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07・まだ日は高いけど取り敢えず設営します


「先生ー、取り敢えずどうにかなったみたいだけど、一応確認お願い出来ますかね?それと、自分が分からないからって、生徒に丸投げするのは如何なモノかと思うけど、気のせいかな?」


「はい、ありがとう。確認も何も、こうして見ているだけで良くなっているのが分かるから、多分大丈夫だよね?

……それと、悪かったと思っているから、その不穏な右手は収めてくれないかな?なんだか、君がその右手でしようとしていることを実行されると、私の頭が凄いことになりそうな気がするのは、気のせいなのかな?

ついでに、小鳥遊(たかなし)君達が言ってた周辺状況についてもお願い出来るかな?」


その言葉で俺は、右手に持っていたヤシの実の、繊維層をぶち抜いて殻の部分まで穴を開けていた指を引き抜いて、俺が(いぬい)に飲ませていたのを羨ましそうに見ていた女子に「飲むか?」と一言掛けながら渡して、証拠を隠滅を図ってから先生の元へと移動する。


……チッ、気付かれた。



それから俺は、ここが無人島(推定)であること、見えた範囲に陸地は無かった事、取り敢えず使えそうな水場は発見していること、そして、どうやらここは別の世界の類いであり、俗に言う『魔物』の類いも出没するので、あまり不用意に森へと入らない方が良い事を、タツやレオと一緒にヤシの葉をアミアミして帽子やその他(マットや籠等)を作ったり、追加で葉を取りに行った際の副産物として取って来たヤシの実を、ふざけ半分に素手で飲み口を開けてやり、最初に渡した分にありつけなかった連中に分けてやったりしながら説明する。


……まぁ、当然の様に、ここが異世界っぽい、って情報を出したら、速攻で頭の心配をされたけどね?


その後に、俺達がスキルの実演をして見せたり、遭遇して仕留めた兎公の皮や魔石等の証拠品を見せてやったら、流石に信じたっぽいけどね。


「……となると、本当に別の世界に来ちゃった訳かぁ……。まさか、小説にしか無いだろうと思っていた事が現実になるなんて、思ってなかったのだけどなぁ……。

でも、そうなると、救助の類いは期待出来ないって事になるのかな?ソレって、結構ヤバくないかな?」


「まぁ、『元の世界への即時の帰還』は多分無理でしょうけど、『ココ(無人島)からの生還又は救助』だったら、そこまで無理・無茶な話でも無いんじゃないですかね?」


「……その心は?」


「いや、この手の事柄って、小説だとかだとお決まりのパターンでは


1・神等の超常の存在に呼び出される


2・術者等が居て、そいつに人為的に呼び出される


のパターンだと思うんですが、そこまでは大丈夫ですか?」


「……まぁ、私も大学時代にその手の小説は結構読んだから、大雑把に分ければそうなるのは分かるけど……ってそう言う事ね」


「はい。1のパターンだと、ぶっちゃけどうにもならないんで、諦めてココでサバイバルするしか無いですけど、多分今回のは魔法陣ぽいのが有ったりだとか、神みたいなナニカと遭遇していない事から、恐らく2のパターンだと思います。

そして、2のパターンだったとしたら……」


「何かしらの目的でわざわざ呼び出したんだから、ほぼ確実に探しには来る、って事かな?」


「まぁ、あくまでも『そうだったら良いなぁ』程度の予測とも言えない願望ですし、そもそもが妄想等が大元にある小説由来の知識からの予想ですから、そのどちらでも無い可能性も大いに有り得ます。ですが、希望も何もない処で耐えるよりかは、幾分かマシかと」


そう会話しながら編んでいた帽子を、先生の頭に被せてから、尻の砂を払って立ち上がる。


「さて、では俺達はそろそろ行きますね」


「……?何処に行くのかな?もしかして、また森で採取でもしてくるのかな?」


「いえ、日がまだ出ている内に、さっさと設営してしまおうかと」


そう俺が説明すると、同じく残して行く分を編み上げて、回収するべきモノは全て回収し終えたタツとレオが合流して来る。


「設営するなら水場の近くの方が良いが、まぁこの辺りでも構わんだろう」


「明るい内にやっておかないと~、暗くなってからじゃあ苦労する事になる事も~、結構あるからね~」


「そんな訳なんで、俺達はこれで失礼しますね。先生も、早めに塒の確保をしておいた方が良いですよ?

……まぁ、何もない地面の上でごろ寝するのが好き、って言って(はばか)らない上級者でなければ、って話ですけどね?」


そう言い残して移動を開始する俺達。そんな俺達に佐藤先生は、まだ言いたいことが有ったのか、再度口を開こうとしていたが、森へと入っていた大神がそのタイミングで戻っており、一応報告する為に近付いて来ているのが見えていたので諦めて対応する事にしたらしく、結局そこで分かれる事になったのであった。




******




適度に近過ぎず、けれども離れ過ぎず、と言った程度の距離を開けて、俺達は設営を開始する事にした。

……したのだが……


「……なんでここに居るんだ?乾」


「ん?居ちゃダメかな?」


「……いや、駄目って事は無いが……」


何故かそこには、つい先ほどまで青い顔をしていた半病人のハズの乾が居たのである。

本人曰く


『小鳥遊君から貰ったジュースを飲むだけ飲んで、少し休んでいたら元気になった。そしたら小鳥遊君達が移動し始めたのが見えたから、追いかけて来てみた』


との事である。


……回復力高くないか?


「それに、これから小鳥遊君達、ココに寝床とか作るんでしょ?私、そう言うの良く分からないから、教えて貰えるとありがたいんだけど、良いかな?見せて貰うだけでも良いから、ね?お願い!」


……まぁ、別に良いか。


「見ている分には構わないけど、邪魔はするなよ?それに、作ってやるつもりも無いから、そのつもりで居ろよな?それと、あんまり騒ぐなよ?そうでなくても、お前さんが居ると睨んでくる奴が居るんだから」


「本当!ありがとう!やっぱりこの手の事は、分かる人に聞くのが一番だよね!それと、真也君の事を言っているんだったら、私に言われても困るよ?彼、私の言うこと、全然信用してくれないんだもの……。何度か『止めて』って言った事も有るんだけど、聞いてくれないんだよねぇ……。別段好きでもない相手に、四六時中世話焼かれても、あんまり嬉しく無いんだけどなぁ……。おまけに、いざ助けて欲しい時には居なくて助けてくれないし……」


……なんと言うか、そいつは御愁傷様って奴ですかね……。

ちなみに、さっき出てきた『真也』ってのが、乾の幼馴染みであり、成績優秀・スポーツ万能、おまけに空手の段位まで持っている『文武両道』を地で行くイケメンでもあり、俺達のクラスのクラス委員の片割れでもある『大神 真也』の事である。

……ただの世話焼きかと思っていたら、下手をすればストーカーよりも余程悪質じゃあるまいか……?


「……取り敢えず、設営だけでもやっちまうか」


背中に哀愁を漂わせている乾に掛けてやる言葉が見つからない俺は、取り敢えずこの場に居る目的を果たす為に、さっさと設営してしまう事にする。


砂浜から少し森へと入った辺りに生えている木の根元をベースとして選んだ俺達は、まず最初にその付近の下草を踏んで倒し、その上に周辺の木等から採ってきた葉っぱ等を被せ、更にその上からせっせとヤシの葉で編んだシート(約3m四方)と兎公の毛皮を敷いて、寝床兼活動拠点を構築する。


「まぁ、ココまでやるのは、流石に無理だろうけど、下草を倒した上でそこら辺から葉っぱを被せてやれば、そこそこ寝心地の良い寝床が出来るハズだ。それと、作るのならば、ココみたいに木の下に作っておいた方が無難だぞ?」


「うん、分かった。下草の上に葉っぱだね。処で、なんで木の下が良いのかな?」


「寝ている時の降雨で濡れずに済む」


「真夜中に~、突然降られるのが~、一番困るからね~?」


「成る程!」


「まぁ、ココは簡易的な拠点でしか無いからやらないけど、木の枝にロープや蔦の類いだとかを通して、その上に葉っぱ付きの枝なんかを被せれば屋根を作ることも出来るぞ。覚えておいて損は無いハズだ」


「へー!」


そんなこんなで寝床は出来たので、次は火の確保をしてしまう事にする。


俺は、予め拾っておいた、乾いた板状の木と、比較的真っ直ぐな枝、それと、緩やかに湾曲した枝を取り出す。

湾曲した枝にはワイヤーが取り付けてあり、見方によっては弓の様にも見えるだろう。


その弓のワイヤーの部分を枝に垂直になるように2~3回巻き付け、板状の木の端に付けた窪みに先端をセットし、反対側を石で抑えて弓の枝の部分を手に持ち前後に動かす。

暫く動かしていると、板状の木と枝とが擦れる事によって発生した摩擦熱によって、板の窪みの部分から煙が出始め、黒く変色すると同時に粉が出始める。

その粉を、ヤシの実を解体した際に入手しておいた繊維に包み、軽く息を吹き掛けてから手首のスナップで何回か振り回していると、粉から発火し種火が起こる。


「わっ!本当に着いた!」


脇で騒いでいる乾を尻目に俺は、手に持ったままだった種火を、地面に作っておいた簡易竈(石で囲んでその中を少し掘り下げてあるだけ)に用意しておいた落ち葉の小山に種火を投下する。

そして、種火が落ち葉に引火したことを確認すると、予め拾っておいた枝(周辺探索の際に入手)の内、小さく細かい物から投入し、徐々に太く大きな枝にして行く。

そして、そこら辺に落ちている様な枝と同じ太さの物を投入する頃には、熱源として利用出来る程度には興っている焚き火が完成していた。


「おー!凄ーい!……でも、こんなに温かいのに、焚き火なんて必要なの?熱いだけじゃあない?」


「いや、色々と使い途が有るんだよ、意外とな。それに、海風やら何やらで多分夜は冷えることになるから、まだ明るい内に興しておく事をお奨めするがね?」


そうレクチャーしてやると、「ありがとう!」と言い残して、彼女は自分の寝床を作る為に一旦戻って行った。

が、その後、日が傾いてから、俺達が夕食として生レバー(生姜の様な植物+ニンニクの様な植物の擦り下ろし&塩)にありつこうとしていたら、友人と先生を連れて襲撃して来たのだ。

貧血だった為に、本能的にレバーを求めていたのか、結構ガッツリ喰われてしまった。

……解せぬ。


そして、何だかんだで、俺達の異世界もとい無人島生活の一日目は、こうして暮れていったのであった。

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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