65・……え?誰ですか?
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従者達を斬り伏せ、騒動の発端であったクソライオンの四肢を切断し、トドメとしてその首を斬り落とそうと剣を振るったタイミングで
「そこまでです!!」
と、何となく処か割合と聞き覚えのある女性の声が闘技場に響き、思わず止めるつもりの無かった刃が、その役割を十全に果たす事無きままに、皮一枚だけを斬り裂いた処で『ピタリ』と静止する。
自身の命を奪うハズだった刃が、その直前で止まった事に安堵したのか、それとも眼前まで迫っていた『死』の恐怖によるモノなのかは定かではないが、それでも結果としては、クソライオンが下半身のコントロールを失って色々と垂れ流しながら、泡を吹いて白目を向きながら失神した、と言うのが絶対的な『事実』である、と言えるだろう。
そんな、文字の通りに『クソ』ライオンと化しているソレは放置したままに、俺はここ一月程で知り合い、出会い方は最悪ながらも、ある種の『和解』を経てからはほぼ一日中行動を共にする事となり、ここ数日顔を合わせていなかった相手を脳裏に思い浮かべながら、その声の持ち主が居るハズの方向へと視線を向けた。
そして、そちらを向き、その人物を目の当たりにした際に、思わず、と言った形容詞が着いてしまうであろう程に、自然かつ無意識的にポロリと言葉が零れ出てしまった。
「………………え?誰?」
そう、俺の視線の先に居て先程の発言をしたと思われるのは、下半身が蛇であるナーガのドレスを身に着けた女性と、これまた下半身が馬であるケンタウロスのドレスを着た女性と共に在り、自身もそれまでそんな類いのモノを着ていた覚えが欠片も無い様なドレスを身に纏った上に、どちらかと言えば活発的な印象の強かった仕草を一変し、何処ぞのお姫様でしょうか?とでも問い掛けたくなる程の気品溢れる仕草と雰囲気を纏ったライオネルの女性が立っていたのであった。
思わず、予定上は俺の次に闘技場にて闘いを行う予定であった為に、後方の控え室にて待機しており、かつ先程発言した女性と俺達の中では一番付き合いが有ったハズのレオへと、視線で
『コレ、知ってたか?』
と問い掛けるが、速攻で
『いや、欠片も知らんけど……?』
と、普段の間延びした感じからは想像も出来ないであろう程に、即座にガチの返答がもたらされる。
君らって、そんなキャラクターだったっけ?と内心思いながら再度視線を向けようとした時、発言した女性の方を向いた際に視界の端っこに映り込んでいた、護衛と思われる兵士みたいな格好の連中が階段を駆け下りて来て、未だに闘技場の底の部分に居る俺の方へと駆けよってくる。
「急げ!若様を『救出』しろ!!」
何事か?と思いながらその兵士達を眺めていると、未だ俺が切っ先を突き付けたままとなっているクソライオンを救出しに来たらしい事が会話から判断出来たのだが、それと同時に、どうやら俺に対しても敵意や悪意の類いを持ってはいないものの、それでも戦意は有るらしく、駆け寄りながらも腰の武器を抜き放ち、その先端を俺へと向けながら構えを取っていた。
……これは、『そう言う事』だと思っても良いのかな?
そんな思いと共に視線を先程と同じ様に例の女性へと向けるべく移動させると、その途中で観客席にいた女性陣の方に向かっても、俺と同様に武装した兵士が差し向けられている様子と、それに戦意満載で『対処』しようとしている女性陣の姿が、他の観客が先程の発言によって逃げ出している関係から、手に取る様にハッキリと視認する事が出来た。
思わずそこで視線を止めてしまいそうになるが、精神力で半ば無理矢理に動かし続け、発言をしていた際に居たハズの、クソライオンが最初に立っていた高台へと視線を向けると、声量としては『静か』と表現出来る程度ながらも、確実にこちらの意思を伝達し、勘違いや意見の食い違い何てモノが介入する余地を挟ませない様に、ハッキリとした口調にて確認をする。
「……この行動は、俺達と『敵対する』って事で良いんだな?シンシアさん……いや、シンシア・レオンハルトさん、と呼んだ方が良いか?」
それに対して、一拍遅れながらも、それまでの雰囲気をかなぐり捨てながら慌てて俺の発言に対して
「なっ!?何でその事を!!?いや、それよりも、何でボクらがご主人達と敵対する何て事になってるの!!?」
と、見当外れな返答をしてくるシンシアさん……改めてシンシア・レオンハルトに対して俺は、その残念極まる頭の出来に嘆息しながら、早急な問題として近付いて来ている兵士達に対して大きく一歩踏み込むと、まだ手に持っていた剣の、結果的に『峰』となっている研いでいなかった方の刀身にて軽く打ち払い、意識を刈り取ったり武器を取り落とさせたりして無力化を進めて行く。
「……何でも何も、現にこうして敵対しているだろうに……」
「大方~、向こうは僕らに『敵対した』つもりが無いんじゃ無いの~?まぁ~、こんな風に武器を向けてきている以上は~、言い逃れはさせないつもりだけどね~?」
そう呟きながら、俺と同じ様に近付いて来ていた兵士達を、殺してはしまわない様に『優しく』ぶん殴って気絶させたり、『緩め』に絞めて落としたりしている、レオと同じ様に控え室へと押し込まれていたタツと、さも面倒臭そうに小太刀による峰打ちによって兵士達の意識を刈り取っている、先程まで控え室の中に居たハズのレオ。
その呟きが聞こえたのか、それとも別の理由からかは不明だが、何やら考え始めるシンシアだったが、その様子を左右から見ていたサーラさん(多分)とサーフェスさん(こっちも多分)が呆れた様な視線を向けつつ、同じく呆れた様な声色で両サイドから彼女のミスを指摘し始める。
「……だから、某は『止めておけ』と、『放っておけ』と言っただろう?下手をしなくても、この行動は主様達に対する敵対行動として認識されかねない、と」
「私もぉ、予め言っておいたわよねぇ……?こんな中途半端な兵士何てどれだけ連れていってもぉ、旦那様達に敵うハズも無いんだしぃ、むしろ怒らせるだけなんだからぁ、私達だけで『お願い』するべきよぉ?とも言っておいたと思うのだけどぉ?」
「ボクだって、こんなことやりたくなんて無かったよ!!……で、でも、ボクにもその……『立場』ってモノが在るから、こう言う行動を取らなきゃならない時は、ある程度の人数を連れて行かないとならないし……、それに、あのバカ兄貴何てボクも放っておきたいけど、一応は生かしておかなきゃ後が面倒になるから、回収だけはしないといけないんだよ……。
でも、アレを回収するだけなら、そんな大事にはならないんじゃないかなぁ?って思ってたんだけど……マズイの?」
「いやいやいや、そもそも事の発端を鑑みなくても、主様達に喧嘩を売ったあの阿呆を横からかっ拐う様な真似をすれば、それは即ち『自分達はコイツに味方していますよ!』と大声で宣伝する様なモノでしょうに……」
「……え?それってマジで……?」
「……マジもマジ、大マジよぉ?それにぃ、旦那様達が一度敵対した相手をぉ、壊滅させるか反撃出来ない程追い詰めるまでぇ、追撃する手を止めないのなんて散々見てきたでしょぅ?私達は今ぁ、あの時の『高位魔族』の連中とぉ、同じ様な立場に居るって事はぁ、理解出来ているわよねぇ……?」
「……えーっと、もしかしなくてもボクって……やらかした?」
「「多分、思いっきり」」
「……どの程度だと思う?」
「……開幕土下座でギリギリ死刑回避?」
「親に怒られる心配よりもぉ、この場で殺される心配をする方が良いレベルかしらぁ?」
と、言った感じで会話をしていたらしい事は、微かに風に乗って聞こえてきていた声と、レオの読唇術による同時翻訳によって判明したため、向こう側の事情は何となく把握出来たが、だからと言って既に俺達へと敵意の類いを向けてしまっている以上、手加減をしてやらねばならない理由にはならないけどね?
まぁ、兵士さん方には『殺意』の類いは感じられなかったから、『俺達』は殺してないけど。
そんな感じでレオによるアテレコを聞きながら、俺達の方へと差し向けられた部隊(正確には『クソライオン回収部隊』みたいだけど)を軽く捻ってやりながら、女性陣の方から聞こえてくる悲鳴や爆音から意識を無理やり反らしていると、どうやら俺達の方へと振られていた人員が尽きたらしく、闘技場の底の部分にて立っているのは、俺達三人だけとなっていた。
一応、確認の為に女性陣が居たハズの辺りに視線を向けると、どうやらそちらでも最後の一人が『無事』に吹き飛ばされたらしく、女性陣は全員元気そうな様子だが、それと反比例するかの様に兵士さん方の亡骸が死屍累々と散らばっていた。
まぁ、案の定の結果ではあったものの、転位組に手を汚させてしまったか……、と一瞬落ち込み掛けたが、よくよく見てみれば倒れている兵士の間を、杖を持った桜木さんがチョコチョコと行ったり来たりを繰り返しながら、回復魔法を掛けているらしき様子が見えた為に、おそらくは『死んでは』いないのだろう、とホッと胸を撫で下ろす。
さすがに、魔物相手ならともかく、人間相手に手を汚させるのは気が引けるからね。
それと、俺達の『計画』にも支障が出かねないし。
何て事を考えていると、複数名が高台からの階段を下ってくる足音が聞こえた為にそちらへと振り返る。
すると、ついさっきまで俺の隣に居たハズのレオが、いつの間にか今回の件に於ける最重要人物であろうシンシア・レオンハルトの首もとにその白刃を突き付け、所謂『人質』とでも表現するべき状態として連れてきたのだが、どうやっても身長が150程度のレオでは、平均身長が高い『獣人族』である彼女(大体180位)の首もとに刃を添えるのは少々無理が有ったらしく、何とも締まらない事に人質として確保したハズの人物に背負われながら、その首もとへと刃を突き付けている、と言う状態となってしまっている。
そして、更に締まらない状態となっている原因の一つに、人質となっているハズのシンシア・レオンハルトの方も、自らの喉元の刃による死の恐怖に顔をひきつらせる訳でもなく、どちらかと言えば自身が『主』として認めているレオと触れ合え(レオがおんぶされている状態)て嬉しい、とでも言いたげな表情をしている事が挙げられるだろう。
何か思ってたのと違う、とでも言いたげな、レオの怨めしそうな視線を無視し、これまたいつの間にか俺達の側まで来ていた女性陣の、俺達への勝利の祝福を受け取り、俺に対する攻撃(スキンシップ等)を避けながら、未だに気絶した状態で放置されているクソライオンへの攻撃(ダメージを与えつつ殺さない様に手加減する技術には舌を巻かされる)を傍観する。
そして、ようやく『獣人族』組の三人がこちらへと到着した為に、シンシア・レオンハルトの背中から降りて俺達の方へと戻ってきたレオから、預けておいた相棒を受け取ると、その石突き部分を闘技場に敷かれた石畳の床へと突き立てて、無造作に突き破りながら自己判断でも滅多に浮かべない様な『満面の笑み(目は笑ってないバージョン)』を三人へと向けつつ、こう訪ねる。
「……で?改めて聞くけど、君達は俺達と敵対する事を選択した、って事で良いんだよな?」
そんな『笑顔』の俺に対して、約一名はそれまでの上機嫌そうな表情を引っ込めて顔を青ざめさせ、残りの二人は速攻で地面へと膝(多分)を突き、ドレス姿にも関わらず土下座の体勢へと移行する。
そして、他の二人の行動に釣られる様にして、一拍遅れながらも最後の一人が体勢を変更させると、奇しくもこちらのタイミングはバッチリと一致させ、まるでこちらが血も涙も無い悪魔である!とでも言いたげな程に必死な声色で
「「「降伏致しますので、命だけはご勘弁を!!」」」
と叫ぶ様に返しながら、頭を地面へと擦り付けるのであった。
……君達は、俺の事を何だと思っているのかね……?
******
「……じゃあアレか?君らがここ数日いなかったのは、自身の意思ではなく家の方から留められていたからで、シンシアさんの兄でもある『コレ』の所業を知ったのはホンの少し前。
そこから、俺達による被害の拡大と、コレを廃嫡にする為の手続きに使うために回収する必要性が有ったから、こうして兵士を連れて来た、と?
……それならまだ、俺達の首を狙っての挙兵、って言われた方が信用出来るんだけど?」
「……正確には、某とサーフェスはシンシアと同格の家の出でして、昔から交流が有った事から幼馴染み的な関係が在りまして……」
「……その関係でぇ、シンシアちゃんのお家に顔出しした時にぃ、シンシアちゃん諸ともに捕まっちゃいましてぇ、こうして便乗して脱出してきた訳なのですがぁ、ある意味シンシアちゃんとは目的が違うのでぇ、私達は別口と考えては頂けませんかぁ……?
これでもぉ、旦那様方を利用する様な真似はぁ、止めておきなさいよぉ?と忠告していたつもりだったのですけどねぇ……」
「……シンシアにも、このままアレに家を継がれると、このレオルティアが崩壊しかねない、との思いがございましたから、この機を逃したくなかったのだろうと思われます。他の方々の方に向けられた兵士も、そもそも捕縛や殺傷が目的のそれではなく、ただ単に保護するのが目的だったハズですので、某達としては、主様と事を構えるつもりは毛頭無く……」
そう締め括って再度頭を下げるサーラさんとサーフェスさん。
そんな二人の頭頂部を眺めながら、どうしたものか、と思案する。
……説明を受けた限りでは、本当に俺達へとあのクソライオンが絡んできた事を把握したのはごく最近であったみたいだし、おそらく、こうして行動に出たのも、俺達が負けるハズがない、との思いからの行動だったのだろう、とも理解出来る。
それに、結果としては、こちらには一切の被害が無いままに事が終わっている以上、今シンシアさんにやらせている空気椅子重り抱き+目の前での猫じゃらし誘惑(猫科であるだけに動くものを反射で捕まえようとする癖がある)で済ませてやるのが妥当と言えば妥当なのだろう。
……だが、だからと言って、結果的には俺達が『利用』された形となるのは不本意極まるし、何やかんや言っても、そこそこシンシアさんの事を気に入っていたらしいレオはある意味裏切られた様な形となる為に、パッと見た感じでは普段通りだが、俺達から見れば、確かに落ち込んでいると理解出来る。
まぁ、あのクソライオン自体は、手続きが終わり次第レオンハルト家から放逐され、次期家長にはシンシアさんの弟が着く予定らしいから、この程度で手打ちにしておくのが『吉』かねぇ?
あんまし突っ込み過ぎて後で恨みを買うよりは、多少不満が残ったとしても『ある程度』で止めておく方が、お偉いさんの家であるらしいレオンハルト家に対して『貸し』を作って置ける、ってメリットもあるしね。
視線でレオへと許可を求めると、どうやら向こうの方でも似たような結論が出ていたらしく、少々微妙そうな表情をしながらも頷いて見せたので、この件はここまで、と言う事にしておくとしますかね。
一応、二人にもそれなりの罰則(しばらく俺達との接触禁止)を言い渡し、じゃあもうやることも無いのだから、別段疲れてもいないけど宿に戻ろうか?となった段階で、サーラさん達がこんな事を言い出した。
「折角なのですから、この機会にレオンハルト家に行ってはみませぬか?」
と。
何でも、レオンハルト家も『獣人族』である関係上、強者には並々ならぬ関心を持っており、その上で元嫡男に勝って御家騒動を未然に防いだ俺達ならば、おそらく追い返しはしないだろうし、むしろ歓待される可能性が高いのでは?との話だったので、迷惑を掛けられた事もあり、お偉いさんの家に対する興味も有った為に、その話を受けてノコノコとついて行く事にしたのであった。
「……お、おーい?ご主人~?ボクって、何時までこの格好でいれば良いのかなぁ~?いくらボクでも、この格好って結構キツイんだけど~?ね、ねぇ~?ちょっと~!?ボクだけ置いて行かないで~!!?」
なお、半ば冗談でこのまま放置しておいたシンシアさんは、三十分程してから半泣きで追い掛けて来るのだが、それは別のお話。
ちなみに、主人公達は、『殺意』や『悪意』が有れば、半ば反射的に問答無用で殺しに掛かりますが、そうで無ければきちんと手加減してあげます。
あと、サーラとサーフェスまでドレス姿だったのは、レオンハルト家に二人の分のドレスも置かれていた為です。まぁ、主人公達に見せたかった為でもあるのですけどね?
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