63・何故か決闘する事になりました……(二回目)
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あの現地民たる『獣人族』である三人からもたらされた情報により、活力を取り戻した俺達に取っては順調かつ穏やかな旅路が続いた。
時折遭遇した盗賊を壊滅させたり、予め受けておいた依頼で討伐対象となっていた魔物を狩ったり、女性陣による熱烈なアピールがある程度まで治まった為に、それなりに安眠出来る様になったり、相変わらずそこだけは譲歩してくれないサーラさんに鞭を振り下ろしたりしながら、『安全』かつ『平穏』な旅を続ける事約一周。俺達が当初から目指していた都市であるレオルティアへと到着したのが二日前の事。
そして、到着してから二日経った今現在、俺は、都市の中央に据えられた闘技場にて数多の市民と、こうしてここに俺が居る原因となったクソライオンに見下されながら、その闘技場の中央部にて佇んでいた。
『さぁ、始まりました!!今回は、皆様もご存知!この闘技場のチャンプにして、このレオルティアでも名門として知られているレオンハルト家の長男でもあられるライガー様が、自らの『奥方候補』の方々の為に、かの悪漢を叩き潰すべく立ち上がられた!!
事の起こりは二日前!ライガー様が相思相愛であられる『奥方候補』の方々と街を歩いておられると!とある悪漢達が『奥方』様方に絡まれる事件が発生した!それを救うべく間に入られたライガー様に対して、あろう事かその悪漢は『そいつらは俺達の連れ何だから、関係無い奴が入って来るな!』と罵声を浴びせかけた!!
当然、その場で切り捨てる事も出来たライガー様だったが、『奥方』様方にその様な場面を見せるのは忍びない、と思われるのと同時に、どう足掻いても変わらぬ運命なのであれば、せめて少しでも可能性の有る方を選ばせてやろう!とのお心遣いにて、こうしてご本人との試合を行ってやろうと仰せになられたのだ!!
そして、悪漢共は勝てれば無罪放免、負ければその場でライガー様によって裁かれる事となっております!では、ライガー様の入場です!!!』
そんなアナウンスと共に、それまで高台となっていた場所から、先に入場させられていた俺を見下していたクソライオンが入場し、既に『勝った』とでも言いたげな視線を俺へと向けて来るが、その視線もうざったい会場アナウンスも無視した状態で、『防具も鎧も無い』ままに、右手に握った『刃の潰された剣』へと視線を落としながら、調子を探る為に軽く二三度程素振りをしておく。
そんな俺へと侮蔑を混ぜた様な視線を向けながら、自身は『豪奢な全身鎧』を身に纏い、一目で名剣の類いであろう『刃の付けられた剣』を腰から引き抜くと、共に闘技場へと降りてきた『完全武装の従者数名』によって自らの前方へと壁を作らせると同時に、角の方で控えていた審判へとチラリと視線を向ける。
すると、その視線を向けられた審判も、まるで『解っています』とでも言いたげな表情を浮かべながら一つ頷いて見せ、それを見たクソライオンが満足そうに何度も首を縦に振っている。
……どうやら、既に審判も買収済みなのは確定っぽいな……。
客席の反応を見ている限りだと、目の前のクソライオンの手下だろう司会の口上を信じている阿呆は居ないみたいだが、それでも解説の中に出てきたナントカ家云々の話から察するに、そこそこの『権力』は持っている、って事なのだろう。
まぁ、こんなデカデカとした闘技場を貸し切りに出来るんだから、言わずもがなであったかも知れないけど。
そんな風に自らが置かれている状況を解析しながら、何故にこんな面倒な状態になっているのか、を思い返してみる。
……まぁ、『思い返してみる』なんで大層な事を言っても、この事態を説明してしまえば
『女性陣がナンパされていたので、助けに入ったらこうなった』
と言う一文に集約されてしまうのだけどね?
そう、事の起こりは俺達がこのレオルティアへと入り、取り敢えずの宿を決めた後、サーラさん達『獣人族』組が、実家に顔を出してきても良いですか?とお願いしてきた為にそれを快く許可し、序にたまにはバラけて観光でもしてみようか?と言った感じの話題に移行した事もあり、俺達と女性陣が別々に行動していた時の話である。
偶々俺達が移動した先に女性陣の塊が居たのだが、そこで二足歩行のライオン(オス)みたいな見た目の奴、早い話が今現在俺と相対しているクソライオンと女性陣が何やら口論の様に見える状態となっていたのだ。
すわ何事か!?と近寄ってみると、その途中で聞こえてきた会話の内容から、ライオン野郎の方が一方的に
『お前ら程の器量であれば、我のハレムに加わる栄誉を与えてやっても良いぞ?』
とか、口説いているのか良く解らない様な事を言い出したみたいである事、女性陣も最初は意味不明だった事もあり、無視して移動しようとしていたのだが、返答が無いと見るや否や手下や取り巻き共に移動を妨害させた上で
『我へ返答すら返せぬ程に感動しきっていたと言う訳か、ならば早く申すが良い!それに、我に一目惚れした恥じらいから、我の前から移動しようとするそのいじらしさ、大層気に入った!さぁ、閨へ行くぞ!!』
とか言い出したので、流石にキレかかった女性陣が、お前の様な発情猫の相手なんて願い下げだ!(オブラートに包んだ上で更にチョコレートでフォンデュした並みに緩和した表現)的な事を言い返し出したのだが、相手は自分にとって都合の良い事しか聞こえない便利な耳をしていたらしく、何を言っても
『愛い奴よ、では、閨へ行くぞ!』
としか返答しない為、そろそろ実力行使が必要かな?と言うタイミングで俺達が割って入り、そのまま『俺達の連れだから』と言って連れ出したのだが、どうやらその際に交わした俺達の会話を聞かれていたらしく、後日俺達が泊まっていた宿まで手下が押し掛けてきて、一方的に『決闘』の日時を通達してきたのである。
……なら、無視すれば良かったんじゃないのか?と思われたかも知れないが、この『獣人国』では決闘を申し込まれた場合、それを受けなかったり逃げ出したりした場合は、周囲から『臆病者』のレッテルを貼られるだけでなく、相手が主張する事が全て正しい、と認識される様になってしまう為に、受けざるを得なかった訳なのである。
こちらも対抗して何かアクションを起こせれば良かったのだろうが、それが出来そうな現地に伝手の有る人材である地元民の『獣人族』組三人は、結局決闘当日まで帰ってくる事の無いままにこうして闘技場まで行く破目になり、今現在こうして諸悪の元凶であるクソライオン(+その他)と相対している訳なのである。
わざわざこの手のオープンスペースで殺り合おう、と言ってくると言う事は、ほぼ確実に何かしらの『仕込み』か『妨害手段』を用意しているんだろうな、とは思っていたし、予めルールの類いも通達してきていない事を鑑みれば、後出しで何かしらの理不尽を押し付けて来るのであろう事も、一応予想はしていた。
だが、呼び出されて行ってみれば、やれ『その鎧は規定違反だから使えない』だとかの難癖を付けられ、普段使っていた『試練の迷宮』産の軽鎧は強奪されそうになるし(レオによって回収済み)、『規定上ここに有るモノしか使えない』だとかの横槍を入れられて、碌に関節も動かない様な粗悪な全身鎧ばかり有る部屋に通されたりもした。
そこまでは、まぁ、鎧は最悪使わなくても喰らわなければ無くても良いので、装備しないで行く事にすればそれで大丈夫だったのだが、問題はその後だった。
何とも腹立たしい事に、俺のメインウエポンでありこれまで幾多の戦場を共にしてきた相棒である『朱烏』は、決闘の規定上『槍』である為に使用が禁止されてしまったのである。
何でも、元来より決闘とは『神聖なモノ』であり、両者が同じ土俵に上がって『対等』に闘う事でどちらの言い分が正しかったのか、を計る場でもあったらしく、その為に一方的に遠距離から攻撃出来る『槍』は使用可能武器の中には入っていないのだそうな。
……正直、色々と理不尽を押し付けられているのはこちらなのだし、パッと見た感じでは俺達はおろか女性陣にも匹敵しうる戦力の持ち主は居ないみたいなので、もう力ずくで暴れてやっても良いかなぁ?何て物騒な事を考え出したりもしたが、それだと万が一にも主犯を取り逃がした場合、後々面倒な事になりそうでもあったので、泣く泣く相棒を手放し(当然、レオによって即座に回収済み)て、これまた闘技場の方に予め用意されていた、殆どガラクタの類いしか入っていなかった武器庫の中で、まだ比較的マシな方であり、俺が振るっても直ぐには壊れないだろう程度には頑丈そうな剣(ただし刃無し)を選んで闘技場まで進み出て、冒頭のアナウンスを聞きながら調子を確かめる為に素振りをしていた、と言う訳なのである。
その上に、クソライオン側は『支配者階級故に配下の者を効率的に采配するのも実力の内である』だとかのふざけた理由から、ああしてフル装備の連中を引き入れている、って訳なのである。
そんな事を思い返しながら、全体的に見て擂り鉢状になっている闘技場の底の部分から、斜めになっている壁面に相当する客席の方へと視線を向けて、グルリと大雑把に見回してみる。
すると、俺の方には『頑張って!』だとか『ファイト!』だとか『ぶっ殺せ!!』だとかの声援(?)を送りながらも、クソライオンの方には受けただけで凍り付きそうな程に冷たい視線と、思わず俺ですら反射で構えてしまいそうな程の濃厚な殺気を照射している女性陣と、その護衛のリンドヴルムとカーラの姿を発見する事が出来た。
本当であれば、タツとレオの二人も護衛としてそちらに付けたかったのだが、先程のアナウンスでも分かっているとは思うが、今回の決闘の相手として指定されている面子でもあった為にそれが叶わず、結局妥協点としてリンドヴルムとカーラを付けているのが現状である。
……実際の処、『戦闘』にさえなってくれれば、女性陣に対抗出来るだけの戦闘力を持っている存在は、俺達の身内を除いてはここには居ない。
だが、何も彼女らの身柄を押さえるのに、必ずしも闘う必要が有る訳ではない。
隙をついて毒を盛る、前に集中している間に拐う、一人席を立った時に襲撃する等々と言った様に、正面から戦闘を仕掛けなくても、ある程度の数さえ揃えられれば一人程度ならば無効化出来るだろうし、それさえ出来てしまえば、仲間意識の強い彼女らならば、相手からの要求を呑んで降伏する事まで有り得てしまう。
……別段、俺としては、『本人の意思』からの行動であれば、何時如何なるタイミングで別行動の要求をされたとしても、承認する覚悟が有る。
その理由が、俺達とはもう行動を共に出来ない、と言うものから、好きな異性が出来たから、と言うものまでオールOKだ。多少寂しくはあるけどね?
だが、その別離を強制し、本人の意思を全く持って反映させるつもりが無い第三者からの介入によって引き起こされる様な事態となったらのであれば、その対象までの障害を力ずくで粉砕し、物理的な説得によってその要求を取り下げさせる準備も、また整っているのだけれども。
そんな思いと共に、俺が見ていると気付いた乾と先生が大きく、久地縄さんと阿谷さんが小さく手を振って来たので俺からも振り返していると、その様子を見下した様子で眺めていた眼前のクソライオンがおもむろに近付いて来ると、自分よりも格下の者にするかの様な、高圧的な態度で舐め腐った事を抜かし出す。
「……全く、貴様の様な下劣で勘違い甚だしい寄生虫が付いていたお陰で、我と相思相愛にして我が最愛のハレム要員であった我が妻達と逢瀬を重ねる事が出来なかったではないか!
既に彼女らは、我のモノとなることを無言の内に了承し、我を誘うために恥じらいからの行動まで見せていたと言うのに!!
……まぁ、それも貴様の様な『ムシケラ』をこの場で我が叩き潰せば、我が妻達も一時の気の迷いから目を覚まし、進んで我の閨へと入って来て種をねだり始めるだろうがな!!
そして、流石の『黒槍』でも、得物の槍を取り上げられてしまった上に、これだけの戦力差が付いてしまえば勝ち目は有るまい?
我は貴様を叩き潰し、貴様が横恋慕している美姫たる我が妻達と、強者としての栄光を同時に手にする事となるのだ!悪いことは言わぬ。今すぐ降伏すれば、命までは取らぬでおいても良いぞ?」
そう、どうやったのかは不明だが、それなりに彼我の距離が離れていたにも関わらず、周囲の反応を見るからにどうやら俺だけに聞こえる様に、と話し掛けて来ていたみたいなのだが、まぁ、それは割合と『どうでも良い』事だろう。
それに、他の突っ込み処として、何やら俺を指して誰かと勘違いしているみたいだとか(『黒槍』って誰よ?)、どうやったらそんなに自信満々で居られるのだろうか?とか、そもそも本気で女性陣から好かれている、とか思っているんだろうか?(割合とガチで殺気を向けられている事に気付いていない?)だとかは色々と有るのだが、俺としてはどうしても看過出来ない事を、あのクソライオンは口にしてしまっている。
そう、この『飛鷹流』の継承たるこの俺を、得意武器を奪い、装備を整え、人数を揃えた『その程度』ではしゃぎ回っている阿呆共が『勝てる』と、自分達の方が上である!と宣言し、もう既に勝ったつもりでいる事である。
その、俺と、俺の流派の先人達に対しての極大の侮辱に対して、周辺に発散させずに自らの内側に留めておけるギリギリのラインまで殺気や戦意と言った類いのそれを溜め込んでいた俺の耳に、審判からの声が届く。
「では、これより決闘の開始を宣言する!古来よりのルールに則り、この決闘の主催者である両名の内、どちらかが降伏しもう片方が受諾する、もしくは片方が死亡するまで戦闘を行い、残った方が勝者となる!双方、異存は無いか!?」
「我は構わぬぞ?」
そう言いながら、俺へと『どうせごねるのであろう?』とでも言いたげな視線を向けて来るクソライオンに対して、視線に殺気を混ぜてやりながら審判へと確認を取る。
「……何かしらの『反則行為』の規定は有るのか?」
「無い!『この場に在るモノ』であれば、何を使っても問題にはならない!もっとも、外側から干渉する事は反則となるが、基本的には『何をしても良い』!」
「……了解した。ならば、俺も構わない」
そう答えてやると、審判もクソライオンと似た様な表情を浮かべながら端へと寄ると、その場で手を掲げ、戦闘の開始を告げながらその手を振り下ろした。
すると、その直後に、既に抜剣していたクソライオンの従者の一人が飛び出して来て、俺の脳天目掛けて得物を振り下ろして来る。
「ハッハァ!油断しやがったな!!例え『二つ名』付きであっても、得意の得物が無けりゃあ大して強くもねぇからよぉ、そんな奴は俺一人でも十分過ぎるよなぁ!!!」
そんな事を抜かしながら振り下ろされる剣に対して俺は、その手に持っていた刃の付けられていなかった剣を『わざと』合わせると、根元から鋒に至るまでの刀身全体を使って受け流す。
流石に、あれだけ自信満々だっただけの事はあるらしく、金属と金属が擦れ合わされる際に発生する甲高い音と共に、幾つもの火花が発生し辺りに散らばって行く。
必殺のつもりで放った一撃を凌がれた事を驚愕していた従者だったが、それでもこちらの刃引きされている刀身では、自身の全身鎧には文字の通りに『刃が立たない』事を思い出したのか、防御には動きを割かずにひたすらに剣を振るってくる。
そんな、攻撃しか意識されていない剣に、内心ほくそ笑みながら、初撃と同じ様に刀身を使い、敵の攻撃を凌いで行く。
「ハッハァ!どうした?防いでばっかりで!ちっとは攻撃してこいよ!!」
そんな事を叫びながら、威力重視で大振りな攻撃を仕掛けて来た敵に対して
「……良いだろう。では、死ね」
そう呟く様に返答してやりながら、全身鎧の弱点である鎧の『継ぎ目』であり、無茶な攻撃によってがら空きになっていた脇の下の間接部に対して、手に持っていた剣による攻撃を加えてやる。
すると、その剣はまるで熱したナイフでバターを切り取るかの様に、意図も簡単に間接部を切り裂きながら鎧の内側へと侵入すると、そのままの勢いにて柔らかな人体を切断し、入ったのとは逆側の肩口から滑り出て、一刀の元に命を断ち斬って見せた。
……ふむ?刃が付けられていなかった、ってだけで、結構良い品だったんじゃないのかな?コレって?
何て感想を抱きながら視線を正面へと向けると、唖然とした従者共とクソライオン、そして、愕然としている観客共と歓声を挙げている女性陣の姿が目に飛び込んで来たのであった。
……自分達が『何』に喧嘩を売ったのかは理解出来たみたいだけど、その授業料はそれなりに高価だ、って事は、どうやら理解していないみたいだねぇ……。
そんな思いと共に、普段使っていた相棒であれば、とっくに殺傷圏の内側であったハズの距離を、現在の得物を振るう為の適正距離にするために歩み出すのであった。
刃が無いハズなのに斬れていた理由だとか、クソライオンの末路だとか、『獣人族』組が何処で何をやっていたのか、等は次回以降となる予定です。
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