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06・診察結果は大丈夫そうでしたけど取り敢えず看病します

周辺の地形把握……と言う建前の『お題目』で、取り敢えず周りを見てきた(+色々取って来た)俺達だったが、いざ海岸に戻ってみれば他の野郎共は大神(クラスの取り纏め役のイケメン君)にホイホイ着いて行っちまった後であり、残されていた女子達には、体調不良を訴えている者が居るらしく、そいつの診察を先生から頼まれてしまったのである。

……この教師、俺達を何だと思っているのか、小一時間程問い詰めてやりたい処ではあるが、その間に急変されても困るから、まずはその体調不良者の様子から見てみるとしますかね?

え~っと?どれどれ、って……


「おいおい、具合が悪い奴って言うから誰かと思えば、(いぬい)かよ……。しかし、乾がこんな状態なのに、大神の奴は何でこいつを放置して森なんかに?」


俺が連れてこられた先で木陰に横たわり、青い顔と荒い吐息を漏らしているのは、その可愛らしくも整った顔立ちと、出る所は大きく出ても、引き締まるべき所はきっちり引き締まっているプロポーションから、男子からの絶大な人気を集めているクラスのアイドル的存在であり、それと同時に、その気性から女子達からもやっかみを受けずにクラスのムードメーカー的な役割も兼任している……との情報が入っている、クラス委員を務める『乾 紗知(さち)』だった。


……情報が伝聞染みている?

当然。

だって、本当に又聞きだもの。


小さな頃から祖父(師匠)達によって、不定期的にあっちこっちに修行と言う名目でつれ回されていたので、昔からクラス内とかの人間関係等にも興味が薄く、どうにも他人に興味が持て無い上に、顔の造形等は割りとどうでも良いと思っていた口なので、俺自身からその手の評価等はどうやっても絞り出せない。

さっきの情報だって、クラスの野郎共が話しているのを聞いていたり、女子達の『おしゃべり』の内容が流れてきたりしたのを纏めた結果なのである。

……まぁ、居たり居なかったりが激しかったり、夏真っ盛りのこの季節でも長袖のYシャツが標準装備な三人組何て、怪しすぎて『お近づき』になろうとする奴何て、そうそう居るものじゃあ無いので、ある意味盗み聞きの結果では有るのだけど。


……そう、『お近づき』になろうとする奴何て、そうそう居はしないのだが、『皆無』である、と言い切れない理由が、目の前で半病人状態になっている彼女である。


と言っても、精々が顔見知り以上友人未満程度の関係でしか無いし、その関係にしても、向こうから話し掛けてきたから応答していたら、いつの間にか顔を合わせれば2~3話をする、程度のモノである。

故にそれまで親しい訳ではないし、俺も好意的に捉えては居るが、別段恋愛感情有りきと言う訳ではない。

向こうもそうではないだろうしね。


それと、先程大神の名前が出た理由だが、奴と彼女は幼馴染み(本人曰く『付き合ってはいない』らしい)で、基本的に行動を共にしており、常に彼女の世話を大神が焼いていたりするからだ。

……まぁ、基本的にセットで行動しているせいなのか、彼女が俺達と話していると、時たま凄い顔でこちらを睨んでいたりするのだが、一体何がしたいのやら……。



……まぁ、そんな俺の人間関係は置いておくとして、取り敢えず目の前の半病人を診察してしまうとするかね。


「んじゃ、タツ頼んだ」


「……結局、俺に投げるのか……」


「適材適所、ってね。お前さんのスキル(ソレ)なら、俺が素人判断するよりも正確だろう?」


「……まぁ、それもそうか」


そう呟いて、青い顔をしている乾へとその糸目を見開き、視線を向けるタツ。

その様は、端から見ているとただ単に睨んでいる様にしか見えない為(俺からもそうとしか見えない)、何をしているのか、と言った乾の友人達からの訝しげな視線や、任せてみたけどやはりダメだったのか?と問い掛ける様な先生からの視線が、俺とタツに注がれる。

……レオ?アイツなら今、ここに来るまでに見掛けたブツを取りに行ってもらっている。

多分必要になるだろうからね。


一分しない位でスキルの発動を解除し、元の糸目に戻りこちらへと顔を向けてくるタツ。


「……終わったぞ」


と、一言呟くだけのタツに、診察結果を訪ねる俺。


「んで?結果は?俺の見立てだと、貧血か脱水か熱中症か、って処だと思っていたけど?」


「……大体当たりだ。貧血と脱水、それと軽度の日射病だ。別段命に別状が有るわけでも無いが、それでもこのまま放置するのは、あまりよろしくないだろう」


アララ、やっぱり?

なら、なおの事、レオに頼んでおいたブツが必要なんだけど……


「タカ~、頼まれていた奴持ってきたよ~。取り敢えず坊主にしない程度に葉っぱと~、完熟前の緑の奴持ってきたけど~、これで合ってたよね~?」


お!

ナイスタイミング!


「サンキュ。完熟して、下に落ちてきた奴でも良いっちゃ良いけど、それだと確率でお腹下すから、この場合はあんまりよろしくないからね」


早速、レオが取って来たヤシの実(鑑定で『ヤシ』と出ていたので多分ヤシ)を受け取りると、2~3回振って中に確りとジュースが溜まっているかを確認する。

……うん、確りチャポチャポ言ってるから、大丈夫そうだね。


「良し。じゃあ、俺は(あいつ)の手当てしておくから、二人はソレ(葉っぱ)使って希望者に帽子なりを編んでやってもらえるか?流石にこの天気の中で、何も無しだとまた倒れかねんからね」


「……フム、了解した」


「分かった~」


そう返事をした後、早速とばかりに座り込んで、ヤシの葉を編み込み始める二人を尻目に、俺は俺で治療を開始すべく、まだ外皮が緑色をしているヤシの実に、適当にナイフで切り込みを入れてから、外皮の下の繊維層をムシムシして行く。

もちろん、むしった繊維層は色々と使い道があるので、そこらにポイせず取っておく。


そうやって繊維層をムシムシして行くと、最終的に芯?である硬い殻に覆われた部分のみが俺の手元に残る事になった。

その殻を適当にナイフで一部切り飛ばすと、中に入っているジュースを指先に付けて、軽く舐めてみる。


……うん、適度に熟して甘さが有るけど、傷んでいる様子は無いね。

これなら大丈夫だろう。


そう判断した俺は、そのヤシの実のジュースをそのまま乾に飲ませ……はしないで、ポーチに入れていた蒸留器に、中身の半分程を予め移してしまう。


そんな俺の行動を、不審な目で見ている女性陣を尻目に、同じくポーチから取り出した緊急用の塩タブレットを一粒投入し、水筒から水を追加してから、手頃な枝で中を撹拌して、放り込んだタブレットを溶けきらせる。


タブレットが溶けたので、かき混ぜていた枝を舐めて、味を確認。

……うん、ちとしょっぱめだが、ポカリ○エットみたいな感じになったね。


そんな即席ポ○リを片手に、浜辺に良く生えている葦系の植物をストロー代わりに差し込んで、乾の上半身を起こし、背中に片手と片膝を添えてアシストしてから、軽く揺らして目を開けさせる。


「おい、乾、起きろ」


「……う、その声……小鳥遊(たかなし)君……?戻ってたの……?」


「おう、さっきな。ホレ、コレ飲みな?」


「……ゴメン、今は私……気持ち悪いし、喉渇いて無い……から」


「それでも、さね。今は気持ち悪かったり、吐き気が有るかもしれないが、コレくわえて一口で良いから飲んでおけ、の?」


「……うん、ありがとう……」


そう、辛そうに返事をしながら、言われるがままに一口分吸い上げて、どうにか飲み込む乾。

そんな彼女を寝かしてやりながら、再度声を掛ける。


「もう少ししたら、喉の渇きを感じる様になるハズだから、その時はまた飲ませてやるから遠慮なく声掛けろよ?」


その言葉に、目を瞑ったまま頷く乾だが、やはりと言うか、当然の様にその顔色はまだあまりよろしくない。


……こうやって水分を採らせておけば、タツの診察上は良くなるハズなのだが、それを待つだけと言うのもあまり芸が無い。


そんなことを考えながら、先程飲ませた○カリモドキが呼び水となったのか、喉の渇きを訴えて来た彼女を再度起こしてやり、ヤシの実に残っていた分の約半分をまた飲ませてやる。

一度に飲み過ぎるのは、あまりよろしくないからね。


そうやって減った分を、最初に分けておいた分のジュースを足してやり、少々濃い目に調整していたら、何やら森の方から足音と人の気配がして来だした。


……ヤレヤレ、ようやっと帰って来たかいな。


そんなことを思いつつ、幾分か回復し、体を起こせるようになった乾へと、持っていたヤシドリンクを渡してやりながら先生の元へと移動するのであった。

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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