持ちで受けられる事は、正直お薦め出来かねます。


また、『銀級(Bランク)』になられた事により、『個人での依頼の受注』が許可・容認される様になりました。

これにより、ギルドの掲示板に貼り出されている依頼よりも好条件での選り好みが可能になりますが、それと同時にギルドによって行われていた『依頼人の精査』や『真っ当な依頼か否かの調査』、『適正値以上での受注条件の設定』等は行われなくなりますので、ご自身にて全てやっていただく事となりますので、ご注意下さい。


次に、『銀級(Bランク)』になられた事により、国よっては軍の戦力や特権階級……要するに『貴族』として抱え込もうとする動きが有ったりしますが、ギルドの方として別段それに応じる事を禁じてはいません。

その代わりに、その話を受ける場合はギルドタグを返上し、冒険者ギルドを脱退していただく規則になっております。

これは、国家権力と冒険者ギルドは別の存在であり、構造的に馴れ合える関係にならない為の処置となっております。


最後に、規則にて『銀級(Bランク)』となった冒険者の方々は、それまでは保持していたギルドが必要に応じて発令する『緊急依頼』を断る権利が消失致します。

これは、ある種『自由参加』であり、言い方は悪いですが、『基本的』に居ても居なくてもどちらでも対して結果が変わらない『青銅級(Cランク)』までの方々とは違い、戦況や状況を劇的に変化させうる可能性が有る方々には、確実に参戦していただく必要が有る為です。

もちろん、参加を拒否する事は可能ですが、その場合にはタグの没収ならびにランクの下降、それと『臆病者』の『二つ名』が強制的に付けられる事となりますので、ご注意下さいね?」


そう締め括りつつ、俺の右手を拘束するだけでなく指でツツツ~となぞりながら、俺に向かってウインクを飛ばして来る受付嬢。

目尻の泣き黒子がセクシーだし、着崩された制服から覗いているお胸様の谷間は中々に深そうで、全体的に『女性の艶』を強烈にアピールしてきて下さっているが、何故に隣に居て同じ様に説明を受けていたタツでもなくレオでもなく『俺』なのだろうか?


「以上で昇級に関する説明を事項は終了となります。何かご質問は有りますか?今でしたら、『何でも』お答え致しますよ?」


ようやく俺の右手を解放したとおもったら、両手を胸の下で組みつつ、その中々に豊かに実っているお胸様と谷間様を強調するかの様に前屈みになりながら、如何にも『ソッチ系』の質問をどうぞ?とでも言いたげな動作を取ってくる受付嬢さん。


……が、その手のセクシーアピールでは一枚も二枚も上手な方が身近に居る身としては、確かにドキドキはするが、そこまででもないか、と言った感じになってしまう。


現に、受付嬢からのアピールに対抗しているつもりなのか、座っている後ろから頭を抱き締められ、後頭部が柔らかい何かに挟まれている感触を現在進行形で受けている身としては、直接押し付けられている訳でも無ければ、多少視線が誘導される、と言う程度の吸引力しか無いのである。


「いえ、現段階では特にありません。では、そろそろお暇しても?」


そう、受付嬢の誘惑を華麗(?)に回避し、退出する旨を伝えた俺に対して、まるで獲物を逃がした猛獣の様な視線を向けてくる受付嬢だったが、俺の背後にいるアストさんにチラリと視線を向けると、ようやく諦めを着けたのか特に引き留める事を無く俺達の退出を許可し、自身はギルド建物の奥へとひっこんで行ったのであった。



……そして、そうやって無事に昇級を果たし、このリブレントで取っていた宿に戻った後、女性陣も含めての打ち上げを行った際に、ギルドであったアレコレに関してアストさんに暴露される事となり、俺に対して好意を抱いている(らしい)女性陣による『浮気の虫撲滅』の為のセクシーアピールを受けるハメになるのだが、それはまた別のお話……。

次回からはまた動きが大きくなる……予定です。


面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援していただけると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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