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68・試験依頼の前にこの阿呆を叩き潰します

ブックマークにて応援してくださった方々に感謝ですm(__)m


「……この俺様が、『勇者』である俺様が気圧されてる、だと……?」


そう呟きを漏らしているのは、つい先程まで俺から殺気をぶつけられて身体が固まっていた自称『勇者』の強姦魔野郎。


流石に、大層な装備で全身を固めていただけあって、俺が実際にその喉元へと相棒の刃を突き付けてやると、半ば強引に殺気によって固まっていた身体を動かし、俺が手に持っている相棒の全長の約二倍程の距離を飛び退いて確保している。

まぁ、その気になれば、その程度の距離何てモノは無いも同然なので、実はまだ俺の間合いの内側に居る為に如何様にでも料理出来なくは無いのだが、どうやらそれに本気で気付いていない様子なので、敢えて仕掛けずに様子を見ておくとしますかね。


そんなことを考えていると、どうやら放たれた殺気とは裏腹に、俺が先手を打って仕掛けて来ようとしていない事にいぶかしむ様な表情を浮かべるが、何かに思い当たったのか納得の行った様な表情へと切り替えると、何やら馴れ馴れしい雰囲気を醸し出しながら俺へと話し掛けて来た。


「そうか……。まぁ、そうだよなぁ……。なんたって、この俺様は『勇者』様だからなぁ……。

人族(ヒューマン)』の旗頭!

『人類』の希望!!

この世界を統一出来るかどうかの『鍵』の一人!!!

人族(ヒューマン)』随一の大国である、ヴァイツァーシュバイン王国公認の『勇者』!!!!

……そんな『重要』な人間を、お(めぇ)みたいな何処ぞの馬の骨とも知れない野郎が傷付ける事何て、出来る訳もねぇよなぁ……。

まぁまぁ使えるっぽいし、後ろの女共の手前格好つけたかったんだろうが、俺様がお前程度に傷付けて良い相手じゃねぇってもう分かってんだろう?

なら、今ならまだ見逃してやっから、その大層な槍と女共置いてどっかに失せろや。お前だって、どうするべきか何て分かりきってんだろう?ん?」


そんな事を言い放ちながら、さも『分かっている』と、『それもポーズなんだろう?』と言いたげにしながら、気安い感じで近寄ってくる自称『勇者』。

そして、様子見の為に『わざと』手を出していなかったのを、自身の立場にビビったからだ、と勘違いしているらしき阿呆は、極至近距離まで接近してくると、俺の肩へと手を置きながら耳元へと囁き掛けてくる。


「……もし、だ。もし『仮に』この場で俺に手を出す様な事になれば、お前がこの場で俺に殺されるだけじゃなく、お前の家族、友人、知人も全~部探し出されてグチャグチャに拷問された後に、晒し首にされるって事も理解してっから、こうして『威嚇』だけしてんだろ?

何、安心しろよ。怪我人助けたり、あの女助ける様な真似したのだって、あの黒髪の女狙ってたからだろう?なら、あの女も見逃してやるし、一緒に連れて逃げりゃあお前の体面だって『穏便に済ませた』って事で保てんだろう?

悪い事ぁ言わねえから、俺様の気が変わらねぇ内にさっさと行っちまえよ?な?」


そんな事を宣いながら、俺が無言のままでいることを肯定と取ったらしく、俺の肩を鎧の上から軽く叩いてすれ違い、最初に手を出そうとしていた(いぬい)と『獣人族(ベスタ)』である三人を除いた他の面子の方へと近寄ろうとしていたのだが、そのタイミングで俺が振り返りながら相棒を自称『勇者』の背中へと突き立てる勢いで刺突を繰り出す。


「……なっ!?お前、なんのつもりだ!?見逃してやるって言ってんだろうがよ!!?」


流石に、自称であれ『勇者』を名乗るだけは有るらしく、直前で攻撃に気付いて咄嗟に回避し抜刀した腰の長剣の切っ先を俺へと向けて来る。


だが、その問い掛けには返答してやらずに突き出した相棒を軽く引き寄せると、そのまま手首の回転だけで横凪ぎの打撃へと変化させ、自称『勇者』の脇腹に痛打を与えると同時に、女性陣に近過ぎた立ち位置を無理矢理に調節して戦い易い状況を作り出す。


そして、吹き飛ばした自称『勇者』に対して相棒を『戦闘用』に構えながら、先程までとは桁違いに濃厚で、下手な相手であればそれを受けただけで死に至る程の殺気をぶつけてやりながら、何やら喚いていたみたいなので一応答えてやる事にする。


「『何のつもり』か?そんなモノ決まっているだろう?『お前を殺す』。それ以外に何が有る?」


「なっ!!?」


「そもそも、お前は大きな思い違いをしているが、別段俺はお前の事を『人類の希望』だなんて思っちゃいないし、お前『程度』を傷付けた程度で差し向けられる様なアレコレもどうとも思っちゃいない。ついでに言えば、俺が何かやらかしたとしても迷惑を掛ける様な相手も居やしないから、遠慮なくお前をぶち殺せるって訳だ」


「…………」


「更に言えば、お前みたいなクズの言う事なんぞ信用出来ない、ってのも有ったからなぁ。

現に、俺がお前に背中を向けた瞬間に、お前の仲間が俺に対して攻撃を仕掛ける様に指示してただろう?」


「……!?何でそれを!!?」


「『何で』も何も、とっくの昔にお前のお仲間さん達は俺の仲間が取り押さえていて、その上で尋問まで全部済ませてあるからだよ。あんな風に、さ」


そう言って顎で奴の背後を示してやると、まるで俺の指示によって行われたかの様なタイミングで『ドサドサッ!!』っと、何か重くて柔らかいモノが落とされた様な音が周囲に響き、思わず自称『勇者』が振り返ると、そこには全身を打撲痕や殴打痕に覆われて、元の顔立ちすら定かでは無くなってしまっている剣士の男と、四肢の『腱』が通っているハズの場所を切り裂かれているだけでなく、全ての指が逆側に開かれた上で爪まで強引に『引き剥がされて』いる、装備から判断して斥候か狩人と言った役職に就いていたのであろう女が、タツとレオの手で色々と『お喋り』して貰った後であろう状態で転がされていたのである。


それを見た自称『勇者』が愕然とするのを横目に、情報を絞り出したタツとレオが、得た情報を開示するために話し出す。


「……どうやら、これがこいつらの何時もの手口らしいな」


「ある程度の戦闘力の有りそうな相手には~、さっきみたいに『見逃してやる』的な事を言っておいて~、いざ本当に逃げ出した時には~、待機している仲間が追い掛けて拘束した後~、拷問しながらころすか~、もしくは今回みたいなパターンだと~、縛って転がしている目の前で女性を暴行、何て事もやっていたみたいだね~」


そう、口調は淡々としたモノではあったが、二人もこの自称『勇者』には思う処があったらしく、その視線には冷たい殺意が確かに上乗せされていた。


「……ば、馬鹿な……。こいつらは、俺様程では無いにしても、王国でも指折りの実力者なんだぞ……?それが、何でこんなにアッサリヤられてんたよぉ……!?」


自身の仲間がやられた事を認識したからか、半ばパニックに近い状態となってその金髪を振り乱す自称『勇者』。

その表情には、少し前まで見受けられた、自身の優位の絶対性を確信していた様子は消え去り、その代わりに『苛立ち』や『怒り』、そして、本人は必死に否定をするのだろうが、隠しきれない『恐怖』の色がハッキリと浮かび上がっていた。


そして、暫し髪を振り乱しながら喚いていた自称『勇者』だったが、一頻り喚き散らすとある程度落ち着いたらしく、改めてその手に持っていた長剣を構え直すとその切っ先を俺へと向けて、見当違いの怒りと共に俺へと向かって挑んで来る。


「ちくしょう!ふざけやがって!お前らは殺さずダルマにして、あの女共が俺にグチャグチャに犯される様を見せ付けてから殺してやる!!」


それに対して俺が、さもそんなことには興味が無い、とばかりに発した


「御託は良いから、さっさと掛かって来い」


の言葉と、空いている左手を突き出し、その指だけを曲げて招き寄せるジェスチャー、所謂『掛かって来い』の意味合いを持つ行動により、それまで以上に感情を昂らせた自称『勇者』の突撃により、本格的な戦闘が開始されるのであった。




******




「喰らいやがれ!!」


そんな掛け声と共に、既に俺の間合いの内側に居た事すら気付いていない様子だった自称『勇者』が、長柄の武器である俺の得物を一応は警戒しているらしく、左右に動線をずらしながら俺目掛けて突っ込んでくる。


その気になれば、開幕と同時にワンパンで昇天させてやる事も出来はしたのだが、先程割合と本気で『当て』ていた俺の殺気を喰らっていた為に、俺との『絶望的』と言っても良い程の戦力差を理解しているハズなのに、それでもなお自身が勝つ事に一切の疑問を抱いていない様子の自称『勇者』に興味が出てきた為に、初手確殺の技法は当然として牽制以外の攻撃は好奇心から意図的に行ってはいない。


……だが、その時折俺が行う牽制を、それと理解していないのか大袈裟なまでに距離を取って回避しようとする上に、こちらがわざと見せている隙にも引っ掛かって来るのだ。フェイントやトラップとしての意図を含めたモノでもお構い無しに、である。


そして、そのわざと見せてやった隙によって仕掛けられた攻撃を、今のところは全て回避しているが、それらにしても、どう評価しても『勇者』等と言う程の人物が振るうソレとはとても思えない。


……今のところの評価としては、一応は隙を隙として認識しているし、足運びや剣の振り方も心得ている以上は『素人』では無いのだろう。

だが、剣速や踏み込みは中途半端で隙の見分けも出来ていない。

更に言えば、俺が観察に徹底している事に気が付いておらず、自身が優位に事を進めている、と勘違いしている様子から、恐らくは『実力を隠している達人』と言う線も消えると見て間違いは無いだろう。


……ならば、こいつの『自身の源』は一体何なのだろうか……?


そんな事を考えていた為か、それとも単なる偶然かは定かではないが、俺の牽制の一撃を紙一重の差で回避した自称『勇者』がこれ幸いと急速に距離を詰め、その場で大きく剣を振りかぶり、



「これで終いだ!!」



だとか叫びながら俺目掛けて振り下ろして来るが、別段カウンター気味に振られている訳でも、戦闘の負傷によって行動が制限されている訳でもなく、更に言えば、何かしらの『組み立て』や、他の人間との協力によって俺自身が回避を選択し得ない状況を作り出している訳でもない、別段鋭くもない只の振り下ろしを回避出来ない訳も無い為、その気になれば左右のどちらかに一歩踏み出すか、もしくはこのタイミングからでも余裕で合わせる事の出来る、相棒によるカウンター攻撃でも仕掛けてやろうか?とも考えたが、結果としてはその場で防御を試みてみる事にした。


まぁ、そこまで大層な理由が有る訳でもなく、ただ単に装備品の格が気になった、と言うだけなのだけどね?

装備も、パット見た感じは中々に『逸品』と言った感じだったが、金さえ掛ければ見た目は如何様にもなるのだし、只のハリボテと言う可能性も無い訳ではないからね。


そんな軽い気持ちで防御しようと、相棒を攻撃の軌道上に差し入れようとしたのだが、その時何故か『嫌な予感』が背筋を駆け抜け、このままでは大変よろしくない事が起こる、との確信を得る。


咄嗟にサイドステップを踏みながら、手首の返しで相棒を操作し、自称『勇者』の長剣と接触する寸前に行動を『防御』から『受け流し』に変化させたのだが、些か急であった事もあり、完全に刃筋を相棒に沿って流す事が出来ずに、最後の方で僅かながらに刃筋を立てる事を許してしまう。



すると、リンドヴルムと戦う以前の戦闘では、傷が入る事はあっても刃を立てられた事も無く、リンドヴルム戦以降は、リンドヴルムの『龍の血』によって強化されていた為に、傷一つ付いた事の無かった相棒が、柄に付けられた飾りの部分とは言え、その『斬撃』とも言えない様な一撃によって切り取られてしまったのである。



長剣の間合いから完全に離脱しながらも、その切り取られた部分を思わず凝視して


「なん……だと……?」


と呟きを漏らす俺。


そんな俺を目の当たりにし、勝ち誇った様な口調と表情で、まるで見せびらかすかの様に己の武具を自慢しだす自称『勇者』。


「はっ!これでお前もお終いだ!こいつは、俺があの『試練の迷宮』を踏破してきた時に見つけた魔道具の一つよ!その効果は『武器破壊』!!こいつによって切り付けられた武具も防具も、まるで紙切れであるかの様に簡単に切り裂かれる!!そして、この鎧は頑丈さは当然として、常に使用者である俺様に回復魔法を掛けてくれる効果が有るのさ!!

つまり、俺はただただ相手に攻撃を当てればそれで勝ち!防御に回れば、ひたすらに回復しながら相手の武具を破壊していれば勝手に勝てるって訳だ!

さぁ、お前こそ掛かって来いよ!!その大事な大事な槍が、ソレ以上壊れても良いってんならだけどな!?」


そのセリフを心の中で相棒に詫びながら聞いていた俺だったが、ぶっちゃけた話『だからどうした?』と言った感想しか抱けない。


何せ、自分はすごい武器を持っているから強いんだ!と子供が自慢している様なモノなので、一体何をどう感じ入れば良いのか分からないし、『試練の迷宮』ならば俺達も踏破しているので、そこまで凄いことなのか?と言うのが正直な思いだ。

……まぁ、周囲の反応を見る限りだと、凄いことなのかも知れないけど。


そんな事を思っているとは露知れず、また無造作に距離を詰めようとしてくる自称『勇者』だったが、もう既に俺が『知りたい』と思うような情報は持っていない様子なので、奴が把握しているであろう俺の間合いの最大部よりも、更に遠くから踏み込みを掛けてその額に『サクッ』と言う音と共に穂先を突き込んでやる。


すると、まだ自身が致命的な攻撃を受けたと言う事に気付いていないのか、不思議そうに相棒と俺とを眺めながら


「はぇ……?」


なんて言葉を漏らす。


しかし、そこで手を止めて何かしらの手段で復活等をされると後々困った事になる為に、その突き込んだ状態から額を割る様に上部へと振り抜くと同時に、未だに自身が死に瀕しているとの認識が無いらしい間抜け面を両断し、頭部を三つに分割する。


そして、鎧の効果だか何だかで復活しない事を確認してから、それまで構えっぱなしだった相棒の穂先を、ようやく地面へと向けて下ろすのであった。

面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援していただけると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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