67・当初の目的を果たします
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権力者に特有の変態的保身欲と、それに伴って建物中に仕組まれた変態ギミックの一つである『最も気の緩む入浴中の会話を盗み聞きすると同時に、身体に特徴的な部分又は個人を特定出来る何か(刺青等)が隠されていないかを確認する為の覗き窓』を駆使した、阿呆主導による集団男湯覗き事件から数日が経過したある日。
俺達は、この『獣人国』へとやって来た目的を果たすべく、冒険者ギルドのレオルティア支部の入り口を潜り抜けた。
そう、今日この日こそ、予てより予定されていた、『青銅級』から『銀級』へと昇級する者達を選定する、昇級試験の開催される日なのである。
一応、レオンハルト家にてお世話になっている間に、既に『銀級』の資格を所持しているサーラさんやシンシアさん、サーフェスさんへと話を聞いておいた為に、手続き等の手順では迷う事も無く比較的スムーズに進める事が出来、他の悪戦苦闘している『受験者』達の姿を横目に見ながら、提出したアレコレと引き換えに貰ったプレートを片手に『第一試験』の会場へと移動を開始する。
そう、既に気付かれている方も多いとは思うが、一応説明しておくと、今回俺達が受けようとしている昇級試験は幾つかの段階に別かれている。
まぁ、とは言っても、その全てに合格する必要は無いそうなのだが、それでも一定数の合格はもぎ取らねば昇級とはならない為、あまり気を抜ける様な難易度でも無いらしいのだけれど。
そんな訳で俺達がまず向かった先の『第一試験』の会場では、『礼儀作法』についての試験が行われていた。
……『冒険者』なのに『礼儀作法』何て必要なのか?
確かに、一見必要も関連も無い様に思われるかも知れないが、それは『青銅級』までの話であり、『銀級』以上になると割りと馬鹿にならないレベルで必須になってくるのだとか。
その理由としては、『銀級』からは『個人依頼』が増え始めるからである。
『青銅級』以下であれば、ギルドにて貼り出されている依頼から自分で選んだり、知り合いやギルド職員からの斡旋等にて依頼を受ける事が大半を占めるのだが、『銀級』まで到達する程の腕となると、大なり小なり顔が売れて来る為に、その個人を指名して依頼を発注する事が出来る様になるのである。
そして、そうやって個人を指名して依頼を持ってくる相手とは、その大半が支配階級に在る者であったり、金に糸目を着けない豪商であったりと、『社会的な地位』を持っている者が占めている。
そんな者達と接する機会が増える以上、元よりその個人の人柄までを理解した上で指名を出されるのならばまだしも、そうでない者に指名される機会の方が圧倒的に多いため、そう言う場に於ける必要最低限の礼儀作法を持っているか、と言うのが、『銀級』への昇級の重要な判断基準の一つとなっている、と言う訳なのである。
何せ、ギルドとしても派遣した冒険者が、その都市で顔の利くお偉いさんに無礼な態度をとったから支部ごと追放!何て事は是が非でも避けたいのだろうから、多分そうならない為の試験内容なのだろう。
それに、世間一般的に『一流』と呼ばれ、ギルドの看板として活動する様になる『ミスリル級』の予備軍の様な存在となるのだから、それ相応の振舞いを求める為にもこうして『試験の一部』として組み込んでしまっている、とも考えられるからね。
実力だけの無法者は要らん!と言う事でもあるのだろう。
もっとも、最初から『技能』欄にて『儀礼』が習得済みだった(させられていた?)俺達にとっては、多少緊張を強いられはしたものの、特に手こずる事も無いままに普通に合格出来てしまったけれどもね?
おまけに、第二試験の『読み・書き・算術』(個人依頼等に於いてはそれらが必須となる為)や、第三試験として実施された『簡易調合』(長期の依頼や出先のハプニングで回復薬等が無くなる事が多い為、らしい)等も、前者は『算術』の『技能』を既に所持していたし、読み書きも自力で習得していたので危な気無くクリア。後者にしても、元より『技能』として所持していた俺は当然として、タツとレオの二人も理科の実験のノリで比較的簡単に合格していた。
……こうやって考えてみると、日本の学校教育って中々に凄いことやってたみたいだね。感謝感謝。
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そんな感じでトントン拍子に試験をパスして行き、何日間かに分けられて実践された全行程を達成した結果、俺達は三人揃って最終試験の会場である『獣人国』の『魔王国』とは丁度逆サイドの外れであり、俺達をこの世界へと召喚してくれたらしいあの国との国境である、『獣人国』でもある種の辺境として認識されている『リブレント』と呼ばれる場所へとやって来ていた。
『魔王国』とは違い、お互いに領土が隣接している関係上、一応は国交の様な何か(向こうは『支配されるべき劣等民族』として見下し、『獣人国』側も内心では『プライドだけ高い無能者』と馬鹿にしている)が在る上に、極少数の民間の商人達の間であれ交易も行われている関係上、『必要に駆られて』『仕方なく』作られた場所ではあるが、それでも二国間の交易窓口である以上はそれなりに賑わいを見せていた。
そして、そんな国境の辺境地である関係上、そこに持ち込まれる依頼は難易度の高い、所謂『厄介な依頼』と言う類いのモノが多く、どうしてもその類いの依頼が『溜まり易い』状況にあるのだとか。
そして、俺達の様に最終試験まで残った受験者には、それらの依頼から一つを選び出して達成する事が試験として課せられているのである。
……最終試験にしては、案外と簡単だと思われたかも知れない。
確かに、ここまでの試験に比べれば、高が依頼の一つや二つ程度を達成してこい、等と言われると、拍子抜けするのを通り越して、もはや楽勝だ!と笑いたくもなるのは分からないでも無いだろう。
実際に、俺達もそう『なりかけた』しね。
だが、ここで少し考えてみて欲しい。
ここまでの試験で、意図的に『人数を絞り込む』事に焦点を当てていたギルドが、最後の最後でそんな『簡単』な事を試験の内容にするのだろうか、と……。
当然の様に、その答えは『No』である。
そう、交易地として人や物の流通が在り、そして他ではあまり見られない様な魔物が出現する辺境の地である以上、国としてもギルドとしても、ここにはそれ相応以上の実力者『しか』配置はしないだろう。
そして、そんな人材を派遣せざるを得ないこの地では、他では滅多にお目に掛かれない様な強力な魔物もゴロゴロ出てくる。
当然、依頼のランクはそれらに合わせたレーティングを為される為に、他の処のそれらよりも低ランクに振られる傾向が出てくるのである。
そう、具体的に言えば、ここでは他の支部でも発注される共通依頼を、他の支部のそれよりも、一段階下のランクのソレであるとして貼り出したりしているみたいなのである。
そして、俺達が依頼候補としてリストを渡されたのは、この支部に於ける『銀級』用のソレであった。
他の受験者は『『銀級』相当の依頼なら、普段から受けていたから楽勝だ!』と適当に取って行っていたのだが、ここの支部の特性を加味して鑑みると、リストに入れられているのは、全て『金級』相当の依頼となるのである。
『銀級』用の依頼であれば、これまでにも経験が有る(自身のランクよりも一つ上の依頼までは受けられる)為に余裕……とまで行かないまでも、それでも危なげ無く達成出来たのかも知れないが、今回受けねばならない依頼は、それまでに経験の無い『金級』のソレである。
その事に気が付かずに軽い気持ちで突撃を仕掛け、同行したギルドの審査員に回収される哀れな受験者が続出する事態となったが、そんな状況を横目に見ながら準備を始めた俺達は、何が起きたとしても対応出来る様にと念入りに、そして同行する予定のギルドの審査員でもあるアストさん(権力をフル活用して捩じ込んだらしい)が呆れる程の厳重な準備を整えるまでに至ったのである。
「……流石に、そこまではしなくても大丈夫かと思いますが……?」
「万が一、って事が有るかも知れないからね?」
「……するだけしておけば、損にはならない」
「むしろ~、いざ始めれば『アレが無い』『コレが足りない』何てしょっちゅう起きるんだから~、多少多いかなぁ?位が丁度良いんだよねぇ~。まぁ~、確りと『持ち込める』のならって話になっちゃうけどねぇ~」
『まぁ、妾が着いている以上は、ほぼ確実に何も在りはせなんだろうがのぅ』
「……!」
『おお、済まぬな。今回はお主も来るのであったか。なれば、なおのこと何も起きはせなんだろうのぅ』
そう言いながら、自身と同じく俺の『従魔』扱いとなっており、今回の試験への同行が許可されているカーラの頭を、その小さなお手てでポスポスと叩く様に撫でるリンドヴルム。
そして、合法的……かどうかは少々怪しいが、それでも俺達と共に行動する事が出来る二頭と一人に対して、見送り兼出迎えをしたいが為に着いてきた七名が憤りを見せ、それをその付き添い兼辺境特有の依頼や魔物の討伐等を目当てで同行してきていた残りの三名が宥める、と言った場面が在りつつも、準備を万端に整えた俺達は、出発するために『リブレント』の通用門の一つへと足を運んでいた。
「小鳥遊君、大丈夫だとは思うけど、ちゃんと無事に帰って来てね?」
「そうそう。小鳥遊君は割りと平気で無茶をするから、大丈夫だとは思うけど先生は結構心配かな?」
「小鳥遊殿にとってみれば、普通に出来うる事なのだとしても、拙らからしてみれば『危険な事』として見えてしまうと言う事も覚えていて欲しいものです」
「まぁ、小鳥遊に限ってはそうそう大事にはならないだろうから、そう細かく言ってやるなよ、なぁ?」
「もっとも、某からしてみれば主様をどうこう出来る存在がいたとしたら、何処に逃げても一緒の様な気も致しますが、それでもお気を付け下さいますようお願い致しますね?」
「了解。出来るだけ早めに片付けて、さっさと帰ってくるとするさ」
「旦那様もぉ、無いとは思いますがぁ、危なく なったらキチンと逃げて下さいねぇ?帰ってきたらぁ、約束の通りに作ってあげますからぁ、ねぇ?」
「……努力する」
「僕らの方も~、なるべく早めに帰って来れる様に頑張ってみるよ~」
「終わって無事に昇級出来たら、ボクの家でパーティーでもどうかな?きっと楽しいよ?」
「あら、パーティーとは良いですわね。是非ともやりましょう」
「……ん、でも、その前に私達も依頼」
「そ、そうですよ!す、少しでも早く小鳥遊君に追い付きたいから、って言って、わ、私達も幾つか依頼を受けてしまっているんですから、は、早めに達成してしまわないとペナルティを受けちゃいますよ?」
そんな風に言葉を交わしながら進んでいると、俺達が目指していた通用門であり、唯一『あの国』から来た人間が通る事を許されている場所でもある処へと到着する。
あからさまに周囲の『獣人族』の人々へと『蔑み』や『侮り』と言った視線を向ける『人族』の商人や、あの国所属と思われる冒険者らしき連中に眉を潜めながらも、俺達の方に敵意と類いを飛ばしてくる連中や、女性陣を目の当たりにして絡んでくる連中以外は無視して進み、通用門脇に備え付けられている窓口にてギルドタグと受験票を提示し、『リブレント』の外へと出ようとしていた時だった。
「おら!さっさとどけってんだよ!!この獣臭せぇ『劣等人種』共が!!
この『勇者』様が、わざわざこんな辺境くんだりまで来てやってんだから、手前らは大人しく俺様の為に道空けてりゃ良いんだよ!!」
そんな怒鳴り声が聞こえて来たのは。
何事か?と思って声の聞こえてきた方へと視線を向けると、丁度『リブレント』の外から中へと入ってくる方の通用門で順番待ちをしていた『獣人族』の人達に絡んだバカが居たらしく、そこでトラブルが発生した模様であるみたいだ。
……おいおい、この『獣人国』に来ておいて、いきなり差別発言何て死にたいのかね……?
何て思いながら眺めていると、どうやらその絡んだバカが絡まれた『獣人族』の男性を吹き飛ばしたらしく、通用門から広場の方へと人が飛ばされて来た。
「おい!大丈夫か!?」
思わず声を掛けながら駆け寄ると、服装からして冒険者と思わしきその男性を大雑把に診察する。
流石に意識が無かった為に断言は出来ないが、それでも致命傷の類いは受けていなかった様子に安堵の息を漏らす。
それでも、肋骨の数本と利き腕と思わしき右腕に数ヶ所の骨折、そして全身に裂傷が見られた為に、予め作っておいた『強回復薬』を投与して外側から見て判断出来る負傷は治療してしまう。
そんな俺の元へと他の面子も駆け寄って来た為に、一命はとりとめている、と一つ頷いて見せると、皆一様に安堵の表情を覗かせる。
そして、皆に向かって言葉を発しようとした時、先程聞こえていた不愉快な声の持ち主が、俺達の方へと近寄って来た。
そいつは、外見だけならば、『完璧』とでも形容出来るであろう程の容姿をしていた。
黄金を溶かした様な金髪に濃い蒼眼、彫りの深い顔立ちにスルリと通った鼻筋と顎のライン。
鍛え上げられている事が窺えるが、無駄な筋肉は付けられていないのだろう事を予感させられるスラリとした長身に、一目で逸品であると理解出来る鎧を纏い、その腰に差した長剣は、抜いてもいないのに周囲を威圧するだけの存在感を放っており、見てもいないのに『業物』であると確信させられた。
そんな、絵に描いた様な『勇者』の姿を、加虐と色欲にて歪ませた表情にて台無しにしているそいつは、丸っきり無遠慮に俺達の方へと歩み寄ってくると、偶々手近にいた乾の手を強引に掴んで引き寄せようとしながら、その下劣な口を開いた。
「おいおい!まさか、こんな獣臭い処に来て一発目でこんな上玉にお目にかかれるとは思ってなかったぜ!
おら、さっさと行くぞ!この『勇者』様が、わざわざお前を抱いてやろうって言ってんだ!大人しく股開くのが礼儀ってモンだろうがよ!!
おっ!よく見たら、ここに居る女全員上玉じゃあねぇかよ!?良し!お前ら全員纏めて俺の女にしてやっから、さっさと服脱げや!!」
そんな事を口走りながら、乾を抱き寄せつつ服を剥ぎ取ろうとしてくる自称『勇者』。
あまりにも急な出来事故に固まってしまっていた乾だったが、それでも自身の身体へと伸びて来た手と先程のセリフから、その自称『勇者』が自分に何をしようとしているのかを理解し、掴まれていた手を振り払い、装備していた杖を抜いて突き付けながら俺の背後へと逃げ込んで来る。
そして、掴まれていた腕を不快そうに服で擦りながら『うわっ、キモッ!』だとか『あいつを思い出しちゃったじゃない……』だとかと呟いている様子からは、あの自称『勇者』に対する不快感しか感じられない。
そして、その当の自称『勇者』の方も、最初は振り払われた自身の手を呆然と眺めるだけだったが、何を思ったのか腰の長剣を抜き放つと
「優しくしてやろうと思ってたけど、もう止めだ。手足の一本でも叩き落とした後に、その男が見てる前でグチャグチャになるまで犯してやるよ!!
もう、勘弁何てしてやらねぇから覚悟するんだな?このアバズレが!!」
とか喚き散らし始める。
そして、こちらに対して剣を振り上げ、そのまま振り下ろして俺へと攻撃を加えようとしてくれたその阿呆に対して、カウンター気味に特濃の殺気をぶつけてやると、その表情を驚愕に歪めたままに動きを止めてしまう。
そんな、中途半端な姿勢で固まっている阿呆を放置したまま、怪我人と女性陣を避難させると、それまで鞘を被せたままにしていた相棒の刃を剥き出しにすると、未だに固まったままになっている阿呆へと突き付けた後、表面上は笑顔に見える状態のママにこう宣言した。
「さて、何処ぞの馬の骨とも知れない間抜けよ。俺の連れに手を出そうとしたんだから、今すぐ死んで詫びるか、もしくは死ぬか、どっちが良い?選ばせてやるからよぉ……?」
怪我人を助けに走った事から、お人好しの類いだと認識されたんだろうけど、同行者を侮辱された事を笑って許してやる程の『お人好し』では無いってことを、確りと教え込んでやるとしますかねぇ……。
次回!対勇者戦開始!お楽しみに!!
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